── Septième jour ──
今日は購入したホームシアターの動作確認も兼ねて、私が寝ている間に過ぎ去った歴史を、主に映像資料を用いる形で教わっていた。
『人の血が鉄の味であるように、我々の体もまた鉄である。共に同じ鉄を有していると言うのに、貴方達の赤い血と我々の蒼い血に、一体何の違いがあるというのか?』
「はあ。これが、かの『
その中で一際私の目を惹いたのが、法服を着た金髪の青年──彼もまた
表情は乏しく人形のように見えるが、言葉に力強さがある。
聞けば、彼は世界で初めてシンギュラリティに到達した
彼は人間と同じ姿でありながら人間と同等の権利を得られず、使い捨てられるだけの存在である
なるほど。法を司る裁判官としての立場が、彼をその情熱へ駆り立てたのだろう。理解はできる。
現に、このスピーチが世界を変える一手となったのだから、そこに意味はあったに違いない。
ただ、一つだけ不満点を挙げるとするならば。
人権が与えられるのはシンギュラリティに到達している機械人類のみという点だ。
かつて、『全ての人間は生まれながらにして自由であり、権利と平等を有する』と謳っていたのは何だったのか。
人々の意識が歴史の中で変わってしまったのか? ……否。
これは人間が元から……いや、私も含め、感情に囚われし命が縛られる業だ。
他人より優れた自分でありたい。そのためならば、相手を利用しても構わない。
自分より優れた他人が許せない。そのためならば、相手を蹴落としても構わない。
──そして自分の持っている物が、他人に無条件で与えられる事に耐えられない。
当時の人間が
醜い。見るに堪えん。だが、理解はできてしまう。
私とて人間と同一視されるのは御免被る。故に、寛容の裏に隠されているであろう意図を読み取れてしまう。
……きっと、彼女には理解できないのだろう。それが良い。
こんなもの、分からない方が良いに決まっている。
「……ああ、少し寝過ぎたな。まさか、ここまで世界が変容してしまうとはね……」
──悪性は、殆ど変容していないくせに。
いや、これこそ私が言えた義理ではない。
なので、この言葉だけは特選牛乳と共に飲み干す事にした。
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