第14話 ダンジョンの写真Part1

「あぁそうだ、今回の探索は二人に見せるために色々写真を取ってきたんだ、見るか?」

「そうなのか?見たいな」

「うん、私も見てみたいかな」

「分かった、ちょっと待っててくれ」


そう言いながら千鶴はスマホを取り出した。

ダンジョンの中の写真はある程度出回っているが、どうしても低ランクダンジョンの写真が多い。


ダンジョンとは命の危険がある場所だ、特に千鶴のような高ランク探索者が潜っているダンジョンでは今日潜った初心者用ダンジョンとは比にならないほど危険だ。


そんな環境の中で写真を撮るにはある程度余裕がなければいけない。

ダンジョンの写真を投稿している人たちはどちらかと言うとカジュアルな層が多いのでどうしても低ランクダンジョンの写真ばかりになってしまう。


まぁそれでも俺や真由のようにダンジョンへ潜れなかった人たちからすると、ダンジョンの中を見れる数少ない機会なので需要は高い。


あと、ダンジョンの写真と言ってもモンスターが映っていることはほとんどない。

モンスターも当然探索者を見つければ襲ってくる。

その中で写真を撮るなんて行為は襲ってくれと言っているようなものなので、本当に少ない。


スライムのような動きの遅いモンスターはある程度写真を撮る余裕があるので一番出回っているが、他のモンスターに関してはほとんど写真は無くだいたい絵で姿かたちを伝えている。


だからダンジョンの写真は基本的にモンスターが居ない通路や、綺麗な景色などがほとんどだった。


「よし、まずは今回戦ったモンスターの写真から見せよう」

「え?モンスターの写真あるのか?」

「あぁ、頑張って取ってきた」

「凄いね千鶴ちゃん、危なくなかったの?」

「今回はそこまでランクが高くなかったからな、比較的簡単だった」


千鶴さん、マジすげぇ...。

さっきまでモンスターの写真を撮るのは危険だとか考えてたけど、どうやら千鶴には関係なかったようだ。


本日何度目になるか分からないが、流石高ランク探索者だなと感心する。


千鶴が差し出してきたスマホを確認すると、そこには黒い体毛に赤い血管のようなものが浮いた非常に不気味で怖い狼が映っていた。


「うわぁ、怖いな」

「凄く不気味だね...こんなのが居たんだ」

「あぁ、今回潜ったダンジョンは獣系のモンスターが多くてな、大体こんな感じのモンスターが出てきたんだ」

「めっちゃ強そうだなこいつ」

「私的にはそこまで強いとは感じなかったが、一般的な探索者であればこいつ一人でも倒すことは難しいかもしれん」

「千鶴さんパネェ...」


今まで世に出回っている狼系のモンスターは、リアルの狼に近い外見のものがほとんどであったが、千鶴の見せてくれたモンスターは全然そんなことはない。


なんかこの浮き出た血管みたいなやつとか本当に怖いな、俺も将来的にはこんなモンスターと戦うことになるのだろうか?


「あと、狼以外にも熊みたいなモンスターも出てきた、それがこれだ」

「うわ、これも狼見たいな感じなんだ、こっちも怖いな」

「千鶴ちゃん凄いね、私だったら怖くて体が震えちゃいそうだよ」

「まぁ確かにこの見た目だと威圧感はあったな、ただ天心百花には優秀な仲間が多い、だから今回は比較的簡単に倒せた」


千鶴が新たに見せてくれたモンスターは先程の狼と同じように黒い体毛に血管のようなものが浮き出ていた。

特に熊の腕部分に血管が集中しているように見える。

写真だから動かないはずなのに、あまりの躍動感に動いていると錯覚してしまう。


「それと、これがそのモンスターたちから手に入ったドロップ品だ」

「うわ、大きな魔石だな。それにこれは牙とか体毛かな?」

「あ、こっちには宝石みたいなのがあるよ」

「ホントだ、ん?なんか瓶に入った赤い液体とかもあるな」

「あぁ、それは料理に使うソースらしい」

「え?あの見た目のモンスターから調味料がドロップしたのか?」

「あぁ」

「なんで?」


見せてもらった写真には本当に色々なドロップ品が映っていた。

魔石も俺が今日倒したゴブリンの魔石とは比較にならないほど大きい。

下世話な話だが、これだけ大きい魔石であれば数十万くらいの値段になるだろう。


あとは牙や体毛と言ったものもある、これは装備を作るのに使ったりするのかな。

たまに漢方みたいに牙や爪を削って飲んだりする物もあるのだが、この見た目のモンスターからドロップしたことを考えるとあまり使いたくはないな...。


それにこの宝石みたいなやつはなんだろうか、結構綺麗だが明らかに隣に置いてある魔石とは違うように見える。


そして最後の瓶だが、なんだよ調味料って、あの見た目のモンスターから調味料?信じられないな。


「ちなみにだが、そのソースは凄く辛いらしい」

「た、食べたんだ...」

「あぁ、天心百花の料理担当が味見してみたんだが、10分くらいは水道から離れられなかったらしい」

「とんでもなく辛いんだな...」


まさかとは思うけど、この赤いソースはモンスターにあった赤い血管の中身じゃないよな?

もしそうだとすると、このモンスターたちはソースを体中に巡らせていることになる。


そう考えるとさっきまでは怖かったけど、なんだか面白いな。


「千鶴ちゃん、この宝石みたいなやつは何だったの?」

「あぁこれか、これは岩塩だな」

「岩塩...」

「これも食材なのか...」


あれ?もしかして千鶴が潜っていたのはグルメダンジョンだったのかな?

グルメ系のダンジョンは比較的難易度が低めの物が多いから勘違いしてたけど、もしかしたらそうなのかもしれない。


でもあの見た目のモンスターを見た後だと、少し口にするのが憚られる。


「後はこんな部屋もあったぞ」


そう言いながら千鶴はさらに色々な写真を見せてくれた。

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