第30話 初めてのダンジョン探索2
「この穴の大きさと形、滅茶苦茶スライムっぽいな...」
俺がここに来るまで結構な数のスライムを倒した。
スライムの大きさを思い出しながらこの穴にはめ込む想像をしてみたんだけど、頭の中ではぴったりとハマった。
「他にそれっぽいアイテムも無かったし、一回試してみるか?」
マップを見ると少し離れたところにスライムがいた。
もし間違ってたらまた考えればいいし、とりあえずスライムで試してみるか。
早速俺はスライムのいる方向へ歩き出す。
いやしかし、鍵とかアイテムを差し込むタイプの隠し部屋は聞いたことあるけど、モンスターそのものをはめ込むタイプは聞いたことがない。
この仕掛けは高ランクダンジョンになってもあるのかな?
スライムダンジョンだから試してみようって気持ちになったけど、これが凄い強いモンスターとかだったら無理だよなぁ。
あ、でもモンスターを気絶させれば運ぶことが出来るか?
そもそもモンスターが気絶するか分からないけど。
「多分この辺にいるはず...あ、居た」
赤点の近くにたどり着いたので目を凝らして見てみると、スライムの姿が見えた。
今回は捕まえることが目的なので、刀は抜かずに近づく。
近づく俺に気が付いたのか、スライムもこっちにズルズルと寄ってくる。
そういえば今までスライムに攻撃される前に倒してたけど、こいつってどんな攻撃するんだろう。
やっぱり飛びついてきたりするのかな~。
でももう目と鼻の先に居るんだよな。
スライムは今足元でプルプル震えている。
よし、とりあえず持ってみるか。
「おぉ、結構重いんだな。それに感触が気持ちいい...」
足元に居たスライムを持ってみると、腕にずっしりとした重みが伝わってくる。
今は手袋をつけてるから詳細な感触は分からないけど、体温が低いのか少しヒンヤリとした冷たさにモチモチとした手触りを感じる。
「.......。はっ」
ヤバい、気が付いたらスライムを触り始めてから5分くらい経ってた。
スライムは癖になるみたいな話しは聞いたことがあったけど、これは危険かもしれない。
っていうか、おとなし過ぎるだろこのモンスター。
5分も触ってたのにただプルプルと震えてるだけだった。
「さて、あの隠し部屋へ戻りますか」
目的だったスライムも確保したので、隠し部屋の方へ戻る。
しかし本当に気持ちいいなこいつ、真由にも触らせてあげたい。
ただモンスターをダンジョンの外へ持ち出すのは全面的に禁止されてるので、バレた瞬間俺は探索者の資格を失うし、捕まってしまう。
確かまだダンジョンが現れて間もないタイミングはその辺の精度がしっかりしてなかったから、スライムとかの大人しいモンスターをダンジョンの外へ連れ出せたそうだ。
だけど別の国で外へ出したモンスターが病魔を振りまいてパンデミックになったことがあった。
そのモンスターもスライムと一緒で凄く大人しかったらしいけど、常に微量の毒を放出していたらしくて長い時間一緒にいると動けなくなってしまうらしい。
しかもその毒は体の中である程度増えると、その体を苗床にしてその人からも毒が放出されるようになってしまうらしい。
だから最初にモンスターを持ち出した人からドンドン拡大していき、パンデミックになったそうだ。
しかも未知の毒だったので既存の薬や治療法も全く効かず、拡大を止めることが出来なかったそうだ。
もしかしてスライムにもそういう毒があるのかもしれないな~。
う〜ん、真由に持っていけないのは残念だけど、せめて写真でも撮って見せてあげようかな。
「よし、戻ってこれた」
そんなことを考えながら歩いていると、隠し部屋の前まで戻ってこれたので壁の穴に近づく。
「うん、やっぱりスライムと同じ大きさだよな~」
手に持ったスライムと壁に空いた穴を見比べてみるが、どう見ても同じ大きさをしている。
「よし、じゃあ早速はめ込んで見ますか」
俺はスライムを穴にはめ込んでみた。
「よいしょっと、うん、滅茶苦茶ピッタリだ」
まさにスライムをはめ込むためにある穴みたいな感じで、本当にピッタリとはまり込んだ。
スライムもそこが落ち着くのか知らないけど、先程まではあんなに震えてたのに今は全く震えていない。
「とりあえずはめ込んで見たけど、何も起きないな?」
やっぱり奇跡的にスライムと同じ大きさなだけであって、別の何かを入れるのか?
「ん?あ...」
何かアイテムを探さなきゃなと思っていたところで、突然壁が振動しながら右側へスライドし始めた。
「おぉ!やっぱりスライムで正解だったのか!あ...」
壁がスライドしたことでその先にある隠し部屋が現れた。
それは良いんだけど、スライムも一緒にスライドしていったので壁と一緒にどこかへ消えてしまった。
「あのスライムどうなるんだろう...」
壁が元に戻るか分からないけど、もし戻らなかったらあのスライムは一生壁の中で生きる事になるのだろうか?
「まぁ考えても仕方ないか...」
俺はスライムの犠牲を無駄にしないように気を取り直して隠し部屋の中に入った。
「お、今回も宝箱があるな」
さて何が入ってるかな?
ゴブリンダンジョンの時は低ランクポーションしか手に入らなかったし、今回も同じような感じかな~。
「レーラ、罠はある?」
《回答・・・宝物ランクF・防衛機構は存在しません》
「了解、じゃあ開けてみますか」
確かゴブリンダンジョンの時も宝物ランクとかいうのがFだった気がする。
やっぱり同じポーションが入ってるのかな?
「よいしょっと、おぉ?なんだこれ?ネックレス?」
宝箱を開けてみると、中にはポーションではなく青い石がついたネックレスが入っていた。
手に持ってよく見ているが、中々綺麗なネックレスだと思う。
「ポーションかと思ってたけど、いきなり装備品みたいなのが出てきたな。レーラ、これってどんなアイテム?」
《鑑定・・・宝物名:耐水防衛機構・Typeネックレス
ランク:F》
「耐水?水系の攻撃が緩和されるってこと?」
《肯定》
なるほど、結構いいアイテムじゃないか?
耐水のアイテムが出るってことはスライムも水系の攻撃をしてくるのかな?
ダンジョンで手に入るアイテムは、そのダンジョンで出てくるモンスターの系統に左右されることがある。
炎系のモンスターが多いダンジョンだと耐火アイテムはや火属性武器が出たりする。
それを考えるとスライムは水属性って事になるんだろう。
「どれくらい水系の攻撃が防げるか分からないけど、装備しておくか!」
さっそく俺はネックレスを装備した。
うん、この感じこそまさにイメージしていたダンジョン探索だ。
モンスターを倒し、アイテムを手に入れ、装備を更新していく。
ゲームではよくあるサイクルだけど、やっぱり実際に体感すると高揚度が全然違う。
さっきまではスライムを倒す作業で少し虚無になってたけど、今はワクワクが止まらない。
「さて、次の隠し部屋に行きますか!」
マップを確認するとまだこのフロアに3つ程隠し部屋があるっぽいので、次の隠し部屋を目指して歩き始める。
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