第3話
どこかの国。
とんでもないお金持ち。
とうやの知らない特殊な集団。
いや今のこの状況、仮に権力やお金や特殊なスキルがあったとしても、とても人間がやったとは思えない。
では人間ではないのなら、いったいどんな存在がこんなことをしたのか。
考えた。
しかしなに一つわからない。
いくら考えてもわからないことだらけだ。
とうやはとりあえず、この建物から出る方法を考えることにした。
考えていると、気づけば数人の人間が立ち上がり、唯一の扉に向かって歩き出した。
とうやは数えた。
その数は五人だった。
三十代に見える男性、四十代に見える女性、二十代に見える男性二人、そしてとうやくらいの年齢に見える男子の五人だ。
一番年上に見える女性はともかく、四人の男性は平均よりも体格がよかった。
もしかしてととうやが見ていると、果たして五人は扉の右側の前に全員が立った。
三十代に見える男がみんなを指揮しているようだ。
残りの四人に短く指示を出しているように見えた。
そして五人は扉の片側についた。
「せーの」
男が号令を出し、全員で扉を開けようとした。
しかし扉はびくともしなかった。
「もう一度、せーの」
再び号令。
そして全員で扉を引く。
それぞれが必死の顔をしている。
唸り声のようなものも聞こえてきた。
扉を引く手が震えている者も。
しかし扉は微動だにしない。
誰に言われることもなく、一人づつ扉から手を離した。
みなあえいでいた。
それを見つめる残りの人々。
しかしとうやを含めて、五人に協力しようというものは、誰一人現れない。
息が少し整いかけたところで、男が再び言った。
「せーの」
もう一度引いてみる。
五人で。
先ほどよりは長い時間引いていたように思うが、やはり扉はびくともしなかった。
しばらくその場で息を上げていたが、そのうちに一人づつ集団の中に戻ってきた。
すすんで扉を開けようとした五人に、なんだかのねぎらいの言葉をかけるものはいなかった。
――やはりあそこは開かないんだ。
とうやもただそう思っただけだ。
そして無言。
一人小さく何かをつぶやいている女がいたが、何を言っているのかはとうやにはわからなかったし、誰もそれに反応はしていない。
その時、隣の女子高生が話しかけてきた。
「あそこ、開かないのね」
「そうだな」
それで終わり。
それ以上話すことなど何もないのだ。
そのまま時が無駄に流れた。
その時、声がした。
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