第9話 スキルの力

マップに映っている赤点に向かって歩き始めたのだが、隣にいる千鶴がこちらをチラチラと見てくる。


「どうした?」

「あぁ、その、視界に映ってるマップはどのような感じなんだ?」


そう言えばダンジョンマップが映ってることは千鶴に伝えたけど、どんな感じで見えてるかは伝えてなかった気がする。


「そうだなぁ、まず俺たちがマップの中心に青点で表示されてるんだ、それでマップの至る所に赤点や銀点が存在してる」

「ふむ、青点は私たちの動きに合わせて動いているのか?」

「そうだね、青点と赤点が動いてるから、多分赤点がモンスターなんじゃないかなって思ってる」

「なるほど...」


実際に今もマップに映っている赤点はちょろちょろと動いている。

仮にこれがモンスターだとすると、結構少ないなって印象があった。

まぁまだ第一階層だしこんなもんなのかな?


それからしばらく歩いていると、赤点の近くまでたどり着いた。

この赤点がモンスターであるならば、もうすぐゴブリンが見えてくるはずだ。


「お?」

「ゴブリンだな...」


そしてマップに映っている赤点の場所にゴブリンの姿が見えた。

やっぱりモンスターだったか、凄いなこのマップ。


「慧、これはとんでもないことだぞ」

「ん?」

「本来であればモンスターを探してこの広大なダンジョンを歩き回らなければいけない、それが慧のマップにしたがって歩くだけでこうも簡単に見つかるとは.....本当に凄いことだぞ」

「確かにそう考えるとヤバいな」


千鶴が少し興奮した様子でマップについて話始めた。

確かに千鶴の言う事はもっともだし、俺もなんかこのスキルのヤバさを実感してきた。


そんなことを考えながらゴブリンを眺めていると、また俺の脳内でスキルが話し出した。


《鑑定・・・種族:妖精

      個体名:ゴブリン

      戦闘能力:F

      思考能力:F

      所持スキル:なし

      ドロップアイテム:魔石(極小)、ゴブリンの棍棒》


どうやらゴブリンを眺めていたことで鑑定が発動したようだ。

俺のスキルで出来ることはダンジョンマップと成長操作と言ってたけど、これはデフォルトの能力なのかな?


それにゴブリンって種族が妖精なんだ......なんか前にチラッと記事で見たことはあるけど、どうしても妖精って聞くと小さい女の子の姿を想像してしまう。


「千鶴、ゴブリンって妖精族らしいぞ」

「ん?なにいってるんだ?」

「あぁ、俺のスキルがなんかゴブリンの事を鑑定したらしくて、そう出てきたんだ」

「なに?他には何が分かるんだ?」

「後は戦闘能力とか思考能力、ドロップアイテムが出てきたな」

「ちなみにゴブリンのドロップアイテムは?」

「魔石(極小)とゴブリンの棍棒だって」

「ふむ、合っているな....」


どうやら千鶴はこの鑑定の能力にも興味があるらしい。

他にも鑑定できる人はいるはずだが違うのだろうか?


「千鶴のクランに鑑定出来る人っていないの?」

「いや、居るんだが.....戦闘能力が低いのでダンジョン探索にはついてこれないんだ」

「あ~、なるほど」


確かにスキルが鑑定のみの場合は、戦闘においてあまり恩恵を得られないだろう。

そう考えると、俺のスキルも補助系だし一人で探索するのは厳しいか?


まぁ、スキルが手に入ってダンジョンに潜れるようになったことはめっちゃ嬉しいので何か手を考えよう。


一番定番なのはパーティーを組むことだよな~、その辺も千鶴と相談するか。


と、ここまで考えていたところでゴブリンもこちらに気が付いたらしい。


「ギャ!?」

「ん?」


ゴブリンがこちらにふり返り驚いたようなリアクションをしている。

…..なんかモンスターって意外と感情豊かだな。


ちょっとの間ゴブリンと見つめ合ってると、なんかゴブリンの体に赤いマークが表示された。


「なんだこれ?」

「また何か起きたのか慧?」

「あぁ、なんかゴブリンの体に赤いマークが現れたんだ、千鶴には見えるか?」

「赤いマーク?いや、私には見えないな」


つまりあのゴブリンが特殊なのではなく、これは俺にしか見えてないのか。

そうするとまたスキルの効果なのかな?


《回答・ゴブリンの弱点を可視化》


へ~、弱点とかあるのか....え?凄くね?

弱点っていうくらいだから多分あそこを攻撃した方が大ダメージが入るんだろう。

とりあえずあの赤いマークを攻撃してみるか。


赤いマークはゴブリンの右胸に表示されている。

大きいとも小さいとも言えない範囲だが、まぁさっき戦った感じゴブリンはスピードが遅いので当てるのは容易だろう。


俺は小太刀を抜いて隠鎖を開放する。

少し距離があるから直接刃で斬りつけるより隠鎖で攻撃した方が早そうだ。


「今回は隠鎖を使うのか?」

「うん、ちょっと試したいことがあってね」

「なるほど」


そこまで準備したところでゴブリンがこちらへ駆け出してきた。

やっぱりトテトテ走ってきている、これがゴブリンの基準スピードなのだろうか?


まぁ今はそれよりも弱点を検証する方が優先なので遠慮なく攻撃させてもらう。


遠心力を付けるように鎖を振り回しながら狙いを付けて赤いマークへ隠鎖を向かわせる。


「よっと!」

「ゴビャッ!」


俺の隠鎖はゴブリンに表示されている赤いマークへ吸い込まれるように直撃し、ゴブリンが爆散した。


「は!?」

「なに!?」


ちょっと待て、うん、弱点とは聞いてたけどさ、これはヤバすぎないか?

マジで文字通り爆散したんだけど、え、怖すぎだろ...。


「おい慧、なにしたんだ?」

「いや、なんか赤いマークが弱点らしいから攻撃してみたらこんなことになった」

「あり得ないだろう」

「俺もそう思う」


《提案・・・成長因子を獲得・どのように割り振りますか?》


おっと、衝撃的なゴブリン爆散事件について驚いてたらまた俺のスキルが分からないことを言い出したぞ?

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