第3話

 それから一カ月後。

 ワイドショーでは連日、高尾山変死体事件の続報で賑わっていた。


「先月、八王子市内の駐車場で亡くなっていた三人の男性はいまだに身元が分かっていなかったのですが、昨日、警察は被害者と見られる男性たちのモンタージュ写真を公開しました。年齢はいずれも二十から三十歳くらいの若い男性とのことです。一番右側の男性は身長170センチくらいで、太目。A型。真ん中の男性は身長165センチ、やせ型。血液型はO型だそうです。左の方は…」

「車から持ち主がわからないんでしょうか」

 六十五歳くらいのスーツの男性が話に割り込んで来た。

「車のナンバープレートは偽造だったそうです。車本体の車台番号も削り取られていて判明していないもよう。ただ、年式がかなり古い車のようですね。製造から二十年くらい経っていて…車の写真も公開されています」

「昔、これと同じ車乗ってましたよ。懐かしいなぁ…」

 先ほどのスーツの男性が嬉しそうに言う。

「でも、今乗ってたらちょっとダサいですよね。こんな車に何で二十歳ぐらいの人が乗ってたのか謎ですね」

 隣にいた二十代と思しき男性が感想を述べる。

「今、ちょっと昔の車が流行ってるんですよ」

「いやぁ…スポーツカーとかならわかるんですけど…なんでも上がってる訳じゃいですよ」

 

 アナウンサーが呆れたような顔をして話に割り込んだ。


「福生市の路上で拉致されたまま行方不明になっていた女性の行方が心配されていましたが、後日女性が名乗り出て無事が確認されたため、この事件は三人の男性がなぜ亡くなったのか原因を調べています。薬物の使用形跡などはないそうです」

「車にもう一人別の人物が乗ってたんじゃありませんか?」

「そうですね。情報が公開されていませんが…」

「女性が、性暴力の被害にあったとか…そういうのはないんですか?」

「そのことについては公表されていませんので…今回は加害者が亡くなっていることもありますので…」

「もしかして、外国人だったってことはありませんか?」

 先ほどの若者が口をはさんだ。

「可能性は否定できませんが、今のところはそのような情報はありません」


 ***


 警察署。刑事AとBの会話。Aは五十歳くらいで、Bは三十代半ばかと思わる。


「電話が鳴りやみませんね」

「ほんと、公開してよかったのかわかんないね。来る情報、来る情報、みんな二十年くらい前に亡くなった不良グループのメンバーそっくりだっていうのばっかりで…」

「その子どもとかじゃないの?」

「全員子どもも男兄弟もいないそうです。でも、確かに似てるんですよね…三人揃ってですからね。ただの偶然とは思えないくらいで…」

「そんなこと、世間に言えるわけないだろ!!!」

「はい…。でも、被害者によると一人、中学生くらいの男子がいたそうですからね…ちょっとマスコミに公開できませんけどね。被害者の女性の証言で似顔絵を作成したんですけど…それができまして…」

「おお。けっこうイケメンだな。ヤンキーはたまにイケメンがいるからな」

 目が二重で鼻筋も通っていて、さわやかな顔立ちをしていた。まるで某事務所のタレントのようだった。

「こういう子がいたら目立つかもしれませんけど…今のところ見つかっていなくて…」

「かわいい顔して、大人三人殺して逃げてるんだから…末恐ろしいよ。まったく…。聞いたことない事件だね」

「はい」

「そう言えば、この事件の通報した〇村ってやつ。あの人もイケメンだったね。少年院入ってなかったらよかったのになあ。十代の頃事件起こしてなかったら…って思うとさ、気の毒な気はするよね。母親が病気で、ずっと面倒見ててさ…何のために生きてたかわかんないよね」

「まあ…そうですね。親ガチャってやつですかね…この子も見つかったら死刑にはならないけど、一生精神病院ですかね」


 この子が捕まらないで欲しい。心のどこかでBは思っていた。 

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