第41話 報告

職員の後をついて行くと一つの部屋に通された。


「どうぞ座ってください」

「分かりました」


部屋の中にはテーブルを挟むようにソファーが置かれていたので職員とは反対のソファーに座る。


「お疲れのところ申し訳ないのですが、遭遇したという黄鉄鉱のスライムについて教えて頂けないでしょうか?」

「分かりました、まずそいつと出会ったのは…」


職員が何やらタブレットを取り出してそう聞いてきたので俺はパイライトスライムと出会ったときの事を語っていく。


9層で出会ったこと、この鉱石のような色をしていたこと、他のスライムと違い滅茶苦茶強かったこと。


「という感じでした、鑑定のおかげで普通のスライムと違うと気が付けたので何とか対処できました」

「鑑定のおかげで?どういうことですか?」

「そのスライムを鑑定したところ、戦闘能力がCと書いてあったので普通のスライムより大分強いことに気が付けたんですよね」

「…。戦闘能力というのは?」

「はい?鑑定した時に表示される奴です」

「そう…ですか…」


なんか職員の様子が少しおかしいな。

もしかしてだけど、レーラの鑑定は他の鑑定スキルと違うのか?


「ちなみにですけど、他にはどのような鑑定結果が表示されるのですか?」

「そうですね、モンスターの種族と名前、強さとドロップアイテムですかね」

「…。」


ヤバい、正直に答えすぎたかもしれない。

俺がそう言ったとたんこの職員さんの顔が険しくなった。


「ドロップアイテムも分かるのですね、舞月さんの鑑定は少し特殊なのかもしれません」

「もしかして他の鑑定だと分からないんですか?」

「はい、通常の鑑定では基本的に名前と生態しかわかりません」


うーん、これは間違いなく喋り過ぎたな。

でも他の鑑定スキルとか知らないしこれは仕方ないことか?


いや、レーラは特殊なスキルだから少し考えれば分かったことか。


「それでそのスライムを鑑定した結果どのような事が表示されたか覚えていますか?」

「え~と、名前はパイライトスライムでドロップ品は魔石(小)とパイライト鉱石でしたね」

「それと戦闘能力がCだったと」

「そうですね」

「分かりました、ありがとうございます」


もっと根掘り葉掘り聞かれるかと思ったけど、そんなに聞かれなかったな。


「舞月さんの鑑定で表示される戦闘能力が何を基準にしているものなのかよくわからないのですが、普通のスライムは戦闘能力いくつと表示されましたか?」

「えっと、Fランクですね」

「なるほど、だとするとボスの戦闘能力はEかD辺りでしょうか?」

「あ、はいそうです」


やっぱMDDの職員だけあって少し情報を伝えただけで俺の鑑定結果と同じランクを言い当てた。


「そうすると、戦闘能力CはCランクダンジョン相当のモンスターになりそうですね」

「そ、そうですね」

「このスライムダンジョンは初心者用ダンジョンに分類されるので本来そのレベルのモンスターが現れるのはあり得ないことなのですが…」


そう言いながら職員さんは何かを考えるような素振りを見せた。

まぁそうだよね、ダンジョンにそのランクを超えるモンスターが出ると言った話しは俺も聞いたことがなかった。


「その、ここだけの話しにして欲しいのですが」

「はい?」

「MDDのデータベースに舞月さんが遭遇したようなモンスターの情報があるんです」

「パイライトスライムのですか?」

「いえ、パイライトスライムではなく、ダンジョンランクを超えるモンスターが現れたという事例です」

「え?そうなんですか?」

「はい、これは一部の探索者も知っている情報になります」


ってことは、ネットには流れてないだけで知っている人は知ってる情報なのか。

でもなんで秘匿する必要があるんだ?


「本来現れるはずのないモンスターが出てきたときどうなると思いますか?」

「え?え~っと…」


そんな事を考えていたのがどうやら表情に出ていたらしく、職員がそう問いかけてきた。

ダンジョンランクより強いモンスターが出てきた場合どうなるか…か。


今回経験したことを踏まえて考えてみると、自然と一つの回答にたどり着く。


「モンスターに殺される…ですか?」

「正解です。そういったイレギュラーなモンスターと出会った場合、強さの違いから高確率で命を落とします」


やっぱりそうなのか。

ダンジョン内で死んでしまった場合、何故死んだのかの原因が分からないことがある。


準備不足なのか、単にモンスターにやられただけなのか、迷った挙句死んでしまったのか。

ダンジョン内で命を落とす理由はいくらでもある。


「そして何故この情報を公表していないかについてですが、それは舞月さんが遭遇した件を含めてもまだ3件ほどしかMDDでは確認していないためになります」

「え?そんなに少ないんですか?」

「はい」


まぁ確かにもっと高頻度で希少種が現れていたら自然と噂になるか。

それにしてもそんな珍しいモンスターと遭遇してたのか俺。


「なので舞月さんの経験は非常に貴重であり、是非もう少しお話を聞きたいのですがよろしいでしょうか?」

「そうですね、分かりました」


その後も俺は職員にパイライトスライムのことを話していった。

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