第16話 決意

「って言う感じなんだ」

「な、なるほど...」


俺は真由に獲得したスキルについて説明していく。

ダンジョンマップが視界に表示されること、モンスターやアイテムを鑑定できること、成長因子ってものを自由に割り振れること、モンスターの弱点が表示されること。


それを聞いた真由は戸惑った顔をしていた。


「慧君のスキル凄いね、そんなにいっぱい出来ることがあるんだ」

「あぁ、千鶴でも聞いたことないスキルらしい」

「そうなんだ、なんだか慧君専用みたいでカッコいいね!」

「あ、ありがとう」


数あるスキルの中には、被っているスキルがあったりする。

本当にオンリーワンのスキルというのは実は珍しい。

一応千鶴のスキルもオンリーワンな性能をしているが、似たような効果は確かあったはずだ。


ダンジョン内でのみ身体能力が上昇したり、戦闘中のみ身体能力が上昇するスキルが類似スキルで挙げられる。


それを考えると、俺のスキルは鑑定以外の効果は全部聞いたことがない。

真由もそう思ったのか、凄く嬉しそうな顔でそう伝えてきた。


やっぱりストレートに気持ちをぶつけられるのは少し恥ずかしい。

だから千鶴、俺が照れてるからってそんなムカつく顔をしないでくれ。


「いいなぁ、私もダンジョンに行ってみたいな...」


ふと真由がそう呟いた。

真由は長いこと入院生活を送っているのでこういった願いを口にすることは珍しい。


以前はよく退院したら何がしたいとか話していたのだが、一向に症状が良くならないので次第にそういうことを口にしなくなった。


それでもいつか良くなる、絶対治ると俺と千鶴で励ましていたのだが真由はどこか諦めている雰囲気を漂わせていた。


「分かった、退院したら皆でダンジョンに行こう!」


だからこそ、久しぶりに願いを口にした真由に対して俺はそう告げた。


「あぁそうだな、私と真由、そして慧の三人でダンジョンに行くぞ」

「二人とも...そう、だね。うん、退院したら行こうね」


千鶴も同じように思っていたのか、真由を励ます。

それを聞いた真由は驚いた後に一瞬悲しそうな顔をしたが、直ぐに笑顔を浮かべる。

やはりどうしても病気の事が頭を過るのだろう。


真由は現在原因不明の病に侵されている。

俺たちが中学生の時、突然真由の足首が動かなくなってしまった。


当然直ぐに病院へ行き精密な検査を行ったのだが、原因は分からなかった。

しかもこの病は徐々に侵攻しており最初は足首だけだったのだが脹脛、膝と次第に動かせなくなっていった。


何が原因か分からないので処置も難しく、医者も次第に侵攻していく病を見ていることしか出来なかった。


ただ、希望がないわけではない。

まだ真由には話していないが、俺のスキルを使えば隠し部屋を見つけることが出来る。

今回ゲットしたポーションはランクの低いものであったが、一番ランクの高いポーションであればどんな病も直すことが出来るという。


実際どこかの億万長者が最高ランクのポーションをオークションで落札し、末期ガンを治しニュースになったことがあった。


俺が高ランクダンジョンへ潜れるようになれば隠し部屋から最高ランクポーションが見つけられるかもしれない。


まぁ正直な話いつ手に入るか分からないので、真由にはまだ伝えないで置いた方がいいだろう。


それにしても、真由がどういった病なのか分かれば処置のしようもあると思うんだけどなぁ、そうすれば侵攻を遅らせることが出来るかもしれないし。


《鑑定・・・種族:人間

      個体名:天ヶ崎真由

      戦闘能力:F

      思考能力:B

      スリーサイズ:78・62・73

      所持スキル・未所持

      状態:呪い》


そんなことを考えてたらスキルさんの鑑定が発動した。

ふむ、なるほど...真由はCカップなのか...じゃなくて!?

ゴブリンを鑑定した時はスリーサイズなんか出なかったのになんで人間を鑑定するときだけ出るんだよ!


ん?ちょっと待て、状態呪いってなんだ?


《回答・・・「呪い」とは他者から行使されている不幸を呼び寄せる術になります》


つまりなんだ...真由は誰かから呪いを掛けられてると?


《肯定》


その話しを聞いた瞬間、俺の中で言いようのない怒りが湧き上がってくる。

誰だ?誰が真由に呪いなんか掛けたんだ、真由が何をしたって言うんだ?


「慧?」

「慧君?」


真由は小学校でも、中学校でもその明るい性格から人気者であった。

困ってる人が居れば直ぐに助け、悩みがあれば親身に聞いてくれる。


そんな真由に誰が呪いを掛けるって言うんだ...。


《検索・・・権限不足により失敗》


なぁ俺のスキル、権限不足って事はお前が成長すれば誰が真由に呪いを掛けたか分かるって事か?


《肯定》


そうか、じゃあ俺がダンジョンに潜ってモンスターを倒せばそのクソ野郎を見つけることが出来るのか。


あと、呪いってポーションで治るのか?


《回答・・・呪いは術を停止させない限り治りません》


そうか、じゃあ俺がやることは決まりだな。

最初は探索者になることに憧れてたからダンジョンに潜りたかったけど今は違う。


「なぁ真由、少しだけ待っててくれ」

「な、なにを?」

「俺が必ず、真由を治して見せるから」

「っ!?」


今はこの大切な幼馴染を救うために、俺はダンジョンへ潜る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る