第28話 スライムダンジョンへ
家に帰った後スライムダンジョンの情報を収集したり、持っていくものの準備を進めているときに電話がかかってきた。
「ん?千鶴からだ。もしもし?」
『あぁ、今日講習会は受けてきたのか?』
「なんで知ってるんだ?」
『日程を調べたら一番近いのが今日だったからな、探索者になることを楽しみにしてた慧なら行ってると思ったんだ』
「すげーな、大正解だよ。今日講習会に行って探索者になって来たぞ」
『そうか、おめでとう慧』
「ありがとうな」
『もう潜るダンジョンは決めたのか?』
あ、丁度いいや、千鶴にスライムダンジョンの事を聞いてみようかな。
多分千鶴も最初の頃は初心者用ダンジョンに潜ってたはずだし、前にスライムダンジョンへ潜ったと聞いたことがある。
ここは探索者の先輩である千鶴の意見を聞いたほうが良いだろう。
「あぁ、明日スライムダンジョンへ行ってみようと思う」
『スライムダンジョンか、慧の家から一番近いダンジョンだな』
「そうなんだよ、何か気を付ける事とかあるか?」
『ない』
「ないの!?」
ん?なんだかこのやり取りにデジャブを感じるぞ。
あ、そうだ。俺がゴブリンと初めて戦ったときにこんなやり取りをした覚えがある。
『ダンジョンに持っていくアイテムは買ったのか?』
「この前買ってきたよ、靴とか鎧とか、ライトとか携帯トイレとか色々買ってきた」
『ふむ、そこまで揃っているのであれば大丈夫だと思うぞ。スライムに慧が負けるわけがないしな』
「スライムって一番弱いモンスターって言われてるけど、そんな弱いのか?」
『あ~、ここで言うのはやめておこう』
「なんでだよ」
『ふっ、明日自分の目で確かめてみろ。それも探索者の醍醐味だぞ』
ふむ、千鶴の言うことも一理あるかもしれない。
ダンジョンに入れば普段見れない景色や光景を見ることができる。
確かに情報を集めることも大事だけど、あんまり危険がないのであれば自分の目で確かめるのもありかもしれない。
「ふ~ん、じゃあそうしてみるよ」
『あぁ、お前とダンジョンに潜れる日を楽しみにしているぞ』
「いや、千鶴と同じレベルになるまで結構時間かかると思うぞ?」
『どうだろうな?私は案外直ぐ同じレベルまで昇り詰めると思っているが』
「いやいや、俺とお前の間で3年も探索者としての時間が開いてるんだぞ?単純に考えても同じくらい時間がかかるだろ」
『さて、どうだろうな?』
千鶴は俺に何を期待しているんだろうか?
もし3年未満で千鶴と同じ探索者になれるなら、世界中の探索者が既に高ランクに達しているだろう。
そのくらい千鶴は真剣にダンジョンに潜ってたから、簡単に追いつけるとは思えない。
でも、いつかは一緒に探索してみたいな~。
『初めてのダンジョン探索は中々刺激的だから、探索が終わったら真由の所に行って話して上げると喜ぶと思うぞ』
「あ~確かに、それもありだな」
真由もダンジョンが好きなので、千鶴が話すダンジョンの話しを目をキラキラさせながら聞いていた。
まぁ俺も隣で同じ表情をしながら聞いていたと思うけど。
そうだな、明日は探索が終わった後真由の所に行くか。
ついでに何か隠し部屋からアイテムが手に入ったらお土産に持って行っても良いかもしれない。
うん、結構いいかも。
ダンジョン産のアイテムは貴重で一般の人は手に入りづらいから、喜んでくれるといいな~。
『がんばれよ慧』
「うん、ありがとう千鶴」
『ではな、おやすみ』
「おやすみ」
よし、少し早いけど明日に備えて寝るとするか!
本当に楽しみだ...。
・
・
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いつもより早く寝たこともあり、かなり早く目が覚めた。
ダンジョンには何時でも潜れるようになっているので、少し早いけどご飯を食べたら出発しよう。
「あら、今日は早いのね慧」
「おはよう母さん」
「確か今日ダンジョンに行くのよね?」
「うん、スライムダンジョンに行ってくるよ」
「近くにあるダンジョンよね?気を付けて行ってくるのよ?」
「うん、ありがとう」
母さんと父さんには、昨日晩ご飯を食べているときに今日ダンジョンへ行くことを話していた。
だからだろうか?朝から元気の出る食事を出してくれた。
ありがたいんだけどさ...朝からかつ丼は重いよ母さん...。
気合でかつ丼を食べ、部屋に戻り荷物を持って玄関へ向かう。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
母さんに見送られながら家を出た。
スライムダンジョンまでは徒歩で10分くらいだ。
ダンジョンの中ではどんな事が待っているのか妄想をしていると、直ぐに到着した。
ダンジョンに併設してあるMDDの建物内に入り、更衣室へ向かう。
更衣室の扉にはロックがかかっており、探索者証をかざすことで入ることが出来る。
探索者証をかざすとピッっという音と共にロックが外れて扉が開く。
中へ入り持ってきたリュックから鎧や靴を取り出し身に着け、刀袋から刀を取り出し腰に装備する。
よし、忘れ物はないな、準備万端だ!
俺はダンジョンへ持っていかない荷物をロッカーの中へしまい、ダンジョンの入口へ向かう。
朝早い時間にも関わらずMDDの職員が立っていた。
「おはようございます」
「おはようございます、探索者証の提示をお願いできますか?」
「はい!」
「はい、ありがとうございます。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
「ありがとうございます!行ってきます!」
俺はダンジョンの入り口を潜り、三回目となるダンジョンの中へ入っていった。
0階層は基本的にどのダンジョンでも同じ作りになっており、見るものも無いので早速1層の階段を降りていく。
「さぁ、やって来たぞスライムダンジョン」
《提案・・・ダンジョンマップを表示しますか?》
「あぁ、頼む」
《承知・・・ダンジョンマップアクセス開始・・・対象ダンジョンランクF・・・マップ取得を申請・・・成功・・・ダンジョンマップを表示します》
レーラがそう言うと、ゴブリンダンジョンの時と同じように俺の視界にダンジョンのマップが表示された。
マップを見ると青点を中心に赤点や銀点が点在している。
さて、行きますか!
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