第42話 探索者の運
「ありがとうございました、もう大丈夫です」
「あ、分かりました」
この部屋に入ってきてから大体1時間くらいパイライトスライムのことについて報告してたら職員さんがそう言った。
もしかしてそろそろ帰りたいな〜とか思ってたのが顔に出てたか?
「それにしてもデータによれば舞月さんのスキルは鑑定のみと書いてありますが、よくパイライトスライムを倒せましたね」
「そうですね…運が良かったんですよ」
本当はレーラの能力を使って弱点を表示できたから勝てただけだ。
だがそれをいうと俺の能力が鑑定のみだけではないとバレてしまうので黙っておく。
「運…ですか、確かに探索者には重要な要素ですね」
「そうなんですか?」
「はい、モンスターに出会う事、素材を見つける事、そして隠し部屋を見つける事など様々な場面で運が関わってきます」
「なるほど」
「もしかしたら舞月さんは凄い探索者になるかもしれないですね」
すみません、全部レーラのマップのおかげなんです…。
しかも俺は運なんて悪い方だ。
本当に運が良い人はあの場面でパイライトスライムに出会わないだろう。
職員さんと話しを終えた俺は魔石の売却を済ませてダンジョンを後にした。
ちなみに魔石(中)は1万円で売れた。
これには結構ビックリした。
まぁボチボチ命を賭けた戦いだったのでそれを考えれば安い方なのか?
でも魔石(中)を落とすモンスターを簡単に倒せる探索者はそれだけで物凄い金額を稼ぐことが出来る。
1日100体倒せば100万円だ。
まぁそのレベルのモンスターはスライムと違ってそんなに倒せないだろうけど、それでも1日でとんでもない金額を稼ぐことが出来る。
それに魔石もまだ上のサイズがあるし、上位の探索者がみんなお金持ちなのも頷ける。
それに魔石以外にもアイテムの売却などもあるしな。
やっぱり探索者は夢のある職業だなと今日実感した。
「でも少なくとも1個1000円くらいの魔石を取れるようにならないと生活は厳しそうだよなぁ」
今日まで倒していたスライムの魔石は100円だ。
だから本当に100体くらい倒さないと生活はかなり厳しいだろう。
「ま、それもおいおい考えていくか」
俺は思考を打ち切って次に挑むダンジョンについて考えていく。
とりあえず候補としてはスキルを手に入れたゴブリンダンジョンか、以前候補に入れていたコボルトダンジョンだな。
どっちも家から同じくらいの距離だし正直どちらでもいい。
どうしようかな~、マジで悩むな。
「まぁ結局どっちのダンジョンにも行くことになるし適当に決めるか」
昨日真由の所に行ったとき凄く楽しそうに話しを聞いていた。
俺はスマホを取り出して真由にメッセージを送った。
「ゴブリンダンジョンとコボルトダンジョンどっちが好き?っと」
どうせ話すなら真由の気になるダンジョンの話しをしたいなと考えたためだ。
メッセージを送ってから直ぐに返信が返ってきた。
そこにはどちらかと言えばコボルトダンジョンの方が好きかもと書かれている。
「よし、じゃあ次に潜るダンジョンはコボルトダンジョンにするか!」
とりあえず明日は補給の日に当てて明後日からコボルトダンジョンへ潜ることにしよう。
明日の予定を考えながら歩いているとあっという間に家に到着した。
「あら、おかえり慧。今日はどうだったの?」
「ただいま母さん、スライムダンジョンは無事攻略できたよ」
「凄いじゃない!今日はお祝いね」
「初心者用ダンジョンだし大げさだよ」
「そんなことないわ、早速お父さんにも報告しましょう!」
「そ、そう…」
家の中に入るとたまたま廊下に出ていた母さんと鉢合わせたのだが、スライムダンジョンを攻略したことを伝えると凄く上機嫌になり父さんへ報告しに行った。
このままリビングに行くのは少し恥ずかしいので部屋に避難しよう。
まぁご飯食べる時にどうせ話しをすることになりそうだけど。
うん、頑張れ未来の俺!後はまかせたぞ!
部屋に戻って荷物を置き、中から隠し部屋で手に入れたアイテムなどを出して整理していく。
「それにしても、スライムダンジョンだけでかなりのアイテムが手に入ったな~」
大体1階層に3~5部屋くらい隠し部屋があったので、その数だけアイテムが手に入ったことになる。
これからダンジョンを探索していくことを考えると、早めにこのアイテムたちをどうするか決めないといつか俺の部屋がアイテムで埋まってしまう。
「どうしたもんかなぁ~」
そんなことを考えながらアイテムを整理していると、水色の液体が入った小瓶が出てきた。
「あ、そういえばスライム粘液売るの忘れてた」
どうしよう、もうスライムダンジョンへ行くことはないしコボルトダンジョンで売るか?
これって確か美容品なんだよな?
「千鶴とか真由にあげたら喜ぶかな」
女性は美容に敏感だと聞くし、もしかしたら欲しいって言うかもしれないな。
ちょっと聞いてみるか。
俺と千鶴と真由のメッセージグループがあるので、スライム粘液について聞いてみる。
すると二人共から爆速で返信が返ってきた。
「はや!二人とも欲しいのか~どうしようかな?」
小瓶に入ってる量は少ないけど、二つに分けることも出来ると思う。
とりあえず今は一つしかないから二つに分けて良いか聞いてみると、これまた爆速で返信が帰ってきて二人ともそれで構わないと言っている。
「それにしても、これ凄い美容品なのか?」
正直その辺について全く分からないが、少し興味が湧いたので調べてみる。
「スライム粘液 値段…え!?こんな高いの!?」
ネットで検索してみると、同じ小瓶に入ったスライム粘液が一つで5000円と書かれていた。
嘘だろ、この小瓶でスライム50体分かよ…。
「これ、ジャイアントスライムがでるダンジョンで荒稼ぎ出来るんじゃないか?」
確かジャイアントスライムがメインで出るダンジョンがあったはずだ。
俺が挑むのは当分先の予定だが、それでもこの情報は覚えておこう。
「慧~、ご飯できたわよ~!」
「今行く~!」
母さんから呼ばれたので俺はリビングに降りて行った。
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