第3話:対話

 翌日、念のため病院で精密検査を受けることにした。

 昨夜のことが気になったのがきっかけだったが、手術以来、どうにも頭や身体が重い気がしたためだった。


 一週間後、結果を知らされたが、特に頭も身体も異常はなく、一時的なストレス性の急性疲労と軽い不眠症だと診断された。


 気休め程度に処方されたビタミン剤と睡眠導入剤のせいもあり、身体は軽くなったが、一日中ずっと眠かった。寝て起きて食べて、また眠る生活を繰り返していた。


 大事な授業の時以外は家でダラダラすることも多いせいか、締まりのない生活に拍車をかけているみたいだった。


 数週間経っても、相変わらず夢うつつのような状態が続いていた。そんな折、またあの声が聞こえてきた。


『……こえ、ますか?』

「……」

『……聞こえて、ますか?』

「……う、うん」


 驚きのせいで、声が上ずっているのが自分でもわかる。

『良かったです。……はじめまして。私は、シオンと申します。あなたの名前は?』

「あ、ええと……ユウです。は、はじめまして」


 何が起きているのかなんとなく頭で理解していても、感覚が追いつかず、動揺のあまりうまく会話できないでいた。

 僕が彼女を理解できていないと思ったのか、彼女は色々と説明してくれた。


『私は、「コア」にメインコンピュータがあります。ですが、あなたの脳に接続されているため、あなたの脳内ネットワークとも繋がっています。故に、あなたと一体化しています』

「う、うん、理解してる。……あ、そうすると、も、もしかして僕の考えも読めるの!?」

『いいえ。言語化または映像化された内容については処理できますが、それ以前の感覚や感性の抽象概念については理解しかねます』

「ふぅ……」

『ですが、それらを獲得するために私は作られましたので、理解するよう努めます』

「い、いいよ、別にそんなことしなくて」


 そんなやり取りをしていると、突然、彼女は反応しなくなっていた。

 時計に目をやると、時間は夜の一時を回ったところだった。

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