第49話 レーラの可能性
家に帰ってきた俺はベッドに寝ころびながら希少種について考えていた。
以前戦ったパイライトスライムは非常に硬い体でスライムからは考えられないようなスピードで攻撃してきた。
ただ、攻撃方法は普通のスライムと変わらない体当たりだった。
あの硬くしなやかな体を自由に操ることが出来れば体を鞭のように使って攻撃できたかもしれない。
しかしそれをしなかったことを考えると、希少種とはいえその種族特性から大きく逸脱しないのではないかと考えることが出来る。
「まぁ、あいつが特殊だっただけかもしれないけど」
ステータスは違うけど、普通のコボルトと同じような攻撃をしてくるだけかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
この答えを出すには希少種の情報が圧倒的に少なかった。
「う~ん、なぁレーラ。コボルト希少種の攻撃方法とか分かるか?」
《回答・・・権限不足により情報にアクセスできませんでした》
「ん?なるほど?」
ちょっと思いついた俺はレーラにそう聞いてみたのだが、結果は分からなかった。
ただレーラは権限不足により情報にアクセスできないと言っている。
つまり言い換えれと成長因子が溜まってレーラをアップデート出来れば、いずれは見たことないモンスターでもある程度の情報を手に入れることが出来るかもしれない。
これはさらにモンスターを倒す理由が出来たな。
「てか、レーラってどこまで出来るようになるんだろうな…」
《回答・・・権限不足により情報を開示できません》
「……。なるほどね」
今度は情報が開示できないと来たか。
これはレーラの中には今後何が出来るようになるかの情報があるけど、俺自身の権限が足りなくて言えないって感じかな。
てか権限ってなんだよ。
そう言えばレーラがアップデートしたときも管理者権限がどうとかっていう話しをしてたような気がする。
やばい、考え出したらめっちゃ気になってきた。
「レーラ、管理者権限ってなんだ?」
《回答・・・管理者権限とはダンジョンを運用していくために与えられる権限になります
現在の管理者権限はEランクです》
「うんうん、は?」
ダンジョンを、運用だと?
その答えを聞いた俺は勢いよくベッドから体を起こした。
待て待て待て、つまりだ、権限が上がればダンジョンを運用する能力が使えるようになるってことか?
《回答・・・権限不足により情報を開示できません》
考えてみれば、今のレーラの能力は全てダンジョン内の情報を見ることに特化している。
そして世の中のサービスも最初全ては見ることから始まっている。
WEBサイトでも、メッセージアプリでも、会社でもそうだ。
そして権限が上がるごとに、例えばメッセージを削除できるようになったり、新しい機能のインストールや編集が出来るようになったりする。
と言う事は……。
「もしかして、俺ってそのうちモンスターを生み出したり出来るようになる…ってこと?」
《回答・・・権限不足により情報を開示できません》
「……。」
これは、不回答という名の回答と取っていいのではないだろうか?
いや、出来ないっていう情報自体権限が足りない可能性もあるか。
俺が考えてることがもし本当に出来るようになるとしたら、ダンジョンマップなんて目じゃないくらいヤバいスキルの可能性がある。
このままレーラを成長させて大丈夫かという不安が少しだけ過ったが、レーラを成長させないと真由の呪いを解くことが出来ない。
「仕方ない…か」
ただ何が出来るようになっても力の使い方を間違えなければ良いだけの話しだ。
うん、そう考えたら包丁と一緒だな。
包丁は料理をする道具にもなるし、使い方を間違えれば人を殺すための道具にもなる。
結局レーラが成長した時に何ができるようになるかも分からないし、今は希少種に集中するか。
▼△▼△
次の日、俺はいつもより早めに家を出てコボルトダンジョンに来ていた。
踏破済みの階層を速足で歩き、既に5層まで到達している。
マップを確認してみると、昨日と同じ位置に希少種がいることが確認できた。
希少種はかなりマップの端の方に居るので、周囲に探索者の姿はない。
探索者に合わないようなルートで歩いていると、いくつか隠し部屋の近くを通った。
でもコボルトダンジョンの隠し部屋で手に入るのはミスリル鉱石なので、今回はスルーすることにする。
重い荷物を抱えたまま戦闘するのは嫌だからね。
まぁ戦闘時に荷物を下ろせば良いだけかもしれないけど、希少種から何がドロップするかまだ分からないので、念を重ねておいたほうが良いだろう。
「そろそろか…」
しばらく5層を歩いていると、希少種の近くまで来ることが出来た。
マップを見てみると、もう少し進んだ先に希少種がいることが分かる。
俺は一度気合を入れ直して足を進める。
「あれか?」
少しだけ進むと、ある程度広い空間に出た。
その空間の中央に1体のコボルトが佇んでいる。
「銀色のコボルト?」
もう少し進んでみると、そのコボルトの体毛は銀色をしていることが分かった。
またパイライトスライムみたいに体毛が金属質なのか?
とりあえず鑑定してみるか、レーラさんお願いします。
《鑑定・・・種族:幻獣
個体名:コボルトTypeマーナガルム
戦闘能力:C
思考能力:C
所持スキル:引力
ドロップアイテム:魔石(中)、コボルトの毛皮(上)、引力石
生態:コボルトの希少種、その引力を使って相手を引き寄せて捕食する。
攻撃方法:丸呑み》
「はい?」
レーラの鑑定結果に俺は目を疑った。
なんだこのモンスター名?Typeマーナガルム?
マーナガルムって確か神話に登場する狼だよな。
それに初めて見たけどこいつはスキルを持っている。
引力ねぇ、生態に相手を引き寄せるって書いてあるしもしかして迂闊に近づけない奴か?
そしたら隠鎖を使って距離を保ちつつ戦った方が良いかもしれないな。
そこまで考えたところでコボルトもこちらに気が付いたようだった。
そのつぶらな瞳を俺の方に向けている。
マーナガルムとかいう大層な名前がついているが、見た目は普通のコボルトとあまり変わらないので結構可愛い。
「さて、始めますか」
俺は刀を抜き放ち隠鎖を開放してコボルトに狙いを定めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます