第15話 太師(たいし)
「わかった。魏攸よ、今は閣議よりおまえの身体の方が大切だ。もうここの事はいいから、早く帰って休みなさい。医者の手配をしてやろう」
そう優しい眼差しで、劉虞が語りかけた。
「だ、大丈夫です。ゴホッ、ゴホッ」
また咳が激しくなって来た。側にいた程緒が、背中をさすってやる。さすがに会議中に迷惑になると思ったのか、「す、す、少し部屋で休みます」と告げ、会議を退席した。公孫紀が、部屋の外まで魏攸に付き添うと兵士を呼び、「家まで送り届けるように」と伝えた。
程緒が訝しがりながら、劉虞に言った。
「それよりも袁術です。何故、劉和様を解放しないのですか?何かがおかしい」
「袁紹と度々争っている公孫瓚が、袁術には野心が見える。私たちは、袁術側にはいるけども、彼は二心を持っているに違いないと言っていました。決して信用してはならぬと」
そう公孫紀は、眉を顰めながら言った。
「しかし、息子からの応援要請ではなく袁術が書かせた書簡とはいえ、それを無視出来るか?」
「た、確かにそうではありますが‥‥」
程緒が、返事に苦慮していた。
「兎に角、劉和の元へ一先ず2000の兵を送る事としよう」
※
(董卓)
董卓は、董一族を皆朝廷の高官に就け、外出するときは天子と同様の青い蓋のついた車を乗り回すようになっていた。銅貨の五銖銭を改鋳したために、貨幣価値が乱れた。董卓の暴虐ぶりはあいかわらずで、逆らった捕虜は舌を抜かれ、目をえぐられ、熱湯の煮えた大鍋で苦しみながら殺された。捕虜の泣き叫ぶ声は天にこだましたが、董卓はそれを見てまるでエンターテイメントを楽しむかのように笑い、なお平然と酒を飲んでいた。鬼畜だ。人間の皮を被った畜生だ。そして久しぶりに、閣議を開き万楽宮に百官を集めた。董卓が太師に就任する儀式が行われた。ついに董卓は、太傅を超えいきなり太師になったのだ。太師は、太傅、太保が三公と呼ばれ、天子を助け導き国政に参与する職であったうちの最高位に就いたのだった。
董卓は、長安近くの郿に長安城と同じ高さの城壁をもった城塞を築いていた。そしてその中には、5万の兵士を30年分の養えるだけの食糧を蓄えていた。民は旱魃で食うにも困っているというのに、宦官の中の
「太師のワシに、天子の師となったワシに誰が意見するのだ?貴様はいつから、そんなに偉くなったのだ?」
「そうではございませんが、長安に遷都し、民はそれについて来ました。その民が困っているのです」
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