第33話 初めてのダンジョン探索5
宝箱の中に入っていたナイフをとりあえず取り出してみる。
「ほぉ~、結構綺麗だな~、こんな刀身のナイフが出てくるとか流石ダンジョンだ」
さてさて、どんなナイフなのかな?
レーラさん、よろしくお願いします!
《鑑定・・・宝物名:スライムナイフ
ランク:E》
す、スライムナイフ?なんじゃそりゃ?
スライムとの共通点なんて、刀身の色しかなくないか?
「別に刀身が柔らかい訳じゃないしなぁ…」
《推奨・・・ナイフを振ってみてください》
ん?ナイフを振れば良いのか?
とりあえずやってみるか。
「よっと…え、えぇ!?」
俺がスライムナイフを振ってみると、なんと刀身が伸びたではないか。
しかも鞭のように撓っている。
これはかなり使えるんじゃないかと一瞬だけ思った。
一瞬だけね…。
狭い隠し部屋の中でスライムナイフを振ったことで、当然刀身は壁にぶち当たった。
するとどうなったか?壁に当たった刀身はそのままベチャっという音を立てて砕け散ってしまった。
砕け散るって表現で合ってるのか分からないけど、とにかく刀身がなくなった。
「これ、どうするんだよ…」
今俺の手の中には刀身がなくなり、柄のみになったナイフが握られている。
せっかく良さそうなアイテムだったのに少し残念だ…。
「ま、とりあえず他の隠し部屋を回ってみるか」
その後俺は他の隠し部屋を周り、2つの回復ポーションを回収した。
バックを確認するともうパンパンなので、帰る必要がある。
「さて、それじゃあ帰りますか!」
スライムとの戦闘は正直あまり面白いものはなかったけど、アイテムはかなり回収できたので満足度は高い。
それにスライムの魔石は滅茶苦茶安いけど、気が付いたらとんでもない量になっていたので意外と稼ぎになるかも知れない。
「なぁレーラ、今日どれくらいスライム倒したんだ?」
《回答・・・本日討伐したスライム個体数・124体》
おぉ、やっぱり結構倒してたな。
単純計算で1層につき25体くらい倒したことになる。
「スライムの魔石って確か100円くらいだったかな?だとしたら1万円は超えるのか。初めてにしては上出来じゃないか?」
本来であればこんなに倒せないだろうけど、レーラのマップのおかげでピンポイントでモンスターの場所に行けるのでこれ程倒せたんだと思う。
「なぁレーラ、スキルのレベルが上がるのってあとどれくらいスライムを倒せば良いんだ?」
《回答・・・推定100体》
おぉ、じゃあ今日くらいのペースでスライムを倒せば上がるのか!
これは少しやる気が出てきたぞ。
明日もここへきて残りの階層を探索しつつ、スライムを倒していこう。
多分明日中にレベルが上がるだろう。
どんな感じになるか楽しみだなぁ。
「っと、もうここまで来たのか。帰りは早いな~」
マップを見ながら極力スライムの居ない道を通って来たので、帰りは滅茶苦茶早く1層まで到着した。
後もう一個階段を登れば直ぐにダンジョンから出れるんだけど、マップを見る限りどうしても避けられなさそうな場所にスライムが居た。
「仕方ないからこいつだけは倒していくか」
もうバックは一杯だけど、あと一匹くらいなら大丈夫だろう。
しばらく歩くと見慣れた青色のスライムが現れた。
「さて、ちゃっちゃと倒して真由の所に行くか」
《推奨・・・スライムナイフを押し当ててください》
「はい?」
さてスライムを倒すぞと意気込んでいたら、レーラがまた訳の分からないことを言い出した。
スライムナイフを押し当てる?
「でも、刀身もうないぞ?」
《推奨・・・スライムナイフを押し当ててください》
「まぁ、レーラがそういうならやってみるか」
今までレーラに言われたことで不利益になったことは一度もないので、どんな意味があるかわからないけどやってみるか。
「よいしょっと、えぇ?」
するとスライムナイフを押し当てた瞬間、スライムがスライムナイフに吸い込まれて刀身に変化した。
ちょっと自分でも何言ってるか分からないけど、マジでそうなったとしか言いようがない。
「スライムナイフって、そういうこと…?」
スライムのような性質のナイフじゃなくて、スライム自体を刀身にするナイフって事か?
スライムを吸収したスライムナイフは、初めて見たときのように透き通るような青色の刀身をしていた。
「これ、出てこないよな?大丈夫だよな?」
モンスターをダンジョン外へ出すことは固く禁止されているのでそこだけが心配だ。
「ちょっと千鶴に相談してみるか…」
ちょうど余ったアイテムも渡そうと思ってたし、その時に相談してみることにする。
その後、俺は無事にダンジョンから出ることが出来た。
「あ、ずっと潜ってましたけど大丈夫でしたか?」
「はい、結構楽しくて気が付いたら時間が過ぎてました」
「そうでしたか、でもこまめに休憩は取ってくださいね?」
「わかりました、気を付けます」
ダンジョンを出ると、入った時と同じ職員がゲートの前に立っていた。
俺のことを覚えていたらしく、そう話しかけてきた。
少し職員と話した後、アイテムを売るためにMDDの買取所へ向かう。
「いらっしゃいませ、買い取りでしょうか?」
「はい、スライムの魔石が沢山あるので買い取りお願いします」
「(沢山ある…?)かしこまりました、こちらにお願いします」
俺が買い取り職員にそういうと、ボウルのようなものを渡された。
俺はバックから魔石を入れていた袋を取り出してボウルに移し替えていく。
「よし、これでお願いします!」
「こ、こんなに倒してきたんですか?」
「はい」
「よくこんな沢山のスライムと出会いましたね」
あぁそうか、普通の探索者は普通こんなモンスターと出会うことはないからビックリしてるのか。
「えっと、運が良かったんですよ」
「そうですか?(運だけでこれだけのスライムと遭遇するとは思えませんが…)とりあえず買い取りを進めさせていただきます」
「わかりました」
少し訝しむような視線を向けられたが上手く誤魔化せたようだ。
職員は一つ一つ魔石を数えている。
スライムの魔石はかなり小さいので神経を使いそうな作業だ。
まぁ本来であればこれほど魔石は多くないのでそこまで大変じゃないんだろうけど。
「はい、確認しました。全部で124個になりますので1万2千円になります」
「ありがとうございます!」
「このスライムダンジョン始まって以来の買い取り額かもしれませんよ」
「そ、そうなんですか?」
「はい、おめでとうございます。この調子で頑張ってください」
「わかりました、ありがとうございます!」
ヤバいな、明日も今日と同じくらいのペースでスライムを倒す予定だから運が良いだけで通すのは厳しくなっていくかもしれない。
う〜ん、とりあえず明日はスライムダンジョンに潜ってその後は別のダンジョンにしようかな。
とりあえず着替えて真由の所へ行きますか。
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