第13話 親書
「劉備殿が、離れたか。まだ行き先は決まってないのか?」
「そのようです」
「劉備殿にとっても、我々にとっても迷惑な話だ。いずれ討伐のため兵を上げなくてはならん」
劉虞がそう呟いた。
「それはなりません。乱世には、謀臣と勇士は不可欠である。公孫瓚は文武共に優れていますから、小さな欠点には目をつぶってその才能を生かすべきでしょう。今は辛抱の時です」
魏攸が、そう言って激しく咳込んだ。
「大丈夫か?魏攸にそこまで言われたら、我慢しなければならないのかな?」
魏攸は咳に苦しみながら、その言葉に嬉しそうに微笑んだ。
「それに、袁紹と袁術の対立が益々激しくなっている。我が立場は、まだ中立といったところだが、いずれ2人の間で軍事衝突が起こる可能性が大だな」
「江東の孫策が、袁術に伝国璽を献上し、配下におかれたとの事です」
程緒が、そう答えた。
「後は、長安からの返事を待つしかありません」
程緒の言葉にみな一同に頷いた。
※
(献帝)
長安に来てから、董卓の傍若無人な振る舞いが酷くなって来た。董卓は、江東の孫堅が亡くなり、また反董卓連合軍は解体し反目し合い、その中心だった親戚同士の袁紹と袁術が今では対立を深めていると聞いて、当分自分を脅かす者はいないとわかるとすっかり油断していた。また独善的な横暴な振る舞いが増えて来た。我慢に我慢を重ね、董卓に対して腹に据えかねている所に、李儒と王允の計画がもたらされた。後は彼らからの上奏文が手元に届けば、クーデターが起こる手筈が出来ていた。
『何のために自分はいるのか。存在しているのか』
董卓は、この宮中を裸で歩き回り女官を犯し、中には井戸に身を投げて死んだ者もいた。自分の立場は、まるで籠の鳥で洛陽から長安に場所を移されただけだった。ただただ後漢からの都だった洛陽に帰りたいと考えていた。
身の回りの世話をする使用人がやって来た。
「劉虞から田疇と鮮于銀という使者がやって来ました」
「相国(董卓の字)は、今何をしている?」
献帝は、久々にワクワクしていた。当分は我が世の春とばかりに、安心して今も午睡を貪っていた。
「お気に入りの女官と湯浴みをした後、昼寝をされています」
「よし。通せ!」
田疇と鮮于銀の2人が、使用人に案内され献帝の元にやって来た。深々と献帝の前で頭を下げた。
「今日は劉虞から、信書を預かって来ました」
自ら取りに行こうかというぐらいの勢いで前のめりになった。使用人に指先で合図をし、親書を取りに行けと合図した。待ちきれずひったくるように受け取った。
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