第22話 買い物3

「ベンリー」の中にある携帯トイレコーナーを見てみると、本当にいろんな種類がある。

カラーバリエーションはもちろんのこと、コンパクトさを売りにしたもの、頑丈さを売りにしたもの、遮音性を売りにしたものなど様々だ。


個人的には使えればどれでもいいと思っているのだが、これほど種類があると目移りしてしまう。


う~ん、でもやっぱり頑丈な奴の方がいいかなぁ。

トイレ中にモンスターに襲われたりしたら危険だし、ちょっとでも頑丈な方が良いかもしれない。


あ、でも俺のスキルだったらモンスターが近づいてくるか分かるのか。

そうなると、わざわざ重くて頑丈なものは要らないか?

コンパクトなものにして持ち物の重量を下げたほうが良い気がする。


探索者の先輩である千鶴に相談したいところだが、携帯トイレの相談は少しセクハラになってしまうかもしれないので悩みどころだ。


「まぁ使ってみて合わなければ買いかえればいっか」


しばらく悩んだ後、この結論に至ったので俺はコンパクトな携帯トイレを購入することにした。

ワンタッチで展開されるもので、便器の中には排泄物を分解するための袋が入っている。


しばらくこの袋の中に入れておくと、肥料になるらしい。

どういう原理でそうなるのか分からないけど、これが発明された時は革命が起きたほどだ。


ちなみにこの肥料も専門のお店に持っていけば買い取ってくれるらしい。


携帯トイレを購入したことで、今日買おうとしていたものは全て購入したことになる。

全て宅配を頼んであるので、そのうち家に届くだろう。


さて、この後どうしようかな?せっかく「Labyrinth」に来たんだしもう少し散策してみようかな。


そうだ、高ランク探索者向けのお店とか少し見に行ってみよう。

俺がその領域まで行けるかは分からないけど、下見がてら行ってみることにする。


「やっぱりこの辺は雰囲気が違うなぁ~」


高ランク向けのお店には、モンスターの素材を扱っているお店もある。


とりあえずこのお店を覗いてみるか。


「おぉ、見たことない素材もあるな~」


なんのモンスターの物か分からないけど、牙や毛皮、骨などの素材が展示してある。

俺は目についた素材を見てみた。


「なんだこれ?ピンク色の牙?こんなのあるんだ」


《鑑定・・・素材名:ファンシーウルフ・牙

      使用用途:媚薬作成

      素材ランク:B》


レーラの鑑定が発動した。

うん、武器に使うのかと思ったら全然違う用途だった...。

なるほど、そういう素材もあるのか。


「お、こっちの素材も面白いな」


次に目についたのは非常に鋭利な毛皮である。

まるで剣山のようになっている毛皮を見てこのモンスターと戦っているところをつい想像してしまう。


どれくらい素早いか分からないけど、非常に戦いづらい相手である事は間違いない。


《鑑定・・・素材名:フォールラット・毛皮

      使用用途:食材

      素材ランク:D》


これ、食材なのかよ。

どうやって食べるんだ?っていうかフォールラットってなんだ?


愚かな鼠かな?ちょっと分からないので検索してみることにする。

すると直ぐに出てきた。


記事によると、一見鋭い毛皮に覆われているように思うが、それは見た目だけで手触りは非常に柔らかい。

また、ドロップ品である毛皮を煮込むとコラーゲンが豊富なスープが出来上がる。


嘘だろ、マジで食材じゃねーか。

しかもこの見た目で柔らかいってマジか?


毛皮は触れるように展示されていたので触ってみると、見た目とは違いプニプニした感触だった。

ヤバい、意外と癖になりそうだ。


その後も色々な素材を見た後、もう結構いい時間になっていたので帰ることにした。


今日購入した商品は明日届く予定になっているので、講習会には間に合うはずだ。


「この後どうしようかな...」


そうだ、ダンジョン探索に向けて武器の調子を確かめておこう。

一応毎日自分の刀を使って素振りをしているが、今日はちょっと本格的に動いてみることにした。


家に帰り部屋に置いてあった自分の刀を持って道場に向かう。

もうこの時間だと門下生も全員帰っているので、この広い道場を一人で使うことが出来る。


あ、そうだ。鎧とかが届いたらそれを着た状態での稽古もした方がいいな。

いきなりぶっつけ本番でやるのも不安だし、明日鎧が届いたら絶対やることにしよう。


「ふ~...」


俺は刀を抜き正眼に構える。

仮想の敵は千鶴だ、俺の記憶している中で千鶴が一番強いので千鶴との戦闘を想像しながら刀を振るっていく。


最初は昔の千鶴を想像しながら鍛錬していき、徐々にギアを上げていく。

今は千鶴が探索者になって少ししたあたりを想像している。


もうこの段階でかなり素早い動きになっているので、意外と対処が大変だ。

そして次にこの間戦った千鶴を想像する。


うん、無理だ。

気が付いたときには俺の首元に刀が添えられている風景が目に見えてしまった。


「はぁ、俺もこのレベルになれるのかな...」


まぁレーラ曰く、モンスターを倒すごとに成長因子が手に入り身体能力が上がっていくらしいのでいつかは千鶴に追いつけるだろう。


それに今は真由を救うという目的もある。

そうだ、一刻も早く真由に呪いを掛けているクソ野郎を見つけ出して真由を救う。


改めてそれを心に刻み込み、鍛錬を続けた。




その後も講習会に向けて準備をしていると、あっという間に講習会の日になった。


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