第36話 予想外

「よっと、これで何体目だ?」


《回答・・・76体目になります》


9層を探索しながらフェイクメタルスライムを倒していきそろそろレベルアップの頃合いかと思ったのでレーラに聞いてみたのだが、スキルレベルが上がるまでまだ少しかかりそうだ。


一応昨日と同じようなペースで倒しているので、10層を攻略すれば討伐数は100体に到達するだろう。


「さてと、そろそろ隠し部屋だよな~。うん?」


歩きながらマップを見てみるともうすぐ隠し部屋だったので歩く速度を上げていたら目の前にスライムが現れた。

そしてそのスライムは何故か金色だった。


「金色のスライム?ってかマップに映ってないよなこいつ」


改めてマップを見てみるが、このスライムがいる場所には何もマークが表示されていない。

今までこのダンジョンで現れるスライムは全てマップに映っていたのでこんなことは初めてだ。


「しかも同じ階層で別のスライムが出てくるのも初めてだな」


今まで通ってきた階層では1種類のスライムしか出ていなかった。

リーフスライムが出たならリーフスライムだけだし、レッドスライムが出たならレッドスライムだけが階層に出現していた。


「そもそもこいつはフェイクメタルスライムなのか?」


もしかしたら今まで見なかっただけで、スライムの色違いなのかもしれない。

ちょっとレーラに鑑定してもらうか。


ということでお願いしますレーラさん。


《鑑定・・・種族:幻獣

      個体名:パイライトスライム

      戦闘能力:C

      思考能力:D

      所持スキル:なし

      ドロップアイテム:魔石(中)、パイライト》


んん?パイライトスライム?なんだそれ、フェイクメタルスライムとは全く別物じゃないか


「というか、パイライトってなんだ?」


今までスライムの名前には何か分かりやすい言葉がついていた。

その法則で行くならパイライトも何かを表してるんだろうけど、生憎俺にはパイライトと言う言葉に心当たりがなかった。


ってか、戦闘能力C??え、めっちゃ強くないかこいつ。

今まで会ってきたスライムの中で一番強かったのは戦闘能力Fだ。


強くてもゴブリンと同じ程度の戦闘能力なので倒すことは簡単だったけど、Dを通り越してCはちょっとどうなるか分からない。


ダンジョンランクもCから急激に難しくなるって聞くし、ここは下手に刺激せずに引いたほうがいいかもしれないな。


「うん、そうしよう。安全第一に探索するって決めてるしな、レーラのマップに映らないのも不気味すぎるし、ここは引くことにしよう…って!?」


俺がスライムから視線を外さないように後退をした途端、パイライトスライムがかなりの速度で俺に突っ込んできた。


は、早すぎだろう!?

今までのスライムと比べ物にならない速度だぞこれ!


ギリギリ反応することが出来た俺はなんとか刀を抜き、スライムの突進を防ぐように刀で切り付けると甲高い音と共に火花が散った。


「硬い!!」


これまた今までのスライムは刃で少し傷つけるだけで倒せたのに、こいつは俺の刀を弾きやがった。

俺はこれでもかなり切れ味のいい刀を使っているので、少し信じられなかった。


しかも切った時に伝わってきた重みは滅茶苦茶重かった。


「速いし硬いし重い…本当にスライムかこいつ?」


なんとか弾き返したが、直ぐにパイライトスライムは次の攻撃をしてきた。


「逃げられなさそうだし、なんとかやるしかないか!!」


逃げようとしたんだけど、どうやら逃げられなさそうなのでこのスライムと戦わなければならない。

幸い速さはそれほどでもないのでまだ何とかなるだろう。


「よっと!!」


再び突っ込んできたパイライトスライムを何とか弾き返す。

ただこの硬さは厄介だ。


仮にこの速度で直撃したらおそらく鎧は砕けるだろうし、生身で食らった場合は骨が折れるだろう。


しかもこのまま打ち合っていれば俺の刀の方がイかれる可能性が高い。


「刀主体じゃなくて隠鎖主体にするか」


ここまで一度も隠鎖を使う場面がなかったが、こいつには使った方が良いだろう。

俺は柄にある留め具を外して隠鎖を開放する。


「よし、それじゃあ行くぞ!」


こうして初めてモンスターとの激戦が幕を開けた。

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