第13話 もう一人の幼馴染

「こちらがスキル証明書になります」

「ありがとうございます!」

「MDDのサイトでこちらに振られている番号を入力すると探索者講習会に申し込むことができますので、よろしくお願いします」

「はい、帰ったら早速申し込みします」


受付の人からスキル証明書を貰った。

そこには講習会に参加するための管理番号が書かれている。

これでようやく俺も講習会に参加することが出来る。

探索者になるのは本当に夢だったから滅茶苦茶嬉しい。


スキル証明書を貰った後は、手に入れた魔石を売るために買い取りカウンターへ向かう。

そこの受付にもこれまた美人な女性が立っていた。


「いらっしゃいませ、買い取りでしょうか?」

「はい、魔石を手に入れたのでお願いします」

「お預かります」


魔石を取り出して受付嬢に渡す。

今回はマップを見てモンスターとの戦闘を避けながら隠し部屋を回ったので、結局三回ほどしかゴブリンと戦わなかった。


つまり手に入れた魔石は3つになる。


「確認しました、極小サイズの魔石が3つですので300円になります」

「ありがとうございます!」


1層のゴブリンから取れる魔石は全て極小サイズの為、買い取りの値段はこんな感じだ。

魔石は大きさに寄って値段が全く違うので、一番小さいものだと数百円、一番大きいものだと数千万円とかする。

今回千鶴が倒したオルトロスの魔石だと、多分だけど数百万くらいの値段になるだろう。


そう考えると探索者は非常に夢のある職業だと言える。

その分探索者として稼げるようになるまで結構大変だが、それでも探索者に憧れてた俺としてはこの少ない稼ぎでも少し感動している。


まぁ隠し部屋から手に入れたポーションとかを含めると実は10万円くらいの収入になってたりするんだけどね。

初心者用ダンジョンの1層でこれだから、もっと難易度の高いダンジョンに潜った場合どんなものが手に入るのか凄く楽しみだ。


魔石の買い取りも終わったのでここでの用事は全て終わったことになる。


「真由の所に行くか?」

「あぁ、そうしよう」


ダンジョンで話してたように、この後は真由のいる病院へ向かうことにした。

少し距離があるので電車で移動することにしたのだが、千鶴は有名人なのでバレないように帽子を深く被っている。

ただ千鶴の立ち姿は滅茶苦茶綺麗なので、顔が見えなくても少し注目を集めてたりした。


「見てあの人めっちゃ綺麗に立ってる」

「ホントだ、帽子も深くかぶってるしモデルさんかな?」

「やっぱりモデルだと顔が分からなくてもこう、オーラみたいなのがにじみ出てくるのかな?」


今も周りで千鶴のことをモデルだと勘違いした人たちが話している。

千鶴は結構身長も高いので、実はモデルとしてもやっていけそうな気はする。

美人だしね。


「どうした慧?」


そんなことを考えながら千鶴の顔を見ていたら気が付かれてしまった。

美人だから見てたなんて恥ずかしすぎて口が裂けても言えないので誤魔化しておこう。


「いや、何でもないよ、久々に三人で集まるから楽しみだなって思ってさ」

「あぁ、そうだな。私も忙しかったら真由に少し寂しい想いをさせてしまったかもしれん」

「俺が会いに行ったときは心配してたぞ」

「そうか、今日会ったら謝っておくか」


そんなことを話しながら電車に揺られていると、直ぐに病院の最寄り駅に到着した。

ここからは歩きで向かうのだが、病院は駅の近くにあるので直ぐに到着する。


病院の中に入り面会用の受付を済ませて俺たちは病室へと向かう。

一つの病室の前にたどり着いたのでノックをした。


「はい、どうぞ」

「失礼します」


返事が返ってきたので病室の中に入ると、ベッドに座りながら手に本を持っている女性がこちらを見ていた。

ショートカットの黒髪で可愛い顔立ちをしている、この女性が俺たちのもう一人の幼馴染である天ヶ崎真由だ。


「あ、慧君」

「よ、遊びに来たぞ」

「うん、ありがとう。それと千鶴ちゃんも久しぶり」

「あぁ、最近忙しくて来れなくてすまなかったな」

「ううん、千鶴ちゃんは探索者だし仕方ないよ」

「それを言うと俺が暇人みたいじゃないか?」


最初に俺と目が合って笑顔を浮かべていた真由であるが、千鶴の方を向くと驚いたような顔を一瞬浮かべた。

しかし会えたことが嬉しいのか、直ぐにその後嬉しそうな顔をしながら話しかけていた。


しかし真由の口ぶりだとまるで俺が暇人であるかのように聞こえる。

これでも俺だってそこそこ忙しいんだぞ?ホントだぞ?


「え?でも慧君週に4回は来てくれてるし、あんまり忙しくないのかなって思ってた」

「うん、まぁ、千鶴に比べたらそんなに忙しくないよ」

「いや、週に4回も面会に来てたら十分に暇人だろう」

「ふふ、そうだよね?」


なんと俺は暇人だったらしい、そうだったのか...。


「それで千鶴ちゃん、今回はどんなダンジョンに潜ってたの?」

「あぁ、今回はな...」


そう言いながら千鶴が今回のダンジョンについて話し出した。

実は真由もダンジョンが好きでよく情報を追っている。


病室に入ってきたときも本を手に持っていたが、その本もダンジョンに関する本だ。

今は入院しているから探索者になれないけど、退院したら探索者になりたいと前に語っていた。

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