第43話 偶然

次の日俺は再びLabyrinthへ来ていた。

スライムダンジョンで消費した物の買い足しと、何かいい商品があれば買いたいなと思っている。


とはいえダンジョンで消費したものは少なく、直ぐに買い物が終わってしまった。


「この後どうしようかなぁ~」

「慧?」

「ん?あ、千鶴。奇遇だな」


この後どうしようか悩んでいたら後ろから声をかけられたのでふり返ってみると、そこには千鶴が居た。


「千鶴も買い物か?」

「あぁ、次の探索が決まったからな。それに向けて買い出しをしていたところだ」

「そうなんだ」

「慧はどうしたんだ?」

「俺はスライムダンジョンを攻略し終わったから次のダンジョンへ向けて買い出しかな」

「もう終わったのか、流石だな」


そう話すと千鶴が褒めてくるが俺は微妙な顔になってるだろう。

だってスライムダンジョンだぞ?誰でも時間をかければ攻略できるだろう。


「そうだ、千鶴に少し相談したいことがあるんだけどこの後時間大丈夫か?」

「あぁ、今日は買い出しのみの予定だったから大丈夫だ」

「ちなみに何買うんだ?」

「次のダンジョンが水属性系のモンスターが出るから、水耐性の上がる物をいくつか買おうと思っている」

「水耐性ね~」


そういえば、まだ千鶴にスライムダンジョンで手に入ったアイテムは渡してなかったよな。

ネックレスも指輪も水耐性が上がる装備だし丁度いいかも。


「この後俺の家行ってもいい?」

「慧の家に?別に構わないが…」

「まだ千鶴にアイテム渡してなかっただろ?丁度水耐性の上がる装備だし渡しておこうかなと思って」

「なるほど、確かに丁度いいな。分かった」


その後俺は千鶴について行き、千鶴が買いたかったものを購入した後俺の家に移動した。

ちなみに千鶴が購入した装備は滅茶苦茶高かった。


流石最上位探索者である、今の俺では絶対に買うことの出来ない装備をポンポン買っていたのを見て千鶴との距離を再認識した。


「慧の家に上がるのも久しぶりだな」

「確かに道場の方にはたまに来てたけど、家の方に来るのは高校ぶりか?」

「そうだな、そのくらいになると思う」


話しながら歩いているといつの間にか家に着いていたので千鶴と共に中へ入る。


「あら、千鶴ちゃん?久しぶりね、いらっしゃい」

「急にすみません、お邪魔します」

「千鶴ちゃんならいつでも来てくれていいのよ?」

「ありがとうございます」


家の中に入ると丁度母さんと鉢合わせた。


「それにしても、凄く美人になったわね」

「そ、そうですか?」

「そうよ、慧もこんな美人な人がお嫁さんが来たら嬉しいわよね?」

「え?まぁ確かに嬉しいけど…」

「そう…なのか?」

「うん、まぁ…」

「そうか…」

「あらあら」


母さんは千鶴が家に来るとよくこんな感じの話しをする。

いつも巻き込まれて気まずい感じになるので少しやめて欲しい。


母さんは俺たちのことを微笑ましそうに見ている。

だがよく見てくれ、全然微笑ましくないだろう。


めっちゃ微妙な空気だぞこれ。


「と、とりあえず俺の部屋に行くか」

「そ、そうだな。そうしよう」

「直ぐに飲み物を持ってくわね」

「大丈夫だよ母さん、俺が持っていくから」

「そう?それじゃあお願いしようかしら」


そのまま母さんと別れて俺と千鶴は部屋に向かった。

部屋の中に千鶴を入れると懐かしそうに見回している。


「変わらないな」

「そりゃ俺の部屋だからなぁ~」


俺はあまり内装とかをこだわる方ではないので、高校の時から部屋の中はあまり変わっていない。

最近は探索者関係の道具が増えたが、それくらいだろう。


「飲み物持ってくるからちょっと待ってて」

「悪いな」


俺はリビングに向かいコップにお茶を注いで居ると父さんが話しかけてきた。


「おい慧、千鶴ちゃんが来てるらしいな」

「ん?母さんから聞いたの?」

「そうだ。慧、今日こそ決めるんだぞ」

「何をだよ」


なんかテンション高いな、もしかしてまた昼間から酒飲んでるのか?


「ふっ、頑張れよ慧」

「だから、何をだよ…」


それだけ言うと父さんはリビングから出ていった。

一体何がしたかったのだろうか?

よくわからないけど、飲み物の準備ができたのでコップを二つ持って部屋に戻る。


「お待たせ」

「あぁ、ありがとう」


部屋の中に入ると千鶴が俺の机に置いてある写真立てを見ていた。

そこには小学校くらいに撮った俺と千鶴と真由が写った写真が入っている。


「懐かしいよな、その写真」

「あぁ、あの頃の記憶は今でも昨日のように思い出せる」


真由に引っ張られながら俺と千鶴は色んな所で遊んだ記憶がある。

まぁまだ小さい子供なので行ける範囲は限られているが、それでも当時の俺たちからしたら大冒険だった。


「また、三人で遊びたいな」

「そうだな…」


俺がそう言うと、千鶴は少し暗い顔をした。

真由は今入院しており退院の目途も立っていないため、あの頃のように遊ぶのは難しいだろう。


だが俺が頑張れば真由は元気になるとレーラが教えてくれた。

だからそう遠くない未来で、また三人で遊ぶことも出来ると思う。


「それで千鶴、今回手に入れったアイテムなんだけど」

「そうだったな、どんなものなんだ?」


俺は気持ちを入れ替えて千鶴にアイテムを見せていく。

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