第10話 郭嘉

          ※

(曹操)

曹操は、確実に兵士の数を増やしていた。またそれに伴い様々な人材が、曹操の名声を知り集まって来た。

荀彧が曹操の仮住いに呼び出された。

「お呼びでしょうか?」

拱手をして、頭を下げた。

「誰か目星人物はいないか?」

「軍を指揮する者でしょうか?」

曹操が首を左右に振った。

「文若(荀彧の字)、おまえと同等か、それ以上の能力がある軍師だ」

そう言うと、荀彧が苦笑いをした。曹操が、リーディングマインドで荀彧の心を読んだ。

『さすがは荀彧だ。私がリーディングマインドをしてくるのをわかっているので、清らかな心で居ようとしている。他の軍師の存在を訊ねても、平気でいられるようだ』

「私の出身地の者で郭嘉かくかという者がいます。ついこの間も、袁紹の元に軍師の仕官を致しましたが、袁紹の性格では大業を成さないと自ら辞退をしております」


「なるほど。軍師の職を得て金を貰えるからといって、仕える者にその者に仕える価値が無いとわかれば仕官職に就かずに辞めるのか」

荀彧が、眉間を曇らせた。

「袁紹の本質を見抜くとは、なかなかの人物に違いない。面白い。その郭嘉かくかに、一度ここに来て私の所に仕官する気はないか訊ねてみてくれないか?一度会って話なさないと何も始まらないにやりき

「かしこまりました」

早速荀彧は、郭嘉かくかの元に使者を送った。曹操は、出向いて来た郭嘉かくかを丁重に扱った。

曹操が待つ部屋に通される。虎の河の敷物が床に広がっていた。驚いて足を下さず脇を通った。

曹操は、野心に満ちた目を郭嘉かくかに向けた。「ゾッ」とした。

「その虎の毛皮は、この者が捕らえた物だ」

そう指差し言った。身の丈が大きな男が、曹操の横に立っていた。郭嘉かくかは、思わず見上げた。

「この者は、許緒という頼りになる護衛だ」

「さすが、曹操様。並々ならんいい人材を得ておられる」


「許緒ほどの武将はそうおらんぞ。呂布か、劉備の所にいる義兄弟たち、関羽、張飛、趙雲か。ああっ、私の所にはもう1人いる。典韋だ」

「軍師には、非常に優秀な荀彧もいます。また曹操様も荀彧から聞いた所によりますと、荀彧と対等か、それ以上の論客だとお聞きしました」

「ははは。荀彧がそうように言ったのか?私はからかわれたのだろう。我が軍師に、私が勝てるとは思っていない」

曹操は、袁紹、袁術について訊ねた。そして天下のことを議論した。物の10分で、郭嘉かくかの優秀さがわかった。

「私の大業を成就させるのは、必ずやこの者だ」と曹操は満面の笑みで言った。また郭嘉かくかも退出するなり「真に我が主君だ」と言って、空に向かって叫び喜んだ。


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