第14話 劉和
内容は、『袁紹に担がれ、献帝に取って代わろうなどという妄想は持ち合わせていないので、どうぞ安心してください』というものだった。
「あのう、相国(董卓の字)は?」
「気にするな。劉虞からの信書だ。共に漢王室の血筋を引く者同士、しっかりと答えなければ失礼に当たる」
近くにいた世話をする者に、侍中として朝廷にいる「劉和(劉虞の子)を呼んで来い」と伝えた。
少し周りがぞよめいた。献帝は「よし、いいぞ」と独り言を言っていた。田疇と鮮于銀は、何を急に献帝は、ソワソワしておられるのかと思いながら見ていた。
劉和が、拱手をして献帝の前に進み出た。
「お呼びでしょうか?」
「おまえを、劉虞のもとに派遣し、信書を手渡し朕は洛陽に帰順するので迎えに来るように命ず」
献帝が「親書の用意ができ次第、劉和と共に帰順せよ」との事だった。
余りにも短い長安での滞在時間だった。田疇と
「どうされたのですか?」
袁術が柔和な表情で劉和に話しかける。そこで献帝が洛陽に帰りたがっている事、董卓に内緒で迎えの兵を寄越せと言っているのを知った。袁術は、孫策から献上された伝国璽を撫でながら暫し考えた。
「長安に献帝を迎えに行って、董卓が黙っている訳がない。董卓は、強敵だ。息子(義理)の呂布は不死身の身体を持つ。劉虞殿だけで、迎えに行くというのは無茶というもの。あなたの父上に、兵を派遣してくれれば、私も一緒に西へ(献帝を迎えに)向かいますと書簡を書いてもらえますか?」
そう言った。
※
(劉虞)
袁術側からの劉和の書いた書簡が、劉虞に届いた。
「献帝は、何を考えておられるのですか?」
程緒が、大きな声で言った。
「長安に献帝を迎えに行くというのは、間違いなく董卓と軍事衝突します」
公孫瓚とは同族の幹部の公孫紀がそう言った。魏攸が青ざめた顔で頷きながら、激しい咳をした。
「魏攸よ。大丈夫か?無理をするでない」
劉虞が、心配そうな顔で見た。
「だ、だ、大丈夫です。お、恐らく我が君は、漢王室の血筋を引くお方。その事も踏まえた上での頼み事なのでしょう」
喘ぐように、そう魏攸が言った。
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