第27話 潜るべきダンジョン

「んん。さて、これで全員の摸擬戦が終わったわけだが、装備を着けての戦闘はやりずらかっただろう?いくら初心者用ダンジョンが安全でも、慣れない戦闘だと少しくらい怪我をする可能性はある。だが今回お前たちは経験を積んだ、この経験を元にして安全にダンジョンを探索するように心掛けて欲しい」

「「「はい!」」」

「よし、じゃあ一人ずつ探索者証を渡していくから名前を呼ばれたら前に出てきてくれ」


どうやらこれで講習会は終わりなようだ。

そして教官が言ったように、名前を呼ばれた人から順に探索者証を貰っている。


これを貰えばついに俺も探索者になり、ダンジョンへ潜ることが出来る。

一時は諦めていた探索者だけど、こうして実際になると感慨深いものがある。


「舞月慧」

「はい」

「お前はまぁ、大丈夫だろう。ただお前のスキルは鑑定だからな、慢心するなよ?」

「分かってます、最初は初心者用ダンジョンを巡る予定ですから」

「そうか、期待してるぞ」

「ありがとうございます!」


教官に名前を呼ばれたので出ていき少し話した後探索者証を渡された。

おぉ、本当に探索者証だ!めちゃくちゃテンションが上がる。


「さて、今日の講習会はこれで終わりだ。各自好きに帰っていいぞ~」


教官がそう言ったので、早速帰ることにする。

探索者どうしで親睦会をしないのかって?そんなのしてる場合じゃない。


探索者になったんだぞ?ならダンジョンに潜るだろう。

ただ今日はもう良い時間なので、潜るのは明日からになる。


それでも色々と準備があるので、早く帰りたかった。


鎧や刀を持ってきたバックへ仕舞い直ぐに建物を出た。

多分俺が一番帰るのが早かっただろう、あまりの帰宅スピードに他の講習生達は唖然としていた。


帰りの電車に乗りながら、どのダンジョンへ潜るべきか考える。


「(さて、どうしたもんか...)」


俺の家から通いやすい範囲にある初心者用ダンジョンは、5つある。


「(まずはこの前行ったゴブリンダンジョン)」


このダンジョンは俺がスキルを獲得したダンジョンだ。

出てくるモンスターが全てゴブリンで固定されている。


下層へ潜るごとにゴブリンのバリエーションが増えるのだが、強さは対して変わらないらしい。

千鶴と一緒に少しだけだが探索したので、潜りやすい部類だろう。


「(次がコボルトダンジョン)」


これはゴブリンダンジョンと反対方向にあるダンジョンだ。

その名の通り出てくるモンスターが全てコボルトで形成されている。


強さはゴブリンと同じくらいらしい、つまり滅茶苦茶弱い。

ただゴブリンと違って、ドロップアイテムで毛皮を落とすらしい。


この毛皮はゴブリン棍棒より高値で取引されているので、ゴブリンダンジョンよりこちらの方が人気が高い。


「(次が草ダンジョン、だけどここはなぁ...)」


このダンジョンは家から近い位置にある森林型のダンジョンだ。

その名の通りダンジョンの中は草が生い茂っており、虫系のモンスターが出現する。


正直このダンジョンには行きたくない、何故なら俺は虫が嫌いだからだ。

このダンジョンで出てくる虫系モンスターは相当大きいらしい。


そんなものと遭遇してしまったら、俺は気絶してしまうかもしれない。

いくら初心者用ダンジョンでも、中で気絶するのは論外だろう。


「(次が猫の園)」


このダンジョンは少し特殊で、猫系のモンスターが出てくるのだが全く襲ってこない。

むしろすり寄ってきて探索者に癒しを与えてくれる。


その人懐っこさから探索者の間で非常に人気なダンジョンになっている。

どんなダンジョンだよと思わなくもないが、ダンジョンの種類は多種多様なのでこういったケースもあるんだろう。


猫の園ではモンスターを倒すことが禁止されている。

そして俺の目的はモンスターを倒して成長因子を手に入れてスキルを成長させることにある。

だから、このダンジョンは俺の目的に合わない。


「(そして最後にスライムダンジョン)」


ここが家から一番近いダンジョンになる。

その名の通りダンジョン内にはスライムしか出現しないダンジョンだ。


スライムしか出現しないうえに、スライムは極小の魔石しかドロップしないので探索者の間では不人気だ。


ただその独特なフォルムや癖になるような感触から一部の層から人気がある。


うーん、どうしたもんか。

通いやすいのはスライムダンジョンなんだよなぁ...。


そういえば、どのダンジョンでも隠し部屋ってあるのかな?


《回答・・・存在します》


じゃあスライムダンジョンでもあるのか?


《回答・・・存在します》


なるほどね、じゃあ俺にとってはスライムダンジョンであってもある程度は美味しいダンジョンになるわけだ。

隠し部屋に何があるかは分からないけど、それでもスライムを倒して極小の魔石しか手に入らないよりはずっといいだろう。


ただスライムダンジョンの隠し部屋から手に入ったアイテムを全てMDDに売ったら色々と面倒な事になるかもしれない。


まぁゴブリンダンジョンの時にポーションが手に入った場合は手元に残しておけばいいし、何か有用なアイテムが手に入った時は千鶴に譲ってもいいな。


うーん、そうだな、ひとまず明日はスライムダンジョンへ行ってみるか。


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