第48話 探索効率が悪いダンジョン

次の日も俺はコボルトダンジョンに来ていた。


昨日はダンジョンを上がった後魔石を換金し家へ直帰した。

その後千鶴へ連絡しミスリル鉱石について要るか聞いてみたのだが、一瞬で要るという返信が返ってきた。


詳しく話しを聞いてみると、どうやら天心百花には専属の鍛冶師が所属しているらしい。

その鍛冶師は非常にレベルが高いらしく、ミスリルやオリハルコンといった鉱石も武具にすることが可能だそうだ。


俺の手に入れたミスリル鉱石は純度が低いとはいえ、予備の武具を作ったりこれからクランに入る新人に装備させるにはうってつけだから是非売ってほしいと言われた。


凄いよな天心百花、新人にミスリル装備をプレゼントするんだろ?

あのミスリルで作った武器でも買おうと思ったら安くて100万くらいだろう。


そう考えると、如何に天心百花が強いクランかが分かる。


「さて、今日は3階層から行きますか」


1~2層は既に隠し部屋も含めて探索し終わっているので俺は最速で3階層を目指した。

階段を目指して歩くだけなのでそこまで時間はかからずに到着する。


「やっぱり2層よりちょっと広くなってるな、それに探索者も少し多くなってるか?」


マップを確認してどのルートで探索するかを少し考える。

ここから一番近い隠し部屋は近くに探索者が居るので後回しにした方が良さそうだ。


「となると、少し遠いけどこっちから行ってみるか」


近くに探索者の居ない隠し部屋を発見したので、俺はそこを目指して歩き始めた。


隠し部屋に向かいながらではあるが、積極的にコボルトと戦闘をしていく。


「これが3階層のコボルトか、なんか体毛が黒いな」


早速コボルトを発見したのだが、今回は真っ黒な見た目をしている。

ちなみに2層で出会ったコボルトは体毛が白かった。


その名もホワイトコボルト、まんまである。

もしかしてこいつも見た目通りの名前なのかな?


《鑑定・・・種族:幻獣

      個体名:ブラックコボルト

      戦闘能力:F

      思考能力:F

      所持スキル:なし

      ドロップアイテム:魔石(極小)、コボルトの毛皮(劣)

      生態:生体のコボルト。その黒い体毛を使い闇夜に擬態する。

      攻撃方法:丸呑み》


やっぱりまんまな名前だった。

それにしても生態が非常に微妙な性能をしている。


確かにこの見た目だと、夜に出会った場合位置が分からないかもしれない。

しかし悲しいことにここはダンジョンの中である。


ダンジョンの中は薄暗いけど、見えないという程でもない。

つまりこのブラックコボルトは全然擬態できていなかった。


いや、もしかしたらこの階層には暗い場所もあるのかもしれない。

そう考えると意外に厄介な相手なのかもしれない。


そんなことを考えている間にコボルトは刀の範囲内に入った。


「よっと」

「キャンッ!」


うん、鑑定で分かってたけど強さは変わらないな。

こんなに弱いモンスターであっても成長因子は手に入るので、確実に身体能力が上がってるだろう。


「さて、気合入れて行きますか!」


俺は3層の探索を進めていく。


▼△▼△


その後無事に4層まで探索が終わった。

昨日分かったことだけど、やっぱり2層攻略するだけでかなりバックが重たくなってくる。


「隠し部屋で手に入るアイテムは嬉しいけど、効率が悪いなぁ…」


スライムダンジョンと比べると明らかに探索効率が落ちていることが分かる。

向こうは2日で攻略できたけど、コボルトダンジョンは単純計算で後3日はかかる計算になる。


「どうにか効率あげられないかな~」


実はこの悩みを解消できる素敵なアイテムが存在している。

それはアイテム袋と呼ばれる物だ。


このアイテム袋はダンジョン内で手に入れた物に限り、袋の容量より多くの物をしまうことが出来る。

そしていくらしまっても、袋の重さが変わることはない。


その有用性から非常に需要が高く、アイテム袋が市場に並ぶことはほとんどない。

稀に引退する探索者がオークションへ出品することがあるのだが、その時は安くて4桁万円以上の値段がついている。


今の俺では逆立ちしても支払えないので、アイテム袋は夢のまた夢だ。


「まぁ今は手に入らないけど、そのうち手に入るかもしれないしな」


そう、俺にはレーラがついている。

今後高ランクダンジョンを探索して行くことを考えれば、いつかは隠し部屋からアイテム袋が手に入るかも知れない。


それに今考えるとスライムダンジョンの踏破スピードは少し異常だったかもしれない。

これが普通の探索スピードなのかなとも思う。


「仕方ないし、コボルトダンジョンは着実に進めますか」


既に4層は攻略し終わったのだが、最後の隠し部屋が5層へ繋がる階段の近くだったので帰る前に少し5層を覗いていくことにしよう。


俺は重いバックを持ちながら5層へと繋がる階段へ足を進めて、5層へ降り立った。


「さてさて、5層はどんな感じかな……ん?」


マップを確認していると、見たことない色が目についた。

5層の隅の方で金色のマークが光っている。


今まで金色のマークとかあったか?いや、ないはずだ。


「なぁレーラ、この金色のマークって何?」


《回答・・・金色は希少種を表すマークになります》


「え?マジで!?パイライトスライムみたいな奴って事?」


《肯定》


うっそだろ、あんな奴がまたいるのかよ…。

希少種って、希少だから希少種っていうんじゃないのかよ。


だけど、よく考えたらいいチャンスかもしれない。

ここはFランクダンジョンだから希少種とはいえパイライトスライムと同じくらいの強さだろう。


もっとランクの高いダンジョンの希少種はとんでもない強さかも知れない。

それに希少種は多くの成長因子を獲得することが出来る。


「明日、挑んでみるか」


次いつ希少種に会えるかも分からないので、俺は明日希少種に挑むことにしてこの日はダンジョンを後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る