第37話 VSパイライトスライム

パイライトスライムの突進を刀で受け止め続ければ刀が折れてしまう危険があるので、先程とは違い奴の突進は避ける。


「よっと、そこ!」


突進してくる間や突進を躱したあとに隠鎖を使って攻撃を仕掛ける。

俺の刀に仕込んである隠鎖は鉄製なんだけど、パイライトスライムに当たっても全然傷ついた様子はない。


「硬すぎだろこいつ」


これが戦闘能力Cのモンスターか。

多分俺が戦うにはまだかなり早いモンスターだろう。


もう少し身体能力が上がって、ダンジョン産の素材を使った刀を使ってれば対等に戦えるのかもしれないけど、今の俺はその辺の準備が整っていないので結構厳しい。


「けどそこまで速くないのが救いだな」


これでもし俺が反応できないくらい速かったら死んでたかもしれない。


そう言えばこいつは弱点とかあるのか?

以前ゴブリンと戦ったときにレーラが弱点を表示してたけどこいつにも出来るのだろうか?


《回答・・・可能です。弱点を表示しますか?》


あぁ、頼む!


《承知・・・パイライトスライムの弱点を表示します》


レーラがそう言うとパイライトスライムに赤い模様が浮かび上がった。

ただパイライトスライム自体ゴブリンよりかなり小さいので、赤い模様も凄く小さい。


それに動き回ってるので当てるのは至難の業だろう。


「でも当てればゴブリンの時みたいに大ダメージを与えられるかもしれないし、頑張りますか」


俺はパイライトスライムの攻撃を避けながら何とか弱点に攻撃を当てようとするのだが中々当たらない。


動き自体は直線的だからそのうち当たるかと思ったのだが、こいつは硬いくせに流体のように波打ってるので少し狙いがズレてしまう。


「うーん、中々難しいな」


パイライトスライムに攻撃をしているときに、ふと思ったことがある。


「そう言えば、こいつにスライムナイフを使えば吸い込めるんじゃね?」


昨日1層でスライムにスライムナイフを当てたとき吸い込まれて刃に変化した。

こいつもスライムなら、スライムナイフで倒せるんじゃないだろうか?


おぉ、使いどころのないアイテムだと思ってたけどこれは行けるかもしれない!


《非推奨》


ん?非推奨ってどういうことだ?


《回答・・・スライムナイフを使うべきではありません》


何故だ?あれを使えば簡単に倒せるだろう?


《回答・・・権限不足により回答不能》


その理由が権限不足で喋れないって事か?


《肯定》


そうなのか…。

まぁでも今までレーラは間違ったことを言ったことはないのでここは信じるべきだろう。


「っと!危なかった」


レーラとの話しに夢中になっていたら少しパイライトスライムから意識がそれてしまった。

奴もそれが分かったのかすかさず突進攻撃をしてきたが、何とか避けることが出来た。


「今はこっちに集中だな」


再度俺は集中しながら隠鎖を使って攻撃していく。

う~ん、そろそろ弱点に当たってくれても良い頃なんだけどなぁ~。


「あっ」


そんなことを考えながら振った攻撃が見事弱点にヒットした。


弱点を攻撃されたパイライトスライムは、弱点周辺が砕け散った。


「一撃で倒せるわけじゃないのか」


それでもかなり良いダメージが入ったんじゃないか?

その証拠にパイライトスライムは攻撃が当たった途端、今まではこっちに突進しかしてこなかったのにいきなり後ろに飛んで距離を取った。


そして震えながらこちらを凝視?している。


「まぁ目があるわけじゃないからこっちを見てるかは分からないけど…」


パイライトスライムから砕け散った破片が足元に転がっている。

うん?今まで倒したスライムとかは全部消えてたけど、こいつは残るのか?


ちょっと興味があったので拾ってみる。


「う~ん、硬いな。鉄より硬いのか?」


これだけ硬いもので構成されてるなら俺の刀を弾くのも頷ける。

パイライトスライムはプルプル震えながら俺の方を凝視していたが、ついに動きがあった。


先程より遅い速度で俺に近寄ってくる。


「やっぱり体が砕けたから速度が遅くなってるのか?おぉ!?」


そんなパイライトスライムをじっくりと見ていたら、一度大きく震えた後体を針のように伸ばしてきた。


その速度は中々の物があり、危うく俺の体が貫かれるところだった。

寸でのところで体を捻ることが出来たので何とか避けれたけど、今の攻撃は危なかったな…。


「でもさっきより動きは遅いし行けるか?」


今の攻撃にさえ注意すれば、さっきより楽に戦闘できるだろう。


《解析完了・・・以後パイライトスライムの攻撃前兆をお知らせします》


「おぉ!ナイスタイミング!!」


以前MDDの教官と戦ったときもレーラが動きを予想してくれた。

あれと同じことが出来るならかなりありがたい。


俺はレーラに予測を任せて攻撃に集中していく。


「よっと!!」


パイライトスライムの弱点を攻撃した後、奴の体に新しい弱点のマークが出現した。

でもさっきと違って全然動いてないので、当てるのは正直かなり楽だ。


その証拠に俺の隠鎖がバンバン当たって体が砕けまくってる。


「これで、終わり!」


ついに石ころ程度の大きさになったパイライトスライムに隠鎖を当てると粉々に砕け散った。


《観測・・・パイライトスライムの討伐を確認》


「よっしゃ!ついに倒したぞー!」


《通知・・・成長因子が規定に達したためアップデートを開始します》


「え?」


あれ?まだスライムを100体倒したわけじゃないのに何故か成長因子が溜まったらしい。

しかもレーラがアップデートを開始するとか言ってから今まで表示されてたマップが消えてしまった。


《アップデート中・・・6%・・・8%・・・》


あー、これはあれか。

アップデートが終わるまでレーラのスキルは使えないって事かな?


「それなら疲れたし少し休憩するか…」


明らかに強さの違うスライムとの戦闘で思ったよりも疲れが溜まっていたので、俺はレーラのアップデートが終わるまで休憩をすることにした。

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