第32話 初めてのダンジョン探索4

「さて、そろそろ行きますか!」


座りながら携帯食料を食べて休憩したことで結構体力が回復した。

もう先程までの疲れはあまり感じない。


「ここから一番近い隠し部屋は、あっちか」


俺は今通路の分かれ道に立っていた。

マップを確認すると右側の通路を進んだ先にちょうど隠し部屋がある。


しかもその途中に赤点があるのでスライムがいるらしい。

5層に入って直ぐ休憩したためまだ5層のスライムに出会っていない。


「今度はどんなスライムかなぁ...」


2層ではアーリースライムが出てきたけど、あいつはちょっと楽しかった。

近くによると飛び掛かってくるので、ちょっとだけだけどモンスターと戦っている感覚を味わえた。


その後3層に行けばもっとスライムも強くなっていくのかなって思ったけど、そんなことはなかった。


3層で出会ったのはリーフスライムだ。

緑色のスライムで行動は1層のスライムと全く変わらない。


正直また作業が始まるのかとげんなりした。

唯一1層のスライムと違うところがあったんだけど、これも滅茶苦茶しょうもなかった。

まさかリーフスライムはただ草の匂いがするだけのスライムだとは思わなかった...。


あのスライムに近づいたとき、なんか青臭いなと思ったんだよ。

そしたらあのスライムからその匂いが発せられていた。


「いやぁ、まさか草の匂いがするだけだとは思わなかったな~」


その後4層で出会ったのはローズスライムだ。

こいつもリーフスライムと同じでただバラの匂いがするだけだった。


最初は良い匂いだなって思ってたんだけど、ずっと同じ匂いを嗅ぎ続けるのはキツイものがあった。


「今回は匂い系じゃないといいな。お、あれか」


今俺の目の前には赤いスライムが佇んでいる。

見た目は結構ローズスライムに近いけど、どうなんだろう?


《鑑定・・・種族:幻獣

      個体名:レッドスライム

      戦闘能力:F

      思考能力:G

      所持スキル:なし

      ドロップアイテム:魔石(極小)》


「お?おぉ!戦闘能力が一段上がってる!」


これは期待できるのではないだろうか?

戦闘力Fだとゴブリンと一緒だよな、なら最低でもゴブリンくらい強いってことになるだろう。


やっぱり5層とかまで降りてくるとスライムでも少しは強くなるんだな。

これは良い誤算だ、ちょっとウキウキした気持ちでスライムに近づいていく。


「さて、どんな感じで君は戦うんだ?」


俺がレッドスライムに近づくと、奴もこちらに気が付いたのかモゾモゾ近づいてくる。


「今までのスライムより早いな、アーリースライムより早いかもしれない」


そしてレッドスライムは一定の距離まで近づいたところで俺に飛び掛かってきた。

なんとなく予想できたのだ、抜いていた刀で切り伏せる。


「んん?なんかちょっと重いか?」


今までのスライムは刃が当たった瞬間に消えていたんだけど、このレッドスライムはちゃんと切る感触が伝わってきた。


しかも刀からそこそこの重みが伝わってきた。


「なるほど?ちょっと重いスライムか、だから戦闘能力がFだったのか」


確かにこのぐらいの重量の物体が直撃すれば、結構な衝撃になるだろう。

それこそ、あのゴブリンに殴られるのと同じくらいの衝撃が来るはずだ。


「いいな5層、今までと違ってちゃんと探索してるぞって気分になる」


これは宝箱の中身も期待できるのではないだろうか?

まぁゴブリンも戦闘力Fだったけど、あのダンジョンの隠し部屋から手に入ったのは全て回復ポーションだったから逆にあまり期待できないのか?


「うーん、考えても分からないしとりあえず隠し部屋に向かうか」


もう隠し部屋の直ぐ近くまで来ていたので、そこへ向かう。


「さて、この壁のはずだな。今度の仕掛けはなにかな?」


周囲を見渡すと、ちょうど壁の近くに岩があった。

ダンジョンの中にはこういった岩などが転がってるんだけど、今まで見てきた隠し部屋の近くに岩があったことはない。


「つまり、この岩が仕掛けなのかな?」


壁を見ても特に違和感を感じないので、俺は岩を調べ始めた。

ちょっと叩いてみたりしたけど普通の岩だな、拳が痛い...。


「動かせるか試してみるか」


俺は岩に両手をついて力を込めてみる。

すると少しづつではあるけど岩が動き出した。


「ぐぬぬ...結構重いな!」


ある程度動かすと岩からカチッという音が聞こえてきた。

それと同時に壁が振動しながらスライドしていく。


「よっしゃビンゴ!」


壁が開いたので中に入ると、いつもと同じように宝箱が鎮座していた。

よしレーラ、罠はないか確認してくれるか?


《回答・・・宝物ランクE・防衛機構は存在しません》


ん?宝物ランクE?え、今までよりワンランク高いじゃん!!

ヤバい、めっちゃテンション上がってきた!


「これは今までより良いものが入ってるんじゃないか?」


俺はドキドキする気持ちを抑えながら、ゆっくりと宝箱を開いていく。


「これは、ナイフか?」


すると宝箱の中には刀身が透き通った青色になっている一本のナイフが入っていた。



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