第35話 再びのスライムダンジョン
俺は帰りの電車に乗りながら千鶴に連絡を入れる。
今日手に入ったアイテムを千鶴が持っているかと、スライムナイフについてだ。
千鶴にメッセージを入れた後、明日の探索予定について考えていると直ぐに返信が帰ってきた。
「耐性が上がる装備はいくつか持っているが、余ってあるのであれば欲しい…ね」
やっぱり千鶴くらいの探索者になれば耐水のネックレスみたいなものは持ってるんだな。
「それとスライムナイフについては見たことも聞いたこともないので、見てみたいか」
やっぱりスライムナイフについては千鶴も知らないアイテムであったようだ。
ダンジョン産アイテムをまとめた本を昔読んだことがあるけど、スライムナイフみたいなアイテムについては記載されてなかった覚えがある。
じゃあ新種のアイテムって事になるのかな。
まぁ使いどころはマジで分からないけど、今度千鶴と一緒に考えるか。
その後しばらく千鶴とやり取りをしていたのだが、どうやら最近天心百花の方で動きがあったらしく、少し忙しくなりそうだとメッセージで帰ってきた。
千鶴から一日時間を開けられる日を送ると返ってきたので、それが来るまではダンジョンへ潜ることにしよう。
「っと、危ない、乗り過ごすところだった」
スマホに夢中になっていたらいつの間にか最寄り駅に到着していたので慌てて降りて家へ帰宅する。
「よし、明日も頑張りますか!」
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その日は意外にも疲れが溜まっていたのか、ご飯を食べてお風呂に入ったら急激な眠気に襲われてしまったので直ぐに寝てしまった。
気が付いたら朝になっていたので、ダンジョンへ行くための準備を進める。
「ダンジョンへ行く途中に何かご飯買ってこうかな」
昨日休憩中に食べた携帯食料があんまり美味しくなかったので、コンビニで適当に買っていく事にする。
「慧、今日も気を付けてね?」
「うん、大丈夫だよ母さん。スライムダンジョンが思ったより簡単な場所だったから怪我をすることはないと思う」
「そうなの?それでも気を付けてね?」
「ありがとう」
昨日と同じように母さんに見送られながら家を出る。
朝食に関しては流石にかつ丼ではなかった。
ま、まぁ朝からかつ丼はかなり重かったので実はありがたい。
そのまま昨日と同じ荷物を持って家を出て歩いているといつの間にかスライムダンジョンへ到着していた。
これまた昨日と同じように更衣室で鎧を着て刀を装備してダンジョンへ向かう。
「貴方は昨日の」
「おはようございます、今日もこのダンジョンへ潜ろうと思いまして」
「聞きましたよ、相当な数スライムを倒したとか」
「え、もしかして噂になってたりします?」
「このスライムダンジョンであれだけの数を一人で倒すのは聞いたことがなかったもので、少し噂になってますよ」
「そ、そうなんですか…」
うーん、噂になるのはちょっと面倒だな。
でも今日も同じくらいスライムを倒す予定だから、やっぱり今日でスライムダンジョンは卒業した方が良さそうだ。
「それでは探索者証をお願いします」
「あ、分かりました」
「はい、確認しました。それではお気をつけて」
「ありがとうございます!」
職員の許可も出たので早速スライムダンジョンの中に入る。
0層を抜けて1層にたどり着き、レーラに頼んでマップを表示してもらう。
「あ~、やっぱり隠し部屋は復活してなさそうだな」
マップを見てみると、昨日表示されていた銀点は全て無くなっていた。
そもそも隠し部屋が復活するかは分からないので、こんなものかと納得する。
隠し部屋がないなら昨日探索した5層までは用がないのでさっさと進むことにする。
「とりあえず、極力モンスターと戦わないように下を目指しますか」
俺は少し速足でダンジョンを進んでいく。
黙々とダンジョンを進んでいると気が付けば5層を突破し、6層まで到着していた。
「時間は…なるほど、モンスターと戦わずに移動すれば大体1時間くらいでここまでこれるのか」
昨日は隠し部屋を周りながらなるべくモンスターと戦闘をしていたので、ここまで来るのに一日使ってしまっていた。
さらにレーラのマップがなければ道も手探りで進まなければいけないので、もっと時間がかかっていただろう。
本当にありがたいスキルである。
「さて、それじゃあ隠し部屋を周りながらスライムを倒していきますか!」
俺は昨日と同じように探索を進めていく。
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そして気が付いたときにはもう9層まで到達していた。
ここまで来る時に隠し部屋から手に入ったアイテムはあまり昨日と変わらなかった。
つまり耐水のネックレスと回復ポーションだ。
これどうしようかな…ポーションはあって困らないけど、耐水のネックレスに関してはこんなに要らないんだよなぁ…。
今後ダンジョンへ潜り続けることを考えると、流石にアイテムをどうするかを考えなければならない。
俺の部屋に無限に置けるわけじゃないしな。
「その辺も千鶴と相談するか」
困った時の千鶴さんである。
先輩探索者としていい知恵を貸してくれることに賭けよう。
「さて、9層ではどんなスライムが出てくるのかな~」
赤点の方へ向かいながらそんなことを考える。
俺はここに来るまでかなりの数のスライムを倒してきた。
しかも新しいスライムと出会う時は必ずその感触も確認しているので、スライムソムリエを名乗っても良いかもしれない。
「お、あれが9層のスライムか」
そして俺の目の前に現れたスライムは、滅茶苦茶金属質な見た目をしたスライムだった。
「なんかいきなり見た目が変わったな~」
見た目からすると凄く固そうだ。
流石に鉄の塊を攻撃すると刃が欠けるので、攻撃方法は少し考える必要がある。
まぁ一回鑑定してみてからか、それじゃあレーラ、鑑定お願いします。
《鑑定・・・種族:幻獣
個体名:フェイクメタルスライム
戦闘能力:F
思考能力:G
所持スキル:なし
ドロップアイテム:魔石(極小)》
なるほど、フェイクメタルスライムって言うのか。
フェイクって事は、もしかして見た目通りじゃないのか?
「うーん、とりあえず攻撃してみるか」
スライムの方へ歩いて行くと、スライムもこちらへ近づいてきた。
その動きを見てみると、その金属質な見た目のわりにプルプルしている。
あー、これは本当に見た目だけっぽいな。
「よっと」
フェイクメタルスライムが飛び掛かってきたので刀で攻撃してみると、今までのスライム同様一撃で倒せてしまった。
それに切った感触も他のスライムと大差ない。
「本当に見た目だけだったな…ま、気を取り直して隠し部屋に向かいますか」
ちょっと残念なスライムではあったけど、俺は隠し部屋へ向かう事にした。
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