第34話 真由へのプレゼント
電車に乗って移動して真由の病院まで来た。
面会の受付を済ませて病室まで向かう。
ちなみに病院の中に武器は持ち込めないので、受付に預けてきた。
真由のいる病室の前まで来たので扉をノックする。
「どうぞ」
「よう真由、来たぞ」
「慧君?どうしたの?」
俺が突然来ることはよくあることなので、真由は少し驚いたような顔をしたけど直ぐ笑顔で迎え入れてくれた。
「それにその荷物、どこか行ってたの?」
「あぁ、今日はちょっとダンジョンに行ってたんだよ」
「あ、じゃあ探索者になれたの?」
「うん、ほら、ちゃんと探索者証だって持ってるぞ!」
「ホントだ、おめでとう慧君」
証明書を見せると本当に嬉しそうな顔をしていた。
真由は今日も本を読んでいたらしく、手に本を持っていた。
「何の本を読んでたんだ?」
「今日は地方ダンジョン特集について読んでたよ、ほら」
「あー、この本か。俺も読んだことあるぞこれ」
そう言いながら真由が差し出してきたのは地方にある穴場的なダンジョンを紹介している雑誌だった。
高校時代によく千鶴と読んでいた記憶がある。
「それより慧君、初めてのダンジョンはどうだった?」
「そうだな~、色々新しい発見があって楽しかったぞ」
「そうなんだ、例えば?」
「スライムが想像してたより弱かったとか?」
「へ~、やっぱりそうなんだ」
千鶴からダンジョンの話しを聞くときもそうだけど、真由は凄くキラキラした目で話しを聞いていた。
「いいなぁ~」
その後もしばらくスライムダンジョンについて話していたら、ふと真由がそう呟いた。
今の真由にとってダンジョンは遠い存在であり、本などからしかその存在を感じ取ることが出来ない。
「真由、実はお土産があるんだよ」
「うん?お土産?」
だけど、それも今日までだ。
俺のスキルを使えばダンジョンが大好きな真由に、ダンジョンへ行かなくてもその存在を感じさせる事が出来る。
「あぁ、ちょっと待ってな。よっと、手を出して」
「うん?はい」
「これがお土産だ」
「これは…ネックレス?」
俺が真由に渡したのは隠し部屋から複数手に入ったネックレスの一つだ。
普通の探索者であれば一つ手に入れるのも苦労するだろうけど、レーラに掛かればいくらでも手に入れる事が出来る。
「綺麗なネックレスだね…どうしたのこれ?」
耐水のネックレスは青色の宝石っぽい何かがついており、アクセサリーとしてつけても十分通用する見た目になっている。
「それさ、今日ダンジョンで手に入れたんだよね」
「ダンジョンで…?ってこれダンジョン産のアイテム!?だ、ダメだよ慧君!こんなの貰えないよ!?」
ダンジョン産のアイテムであることを伝えると、急いでこちらへ返して来ようとした。
「ははは、大丈夫だよ真由。ほら見てくれ」
「それは、同じネックレス?」
「うん、それにほらもう一つ」
「えぇ!?まだあるの!?」
「まだまだあるぞ!」
「えええ!?」
次から次へとバックからネックレスを取り出すと、真由は目を見開きながら驚いていた。
その顔が面白くて少し笑ってしまう。
「なんでこんなにあるの?」
「ほら、前に話しただろ?俺のスキルでダンジョンのマップを表示できるって」
「う、うん」
「そのマップは隠し部屋の位置も分かるんだよ、だから全部の隠し部屋を回ってきてアイテムを回収してきた!」
「そ、そうなんだ…凄いね…」
真由は驚きすぎたのか少し呆然としている。
「だからそのネックレスあげるよ。俺もう付けてるし」
「慧君とお揃い…」
真由は小声で何かを呟くと、ネックレスを見ながらニヘラと笑顔を浮かべた。
何を言ったのかは聞こえなかったけど、喜んでくれて良かった。
「ねぇ慧君?」
「なんだ?」
「よかったら付けてくれないかな?」
「いいぞ」
ネックレスを持ちながら真由がそう聞いてきたので俺は椅子から立ち上がって真由の傍へ移動する。
そしてネックレスを受け取り真由の首へ付けてあげた。
「よっと、これで大丈夫だろう。良く似合ってるよ」
「あ、ありがとう…(えへへ、慧君とお揃い…)」
「そうだ、他にもアイテムを手に入れたんだけど見るか?」
「そうなの?見たいかな」
「よし!次は体力ポーションだ!」
「へ~、これがあのポーションなんだ」
その後も手に入れたアイテムを真由に見せていき、真由は凄く楽しそうにしていた。
気が付けば日も暮れてそろそろ帰る時間となっていた。
「っと、もうこんな時間か」
「ありがとね慧君、凄く楽しかった」
「いいって、また何か手に入ったら持ってくるよ!」
「うん、でも安全第一でね?」
「分かってる、それじゃあまたな」
「うん、またね慧君」
俺は真由の病室を後にした。
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