第8話 スキル獲得

今まで激しい頭痛に襲われ意識が遠のきそうになってたのが嘘のように痛さが無くなった。


「あれ?」

「慧?大丈夫か?」


ただそれでも強烈な痛さだったので少し意識がボーっとしながら、何か良い匂いの柔らかいものに包まれている感触を感じる。


《バイタルチェック・・・軽度の疲労を確認》

「ん?」


先程も頭痛に襲われながらであるが謎の声が聞こえてきたような気がしたが、今はハッキリと聞こえてくる。


「なんだこれ?」

「慧?もう大丈夫なのか?」

「うん?あぁ、もう大丈夫....!?」


そこで俺は自分がどんな状態になっているのかやっと分かった。

どうやら俺があまりの痛さに倒れそうになったところを千鶴が支えてくれたらしい。


つまり先程から感じているこの柔らかい感触は...。


「んっ、慧、あまり手を動かさないでくれ...」

「す、すまん!!」

「あっ、もう、動いて大丈夫なのか?」

「だだ、大丈夫だ、悪い」


どうやら俺の頭は千鶴の大きな山脈に支えられていたらしい。

それに頭痛を抑えるために頭に置いていた手も気が付かないうちに登山していたようだ。


今もその柔らかい感触が顔と手に残っている。

思わず視線がそちらに向きそうになるのをなんとか精神力でねじ伏せて向かないようにする。

しかし男の性は悲しいもので、どんなに視線を反らそうとしてもまるでブラックホールに吸い込まれるように視線が向いてしまう。


《鑑定・・・種族:人間

      個体名:杠葉千鶴

      戦闘能力:S

      思考能力:A

      スリーサイズ:93・62・81

      所持スキル・覇者》

「は?」


そんな努力をしていたら、突如として脳内にまた声が響いてきた。

なんだこれ?どういうことだ?ってかスリーサイズって...千鶴ってやっぱりデカかったんだな......じゃなくて!?


《おはようございます・マスター》

「マスター?」

「どうしたんだ慧?」


千鶴は今も心配そうな目を向けてくるんだがそれどころじゃない。

このよくわからない声が俺のことをマスターって呼んだか?


《肯定・支援型AI「learuler」と申します》


「レーラ?」

「慧、誰だ?その女の名前は...」

「あ、いや、違くて、なんか頭の中で声が...」


先程までは心配そうに見ていた千鶴の表情が一瞬で無になった。

怖すぎだろ、変わり過ぎてびっくりしたわ。


「声がする?スキル獲得のアナウンスか?」

「いや、なんか俺のことをマスターって呼んでるんだ、これが俺のスキルなのか?」


《回答・個体名:舞月慧がスキル「支援型AI「learuler」」を獲得》


なるほど、やはりこの声は俺のスキルらしい。


「千鶴、どうやら無事にスキルを獲得できたらしい」

「本当か!?」

「あぁ」


しかし初めて聞くスキルだな、支援型AIって何が出来るんだ?


《回答・マスターの探索・成長をサポートします》


「それで、どんなスキルだった?」

「なんか俺の探索とか成長をサポートしてくれるらしい」

「ふむ?具体的には何が出来るんだ?」

「確かに、何ができるんだろう?」


《回答・現在出来ることはダンジョンマップの作成・成長操作が可能です》


なるほど?分かりやすいのはダンジョンマップの作成だな。

これは聞いたことがある、ダンジョンを歩くだけで手に持ってる紙に自動で地図が書かれていくスキルだ。


広大なダンジョンを探索するのには嬉しいスキルだ。

ただもう一つのスキルはよくわからないな、成長操作ってなんだ?


「どうやらダンジョンマップの生成と成長操作?っていうのが出来るらしい」

「ほう、サポート系の複合スキルなのか、凄いな」

「多分ね、成長操作って何か分かるか?」

「いや、あいにく私も聞いたことがない」

「そっか、まあ使ってるうちに分かるか」


どうやら千鶴でも聞いたことがないスキルのようだ。

トップクランに在籍してる千鶴が知らないなら、ひとまず保留だな。


「それにしてもダンジョンマップ生成は良いスキルだな」

「やっぱりそう思う?」

「あぁ、私たちが組むチームでも必ず一人はついている。どうする?試してみるか?」

「うーん、試してみたいけど紙が無いんだよな~」


《ダンジョンマップアクセス開始・・・対象ダンジョンランクF・・・マップ取得を申請・・・成功・・・ダンジョンマップを表示します》


俺がどうしようか考えてた時にまたしても声が脳内に響いてきた。

なんかよくわからない申請とかを聞いていたら、突如視界に地図が現れた。


「うぉ!?」

「どうした!」

「いや、なんか視界に地図が出てきた...」

「地図だと?」


ミミズが這ったような線に青色のマークが二つ、赤色にマークや銀色のマークが点在している。

え、まさかこれダンジョンのマップか?え?ダンジョンマップ生成ってそういうこと!?


《ダンジョンマップは操作が可能です》


操作?どうやってやるんだろう、とりあえず手で動かせるのか試してみる。

俺が視界内にある地図を動かすように手を振るうと、それに応じて地図が動いた。


おぉ、なるほど、縮小とかできるのかな?

スマホだとピンチ操作すれば拡大縮小できるけど、どうだろうか?


俺が地図をピンチインしてみると見事に縮小した。


「おぉ!」

「慧?なにやってるんだ?」

「千鶴、なんか俺の視界にダンジョンの地図っぽいものが表示されてるんだよ」

「なに?」


縮小した地図を見ていると、青色のマークが中心にある事に気が付いた。

つまりこれが俺と千鶴ってことか?ならこの赤色がゴブリンかな?


「なぁ、この地図がちゃんと機能してるか確認したいから少し探索していいか?」

「私には何が見えてるか分からないが、良いぞ」


とりあえず近くに赤色のマークがあるのでそっちへ歩いて行ってみるか。

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