第18話 Xデー

          ※

(董卓)

献帝が暫く病気のため、公務に就く事が出来なかったが、快気祝いのために董卓が未央宮に呼び出された。

王允は、黄琬に李儒と共に宦官側を押さえるように指示し、全ての段取りを済ませ自宅で成功の報告を待っていた。

呂布は詔を懐に忍ばせて、同郷の騎都尉である李粛と共に、自らの手兵に衛士の格好をさせて董卓が来るのを待ち受っていた。

馬車が、未央宮の前で停まった。中から董卓が降りて来た。ブヨブヨと揺れる牛脂肪の塊が歩いているかのようだった。ペタペタと、靴の底を鳴らしながら歩いていた。

董卓は、入門しようとしたら、突然李粛らが阻止した。

「この中には入れませぬ」

門番たちが槍クロスさせ中に入らせないようにする。

「何故?何故、通させぬ?ワシを誰だと思っているんだ?太師だぞ。献帝を指導する立場の人間なのだ!どけ!」

後から赤兎馬に乗った呂布が追いかけて来た。赤兎馬を馬車の後ろに停め、呂布が馬から降りて来た。

「奉先(呂布の字)、今おまえに連絡をしようと思っていたところだ。コイツら門番がワシを中に入れさせようとしない」

呂布は黙って近付くと、懐の中から「詔」と書かれた紙を取り出し広げ読み上げた。

「余、献帝は、董卓を太師と称して王室に蔓延る奸賊を直ちに成敗せよとの詔を発する。董卓を討つ者、皆忠義者である。初平3年(192年)4月X日劉協」

突如に董卓の顔色が変わった。衛士が、呂布の方天画戟を持ってやってくると、詔が書かれた書状と交換した。

「よ、よ、よせ、奉先。ワ、ワ、ワシはお、お、おまえのち、ち、父だぞ!」

呂布は、無言で方天画戟を構える。

「父上、往生際が悪過ぎます」

「そ、そ、そんな事を言うのか?な?な!ちょ、ちょ、貂蝉を、や、や、やっぱりおまえにやろう。あんな女、ワ、ワ、ワシの好みではないからな

「あんな女ですと?」

そう言った瞬間、方天画戟を一振りし、董卓の腹を裂いた。腹の中から血まみれの内臓が地面に落ちると、目を見開き絶命し前のめりに崩れ落ちた。

「奸賊董卓を倒したぞ!」

呂布が、方天画戟を吐き上げそう叫んだ。そして衛士の1人を王允の元に派遣し、董卓の処刑を実行した事を報告した。


暫くして、馬車に王允と王蓋、貂蝉の3人がやって来た。王允は、白目を天に向け醜く地面に横たわる董卓の死体を確認した。貂蝉が、見たく無いとでも言いたげに顔を背けた。呂布に言った。

「よくやった。我が息子(義理)よ。これで貂蝉は、おまえの物だ」

そう言って、まるで大根でも渡すように貂蝉を呂布の方に突き飛ばした。

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