第5話
女子高生は一瞬とうやを見たが、そのまま静かに床に倒れた。
そして動かない。
その時。
「みんな建物の端に並ぶんだ」
声がした。
低いが力強く、よく通る声だった。
とうやはそのとおりにした。
他の人も同じようにした。
建物の端にみんなが並んだ時、ゾンビとの距離はいくらかあった。
しかしゆっくりだがむこうは確実に近づいてくる。
こちらはもう逃げ道はない。
そんな中、銃声が響く。
何発も響いた。
全員ではないが、何人かがゾンビを撃っているのだ。
とうやも何発か撃った。
見ればゾンビが一体一体倒れていく。
倒れたゾンビは頭を打たれたようだ。
しかし腹を撃たれたゾンビは一瞬動きが止まるものの、何事もなかったかのように、そのまま両手を突き出して迫って来る。
「頭を狙え。当てる自信がないなら、無駄玉を使うな」
再び力強い声。
その声で、銃声は一つとなった。
男が撃った弾は、正確にゾンビの頭を射抜いていた。
「弾がなくなった。だれか拳銃をよこせ」
男の元に数人が集まり、男に拳銃を渡した。
しかしどれも弾があまり残っていなかった。
一発か二発で玉切れとなる。
「もっとよこしてくれ」
ほぼ全員が男に銃を渡した。
男の足元に何十と言う拳銃が集まった。
男はそれらを素早く持ち替えながら、ゾンビを撃った。
弾は全てゾンビの頭を打ちぬいた。
残り四体。
しかしゾンビはすぐそこまで来ていた。
「うわっ」
一人の中年男がゾンビに捕まった。
そして首をかまれた。
「くそっ」
男はそのゾンビを撃った。
残り三体を撃とうとしたが、弾がなかった。
素早く足元の拳銃を二丁拾い上げ、三体のゾンビを撃とうとしたが、三体はその前に目の前にいる人間にかみついた。
若い女性、若い男性、中年の男性がゾンビにかまれた。
三人とも抵抗はしているが、ゾンビの力が強いようで、なすすべがなかった。
「くそっ」
男は続けざまに三体のゾンビを撃った。
ゾンビは全て、地に伏した。
あとは後ろから撃たれた女子高生と、ゾンビにかまれた四人が倒れていた。
「みんな、その倒れた人から離れて」
みなそれに従った。
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