第45話 アイテム処分の目途
「天心百花で引き取るのも一つの手だと思う」
「なるほどね」
「私が手に入れたことにしてクランに持っていけばまぁ何とかなるだろう。どこで手に入れたか聞かれても上手く誤魔化す」
なるほど、確かに千鶴の所属してるクランに引き取ってもらうのも一つの手だな。
でもそんな簡単に誤魔化せるだろうか?
自分で言うのもなんだけど、この手のアイテムは本当に手に入れる事が難しい。
だからこれだけの数のアイテムを持っていくと間違いなくその出所を疑われるだろう。
「どうやって誤魔化すんだ?」
「そうだな、凄腕のアイテムシーカーと知り合ったことにする」
「あーなるほど、それなら行けるのか?」
アイテムシーカーというのは探索者の一種で、ダンジョン内でアイテムを探す専門の人たちの事だ。
アイテムシーカー達は独自の探索方法があるらしく、一般的な探索者よりアイテムを見つけられるという噂を聞いたことがある。
「ちなみにこのアイテムは全て水耐性が上がる物なのか?」
「そうだよ、ここにあるネックレスは全部そうだね。ちなみにポーションもいる?」
「そうだな、慧が不足しない範囲内であれば欲しいところだ。ランクの低いポーションだとしてもあまり出回ってないからな」
「了解、そうすると……これくらいなら渡せると思う」
俺は今持ってるポーションの8割近くを千鶴の方に差し出した。
正直今のところは怪我をする可能性も低いし、これからもFランクダンジョンを回ることを考えればもっと手に入る。
「これは多すぎないか?」
「いや、俺はしばらく低ランクダンジョンを回る予定だし必要になる機会が千鶴とかに比べると少ない、だからこんなに持ってても仕方ないんだよ」
「そうか…分かった」
千鶴も低ランクダンジョンは危険が少ないことを知っているので、俺の提案を了承してくれた。
まぁもっともパイライトスライムのような希少種と戦う場合は怪我をする可能性があるけど。
希少種って言うくらいだし、そんな頻繁には会わないだろう。
「慧、このアイテムの代金は振込でもいいか?」
「うん?全然いいよ」
「助かる、流石にこのアイテムを買うだけの手持ちが今無いんだ」
「まぁ普段そんな現金持ち歩かないよな」
多分このアイテムを買うだけでも安くて100万以上するだろう。
いくら千鶴が最上位探索者でも普段からその金額を持ち歩いてるとは思わない。
「どうする?今日持って帰るか?」
「そうだな、私たちも準備が出来次第次のダンジョンへ潜る予定だし次いつ慧に会えるかも分からないから、今日中に持って帰ることにする」
「了解、なんか鞄とかいる?」
「多分私のバックに入ると思うんだが…足りなかったら貸してもらうかもしれない」
「おっけー、じゃあ千鶴に渡すアイテムをまとめるわ」
千鶴にそう言いながら渡すアイテムをまとめていると、やっぱり結構な数になった。
多分だけど千鶴が今日持っていたバックに全部は入らないだろう。
何か良いバックあったかな?
俺は押入れを開けてバックを探していると前に使っていたリュックが出てきた。
多分千鶴のバック+このリュックがあれば十分だろう。
「千鶴、これ使っていいよ」
「悪いな、助かる」
千鶴が俺があげたアイテムを全てバックにしまうと、今日の用事は終わったことになる。
「さて、私も少し忙しいから今日はこの辺で帰ることにする」
「あぁ、次のダンジョン頑張ってな」
「ありがとう、本当はもっとゆっくりしてきたかったんだがな…」
「それは次の機会にって事で」
「そうだな……そうしようか」
バックを持って立ち上がった千鶴を玄関まで送っていく。
「そうだ慧、口座の番号を私に送っておいてくれ」
「分かった、あとで送っとくよ」
「それじゃあ、またな」
「おう!今日はありがとな!」
そして千鶴は帰っていった。
いや~、それにしてもアイテムを処分する目途が立ってよかった。
いつかは自分で売ったりすることもあるだろうけど、まだそれには早いだろう。
正直今の段階の俺は弱いので、この力がバレたらどんな事が起きるか分からない。
だからどんな事があっても自分の力で切り抜けられるようになるまでは、申し訳ないけど千鶴に頼ることになるかな。
「さて、明日の準備をしますか!」
俺は気を取り直してコボルトダンジョンに向けた準備を始めた。
次の日起床した俺はご飯を食べてコボルトダンジョンへ向かう。
ちなみに千鶴が帰った後、父さんと母さんからどうだったのかしつこく聞かれた。
何もなかったと言っても本当は?とずっと疑ってきた。
大体1時間くらい同じやり取りをしていた記憶がある。
「お、ここがコボルトダンジョンか」
相変わらずデカい門とその近くに探索者用の建物が立っている。
スライムダンジョンより探索者の数が多いな。
まぁスライムダンジョンは探索者が皆無だったので比べるまでもないかもしれないが。
今回は探索中に他の探索者に出会うかもしれないなぁ。
ちょっと注意しながら探索を進めて行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます