第66話 ダンジョン探索 二回目

「それでは、皆さん。ダンジョンには自由に組んで頂いた最大十五人で入って頂きます。前回も説明しましたが、冒険者が行くような本当のダンジョンではありませんが、もちろん、ダンジョンなので罠や魔物がいるので気を付けて下さい。ダンジョンに入る前に、このブレスレットを皆さん着けて下さいね。魔物の攻撃がある程度、当たったらダンジョンの出入り口に強制送還されるように魔法付与されたものです。あとはダンジョンの地図と自分の位置が表示出来るようになってます」


 前回と同じく、クレーブス先生の説明を聞き、配られたブレスレットを皆それぞれ着ける。

 今回も俺は着ける前に念の為、魔力感知で確認する。

 鑑定とまではいかないが、魔力感知である程度付与されたものが分かる。

 ブレスレットには指定場所への強制送還と、ダメージ蓄積を確認する魔法、それと地図の表示と自分の位置確認の魔法が付与されている。

 特に前回と変わったところはなかった。

 ウィステリアやディジェム達のブレスレットも念の為、確認したが同じものが付与されていた。変なものは付与されていないようだ。

 安心した俺もブレスレットを着け、クレーブス先生の話の続きを聞く。


「自由に組んで、最大十五人で入って頂くのですが、陣形はもちろん、セーフルームでの休憩、セーフルーム以外での休憩、体力や魔力の温存もしっかり考えて、探索して下さい。召喚獣も喚んで構いません。それと、ダンジョンには宝箱があります。その中の物はもちろん、持って帰って、使って頂いて問題ありません。ですが、何を手に入れたかは、私かタンジェリン学園長に必ず申告して下さい。そうでない場合はダンジョンに自動で返還されますので、気を付けて下さい。今回はタンジェリン学園長と一緒に、ダンジョンでの行動内容を見て、次回の試験内容を考慮していきますし、成績にも関係していきますので、頑張って下さいね」


 そう言って、クレーブス先生が告げると、一部の生徒が不満の声を漏らした。見ると、試験で下位の者達だ。

 その様子を見て、息を吐いていると、タンジェリン学園長がこちらを見て小さく笑っている。

 あの目は、一部の生徒はもちろん、俺達も見ておくよといった感じだ。


「ヴァル様、楽しみですね」


「そうだね。ダンジョンは何処まで行っていいんだろう?」


 疑問に思っていると、クレーブス先生がこちらを見て微笑んだ。


「今回のダンジョンは六時間以内に、行けるところまでです。六時間経つと、ブレスレットが出入り口に強制送還されます。その時点で、何処まで行けたかが成績に反映されます。だからといって、無理は禁物ですよ。地下四階からはフロアボスが配置されています」


 前回、何故、地下三階までだったのか納得した。

 成程、フロアボスがいるのか。慣れてない、初めてのダンジョン探索でフロアボスに出くわすと、命取りになる。ブレスレットで強制送還されるにしても、リスクが大きい。

 クレーブス先生の話を聞きながら、この十一人で何処まで行けるか考える。

 ……結構行けるんじゃないだろうか。フロアボスがいるにしても。


『リオン一人だと、どのくらい行けるのだろうな』


 紅が念話で聞いてくる。


『うーん、どのくらいだろう? そもそも、ここのダンジョンの最下層って、何階?』


『学園長に聞けば教えてくれるのではないか?』


『聞けたら、後で聞いてみるよ』


「ヴァル、気になったんだけどさ、一人で行けるんだったら、どのくらい行ける?」


 小声でディジェムも同じことを聞いてきた。


「紅も聞いてきたけど、俺も分からない。ディルは?」


「俺も分からないな。ちなみに、魔力を覚醒した時は何処で暴走させたんだ?」


「事前にタンジェリン学園長にお願いしてて、ダンジョンで暴走させたよ。その時は溢れる魔力に耐えられなくて限界だったから、地下七階で暴走させたね」


 苦笑しながら伝えると、ディジェムが眉を寄せる。思ったより深くなかったからだろうか。


「その間の魔物は? フロアボスは?」


「それが俺の魔力がだだ漏れと紅や聖の精霊王、光の精霊王、光の剣クラウ・ソラスの魔力に怯えて、出て来なかったんだよね。フロアボスもいなくて、今、いるって聞いて、不思議だったんだよね」


「……まぁ、魔物も死にたくはないよな」


「クラウ・ソラスとフラガラッハもあるし、そこらの魔物なら一撃で仕留められると思うよ」


 苦笑いをするディジェムにぼそりと呟くと、彼がギョッとした顔をした。


「ああ、そうだろうよ。俺もそう思ってたし。俺も専用武器、欲しいなぁー。何だかんだで、俺の本気や魔力に武器が耐えられなくて、よく折れるんだよな、最近」


「覚醒したからそうなんだろうね。神だけが持つ属性も持ってる訳だし。意外と、このダンジョンで手に入るかもね。クラウ・ソラスもここにあったし」


 クラウ・ソラスもここにあったので、タンジェリン学園長には以前、一応、申告しておいた。

 既に使い手になったのだし、ダンジョンに自動で返還されることはないが、一応伝えた方が問題にならないだろうと思ったからだが、伝えて正解だった。社交界デビューパーティーでタンジェリン学園長に驚かれずに済んだ。


「それなら有り難いんだけどなぁ……」


 ダンジョンに行く準備をしながら、ディジェムが期待に満ちた声音で呟く。


「ヴァーミリオン王子、少し宜しいですか?」


 名前を呼ばれて振り返ると、クレーブス先生がやって来た。


「はい、どうしました? クレーブス先生」


「あの、ダンジョン探索の際に、ヴァーミリオン王子に一つ、お願いがあるのですが……」


「何でしょうか?」


「何処かのフロアボスと戦う時に、フェニックスを召喚して、戦って頂けますか?!」


「……はい?」


 目をきらきらと輝かせて、クレーブス先生が俺を見つめる。


「公私混同なのは分かってます。ですが、魔法と召喚獣を専攻する者として、憧れの、伝説の最強の召喚獣を見たいと思ってしまうんです。本当は間近で見たいのですが、流石に持ち場を離れる訳にはいきません。映像越しでもいいので、是非とも、この目で拝見致したく……!」


『だそうだけど、紅、どうする?』


『ふむ。瞬殺で良ければやるが、リア達の経験にはならないから、残り時間が僅かな時に我が締めて良ければやろう』


『分かった。皆に相談してみるよ』


 念話で確認して、俺はクレーブス先生を見る。


「一緒に行く皆にも、フェニックスにも確認して、承諾してくれたら戦ってもらいます。駄目だったらすみません」


「いえ、こちらこそ、無理なお願いをしてしまい、申し訳ありません。まさか、私の人生で伝説の召喚獣を見ることが出来る機会があるとは思わなったので、興奮してしまって……」


「興奮しますよね……。その気持ち、分かります」


 俺の場合は、前世で姉と妹がプレイするロールプレイングゲームで見た時からのフェニックス好きなので、まさか今世で俺の相棒になるとは思わなかったから、興奮するのはとてもよく分かる。

 ふわふわな羽根、良いよね。


「ヴァーミリオン王子も分かって下さいますか?! もしや、召喚獣がお好きですか?」


「興味がありますし、好きですよ。召喚獣は魔力の色も、目とかも綺麗ですし」


 魔力感知で見ても、人間より召喚獣の方が綺麗な魔力の色をしている。

 だから、それを穢そうとする者達を許せないと思ってしまう。

 三年前のフォッグ元伯爵夫人に対しても許せなかった。あの時は、シスルや青藍のこともあり、余計に許せなかったので怒ろうとしたら、シュヴァインフルト伯爵とヴァイナスが先に話を進めて牢獄行きを決めてしまって、未遂に終わったけど。

 それがなかったら、本気で怒った回数が六回になるところだった。


「魔力の色……成程。ヴァーミリオン王子は色で判別なさっているのですね。私は魔力の密度で判別しています。もし宜しければ、今度、魔力の色についてお聞きしても宜しいでしょうか?」


「是非。そういった話は好きなので、お聞きしたいですね」


 笑顔で頷くと、クレーブス先生の目が輝いた。完全に研究者の目だ。


「宜しくお願い致します」


 笑顔で頷き、クレーブス先生が少し俺から離れて、息を大きく吸った。


「皆さん、準備はいいですか? そろそろダンジョン探索に向かいます。ダンジョンの最下層は地下三十階です。三年生でも地下二十五階が限界でしたので、本当に無理は禁物ですよ」


 クレーブス先生の言葉に、生徒達が返事をしたり、頷いたりしている。


「地下三十階か……」


「ヴァル様なら行けそうですね」


 ウィステリアが俺に近付いて、小さく囁いて微笑む。可愛い。


「召喚獣全員集合なら、確かに行けそうだよね。今日は流石にしないけど」


 小さく耳打ちすると、ウィステリアがくすりと笑って頷く。

 ソロプレイは慣れてからしたいし、ダンジョンはやっぱり、パーティーで探索が醍醐味だと思うし。

 前世はあまり友人がいなかった分、今世では楽しく友人達と探索してみたい。


「その時は私もご一緒させて下さいね?」


「もちろん。一緒に行こう」


 二人で囁き合ってると、離れたところでチェルシー・ダフニーが睨んでいる。

 ウィステリアの視界に入らないように少し移動して、彼女に準備は大丈夫なのかとか、体調は問題ないかとか何気ない会話をする。

 それを微笑ましくオフェリアとイェーナに見つめられ、ウィステリアが真っ赤になった。

 可愛いなぁ。


「それでは皆さん、ダンジョンの出入り口前の魔法陣の周りに集まって下さい」


 前回と同じく、ダンジョンには同時に入るらしい。入ると同時に魔法陣によって、それぞれ違うスタート地点に飛ばされ、行けるところまで進む。

 ガーネットクラスの生徒、前回から三人増えて、三十三人全員が収まるくらいの大きな魔法陣がダンジョンの出入り口前にある。

 全員周りに集まると、魔法陣が光り輝く。


「この魔法陣の上に、組んでもらったパーティーで立って下さい。立って、魔法陣が起動し、ダンジョン内部に移動したら、探索開始です。それでは一組目からこちらへ」


 一組目のパーティーの人数は七人で、彼等が魔法陣の上に立つと、光が更に強く輝いた。輝きが落ち着くと、一組目のパーティーが消えた。ダンジョン内部に移動したようだ。


「おぉー……」


 ディジェムが小さく感嘆の声を漏らす。

 初めてのダンジョンだから、嬉しそうだ。

 二組目のパーティーは六人、三組目は九人だった。その二組目にチェルシー・ダフニーがいて、全員、試験で下位だった者達だ。

 個人的に、一緒にパーティーを組んでくれる生徒がいることに驚きだ。友達いないと思ってたので。


「最後はヴァーミリオン王子のパーティーですね。先程のお願い、是非とも宜しくお願い致します」


「……駄目だったら、本当にすみません」


 押しが強いクレーブス先生に対して、念の為、保険を掛ける。


「楽しみに待ってます、ヴァーミリオン王子」


 圧のある笑顔でクレーブス先生は頷いた。

 押しが本当に強いな……。

 引き攣った笑顔を浮かべつつ、俺は魔法陣へ向かうとウィステリア達も続く。

 魔法陣の上に立つと、光が更に強く輝いた。







 光が収まると、ダンジョンの内部、地下一階に立っていた。

 ブレスレットの地図を表示させ、現在地を確認する。

 俺達がいる場所は、ダンジョンの地下一階のちょうど左端だった。地下二階に行く魔法陣がある場所から一番遠い。

 前回のウィステリアと二人一組の時に転移した場所と同じだ。

 遠いということは魔物や罠に遭遇する確率は高い。


「ここがダンジョン……。凄くわくわくするんだけど」


 きょろきょろと辺りを見回し、初めてのダンジョンに目を輝かせてディジェムが呟く。


「そうね。凄く楽しみだわ」


 オフェリアも初めてのダンジョンのようで、ディジェムと同じように周囲を見渡している。

 グレイも初めてのダンジョンなので、同じようにきょろきょろと見ている。


「気持ちは分かるけど、そろそろ行こう。この位置、地下二階に行く魔法陣がある場所から一番遠いから。魔物も出るし、油断大敵だよ?」


「何で知ってるんだ?」


「今回と同じ場所に前回の時にウィスティと転移したからだよ。ブレスレットで確認出来るよ。で、ついでに前回も同じだったけど、右前方に魔物が三体いるよ。もうすぐこっちに気付く」


「いや、だから、何で分かるんだ?」


 ディジェムは気になるのか、俺に突っ込む。


「前回と同じ動きをしているからだよ。地下三階まではパターンを覚えてるから対応出来るし、魔力感知で確認してみて」


 言われたディジェムが魔力感知で確認し始める。


「あ、本当だ。数ヶ月前のことなのに、よく覚えてるよな」


「ウィスティと一緒のダンジョン探索で、楽しかったからね。とりあえず、前に話した前衛、中衛、後衛で行ってみる? その都度、その時に合った対応で動く?」


「そっか。模擬戦じゃなくて、ダンジョン探索だから、俺達、パーティーだし、軍師ヴァルの采配で戦えるのか」


「采配も何もないと思うけどね。魔物の把握と罠の看破、フロアボスと戦う時に作戦はあってもいいと思うけど。そういえば、リーダーは誰がする?」


 ふと気になることを思い出し、尋ねると、皆が固まった。


「え? ヴァルじゃないのか?」


「ディルじゃないの? 俺を軍師って呼ぶなら、誰かその上がいるよね」


 言い出しっぺは君だよ、と笑顔でディジェムに伝えると、盛大に溜め息を吐かれた。


「……くっそ、軍師って言うんじゃなかった」


「ご愁傷様。それじゃあ、早速、魔物がそろそろ来るし、リーダーさん、どうする?」


 悪い笑みを浮かべて、ディジェムに尋ねる。


「いや、もうさ、ヴァルがリーダーになって指示した方がいいって。指示系統が混乱しなくて済むと思う」


「ディルもエルフェンバイン公国とアクア王国の国境沿いで盗賊退治していたんだから、統率出来るだろうに」


「うちの国とそもそも違うんだから、統率しにくいって」


「模擬戦もあるんだから、統率しにくいこともないだろうに……。分かったよ、リーダーは俺だね。皆もそれでいい?」


 俺とディジェムの遣り取りを見ていたウィステリア達はにこにこと笑顔で頷いた。

 リーダーは俺に決定してしまった。仕方ないか。


「ヴァル君とディジェ君って、いつも見てて思うけど、引き分けにすることが多いわね」


 オフェリアが不思議そうに言うと、ウィステリアが同意するように頷く。


「確かにそうですね。二回目の模擬戦の時も引き分けてましたし、休憩時間の手合わせも引き分けになることが多かったですし……」


「そんなつもりはなかったけど、そういえば引き分けが多いね」


「意識はしてなかったな」


「そうだね。お互い王族だから、無意識に気遣ってたのかもね。それはさておき。右前方にいた三体の魔物がこちらに気付いたみたいだから、早速倒そうか。アルパイン、イェーナ嬢、グレイ、倒してみる?」


「ヴァル様、分かりました!」


「分かりましたわ、ヴァル様」


「はい、ヴァル様」


 アルパイン、イェーナ、グレイは頷き、右前方を向き、構える。

 魔物が三体見えた。ゴブリンだ。

 三体が見えた瞬間、アルパインは片手剣を、イェーナは槍を、グレイは二本の短剣をそれぞれに持ち、攻撃する。

 三人の攻撃はゴブリン三体それぞれに当たり、一撃で倒した。

 あっという間に倒されたゴブリンは絶命した。死体は光になって霧散した。 

 ダンジョンでは死体は光の粒子になって消え、しばらくするとまた復活する。前世のロールプレイングゲームとかと一緒だなと前も思ったけど、またそう感じる。


「三人共、お疲れ様」


「まぁ、まだ地下一階だし、強さもこんなもんだよな……」


「冒険者達が攻略するダンジョンと比べると難易度をかなり下げてるらしいし、大怪我とかすると相手は貴族の子息子女、王族もいるから大事になるし、タンジェリン学園長も調整するのは大変だったろうね。それじゃあ、先に進もうか」


 以前、話した前衛をディジェム、アルパイン、イェーナ、リリーが、ヴォルテール、グレイが前衛寄りの中衛、ウィステリア、ピオニー、アッシュが中衛、俺とオフェリアが後衛という隊列を組み、先へと進んだ。








 それから、約一時間後。

 俺達は主に前衛と前衛寄りの中衛が嬉々として魔物とフロアボスを倒していき、いつの間にか、地下五階に着いた。

 その地下五階。フロアボスを前衛、中衛が攻撃、後衛の俺とオフェリアは回復魔法や支援魔法で援護する作戦で無事に倒した。

 地下六階へと続く魔法陣が現れたのだが、そこで魔力感知が不思議な反応をした。

 フロアボスがいる部屋の奥に、強い魔力の反応があった。肉眼で見ても、ブレスレットの地図には表示されていないところに反応がある。

 隠し部屋だ。


『紅、隠し部屋があるんだけど、魔力の反応がここのフロアボスより強い。どう思う?』


 右肩に乗る紅に念話で尋ねると、すぐ答えが帰って来た。


『ディルに行かせるといいぞ、リオン。あれはクラウ・ソラスやフラガラッハと同じ武器だ。ここの魔物との戦闘で武器が壊れ、先程も欲しがっていただろう?』


『武器? 蘇芳や鴇のような、意思を持つ武器?』


『ああ。アルジェリアンの時代の宰相が使っていた武器だ。使い手になれるかは武器次第だが、行ってみないことには分からぬからな』


『そうなんだ。じゃあ、ディルに言ってみるよ』


 月白の時代の宰相が使っていた武器というのが俺も凄く気になるので、剣が折れて苦い顔をしているディジェムに声を掛ける。


「ディル、ちょっと提案があるんだけど、いいかな?」


「どうした、ヴァル」


「もし、クラウ・ソラスのような武器がここにあるって聞いたら、確認しに行く?」


「ああ、行く」


 即答だった。


「そ、そっか。それなら、早速。そこの隠し部屋に武器があるよ」


「……え、隠し部屋? 何で分かったんだ?」


「さっき、魔力感知に強い魔力反応が引っ掛かって、ブレスレットの地図を見たら、この奥に隠し部屋があるみたいなんだ。紅からその隠し部屋にクラウ・ソラスのような武器があるって聞いたから、どうかなと思って。さっきも剣が壊れたようだし。ただ、意思を持つ武器みたいだから、使い手に選んでくれるかは武器次第だけど」


「マジか! もし、選んでくれるなら、俺は有り難いんだが、行ってみないと分からないか。よし、行ってみる」


「分かった。俺は念の為、ここで魔物が出て来ないか、警戒しておくよ」


「ああ、宜しく」


「ディジェ君、一緒に行くわ」


 グッと右手で拳を作り、ディジェムは部屋の奥の隠し部屋へ歩く。オフェリアも興味があるのか、ディジェムの隣まで小走りで行き、一緒に向かって行った。


「ディル様、上手く手に入るといいですね。ヴァル様」


 ディジェムとオフェリアの後ろ姿を見つめながら、ウィステリアが微笑む。


「そうだね。ディルが無事に手に入れることを祈りつつ、俺達はもう一戦しようか」


 ちらりと見ると、フロアボスがまた復活した。

 思っていたより、復活が早い。

 違和感を感じつつ、友人達を見る。少し疲れているように見える。


「皆、ちょっとここで休憩してて。今まで援護しかしなかったから、準備運動がてら俺が倒すよ」


 そう言って、回復の魔法陣を展開し、物理と魔法の結界を張り、そこを友人達に示す。


「分かりました。ヴァル様、お気を付けて」


 アルパイン達は少しホッとした顔をして、結界の中に入った。

 それを確認し、俺はフロアボス――ゴーレムを見据え、どう倒そうか考える。


「蘇芳で一撃のような気がするけど、違和感があるし。この違和感が何なのかが、まだ分からないんだよなぁ。紅はどう思う?」


 小さく呟くと、右肩に乗る紅が頷いた。


『そうだな。我も確定までには行かない。もう一度、起きれば確定なのだがな』


「そうか。じゃあ、ディルが武器を手に入れるまで、復活する魔物を倒し続けてみる?」


『……それは恐らく、アルパインやヴォルテール達が拗ねるからやめた方がいいと我は思うぞ』


「だよね。そんな気がしてたよ。じゃあ、目の前のゴーレムをちょっとゆっくり倒そうか」


 腰に佩く、光の剣クラウ・ソラスを鞘から抜き、魔力を通す。魔力を通したことで、銀色の刀身が明るい薄い赤――鴇色になる。


『鴇、ごめんね。タンジェリン学園長はともかく、流石に魔法学園の先生や生徒達が見ている可能性が高いから、君を出せない』


『仕方ないよ。チェルシー・ダフニーや元女神が見てるかもしれないからね。わざわざ手の内を見せる必要はないし、要らない情報を渡して、こちらが不利になるのは僕も本意じゃないよ』


 念話で申し訳なく告げると、短剣に擬態して、俺の懐にいる鴇も溜め息混じりに念話で返す。


『それに、リオンが僕を使ったら、ダンジョン内の魔物がしばらく消えるよ。君の滅の属性の魔力に当てられて。ダンジョン探索の授業がしばらく機能しなくなるよ』


『う……そうだよね。滅の属性って、文字通り消滅だしね。蘇芳、今日は暴れていいから』


『やったね! 魔物がわらわら出て来たら、前に見せられなかった全体攻撃を私が見せてあげるよ。とりあえず、今はゴーレムだけだから、全体攻撃はまた後でね』


『分かった。その時は宜しく』


 クラウ・ソラスを下段に構えると、ゴーレムがこちらに向かって殴ってきた。

 それを跳躍して躱し、ゴーレムの拳の上に立つ。

 俺が立つ拳とは反対の拳で、こちらを攻撃してくるのをもう一度跳躍して躱し、頭上からクラウ・ソラスを振り下ろす。

 普通の剣なら折れるが、クラウ・ソラスは物ともせず、まるで柔らかいものを斬るようにさっくりと真っ二つにする。

 ゴーレムのコアも真っ二つになり、光になって霧散した。


『……ゆっくり倒せてないね。これでも頑張った方なんだけど』


『まぁ、リオンが戦う時のフロアボスに期待だね。その時は魔物がわらわらを私も期待してるけど』


 蘇芳が慰めるように俺に言いつつ、次に俺が戦うフロアボスに期待の声を漏らす。

 俺が次に戦うフロアボスって、何階の時だろう。

 あっさり終わってしまい、友人達がちゃんと休めているか不安に思いつつ振り返ると、アルパインが目を輝かせて俺を見ていた。


「アルパイン……?」


「ヴァル様、光の剣クラウ・ソラスって、ゴーレムをいとも簡単に真っ二つに出来るんですね! 流石、王国の至宝ですね!」


「素材が違うみたいだしね。簡単に真っ二つに斬れるとは俺も思わなかったよ」


 苦笑して頷くと、ちょうど隠し部屋からディジェムとオフェリアが戻って来た。


「ディル、オフィ嬢、お帰り。どうだった?」


 尋ねると、二人は真顔からとっても良い笑顔になった。


「無事にゲット出来た」


 ディジェムは笑顔で手に入れた、初代国王時代の宰相が使っていた武器――剣を俺に見せてくれる。

 銀色の鞘に黒色のドラゴンと雷の紋様が彫られている。この黒色のドラゴンはディジェムの召喚獣で、エルフェンバイン公国の象徴でもある黒曜のように思える。

 鍔の中央には花緑青色の宝石が嵌め込まれてあり、柄は常磐色で、柄頭にも同じ花緑青色の宝石が嵌め込まれている。鞘の先端に鍔と同じように花緑青色の宝石が嵌め込まれている。

 この剣も、光の剣クラウ・ソラスとフラガラッハと鞘の形や紋様が似ていて、同じ製作者なのかなと感じる。

 クラウ・ソラスとフラガラッハが同じ製作者なのかは知らないが。


「綺麗な剣だね。名前は?」


「ああ、名前はカラドボルグ。クラウ・ソラスと一緒で意思があるし、俺の魔力や力に耐えられるみたいだから、凄く助かる」


 嬉しそうに笑って、ディジェムは腰に佩く。


「カラドボルグ……前世でも有名な剣だね。使い手になれて良かったね。おめでとう」


 カラドボルグはエクスカリバーの原型で、魔力を込めると剣がどこまでも伸び、丘三つを削り取る程の威力を発揮すると前世で何かの本で読んだ記憶がある。

 目の前にある、この世界のカラドボルグがそんな能力があるのかは知らないけど。

 個人的にエクスカリバーじゃなくて良かったねと思ってしまう。あちらは一文字違うだけで、与えるダメージが残念な剣になるし。それが通じるのはきっと、俺以外の婚約者と友人の転生者の三人だけだ。


「ありがとう。早速、次の階から使ってみたい」


 早く使いたいのかディジェムはうずうずしている。隣でオフェリアが苦笑している。


「じゃあ、先に進もうか。皆もそろそろ大丈夫そう?」


「はい。ヴァル様のお陰で、十分休めましたわ」


「ヴァル様の回復の魔法陣で、疲れもすっかりなくなりました」


 イェーナとヴォルテールが言うと、他の友人達も頷く。


「じゃあ、先に進もうか」










 それから、更に約三時間後。

 俺達は最初と同じく、主に前衛と前衛寄りの中衛が、特にディジェムが新しい武器を手に入れたこともあり、嬉々として魔物とフロアボスを倒していき、合間に休憩を挟みつつも、いつの間にか地下十七階に着いていた。


「あと二時間だけど、このダンジョンの最下層まで行きそうね」


 後衛で、前衛と中衛の友人達が戦うのを支援魔法で支援しつつ見ながら、オフェリアがぼそりと呟いた。


「そうだね。でも、段々、魔物も強くなってきてるから、難しいんじゃないかな」


「ディジェ君もいるし、ヴァル君はほとんど戦っていないじゃない。だから、余裕じゃない?」


「うーん……一年生だし、あまり進むと、二年生以降の楽しみがね……」


「それは……そうね。確かに」


「それと、個人的には藍玉も喚んで、戦わせてあげたいところなんだけどね」


 リヴァイアサン――藍玉が戦うところを俺が見たいだけなのもあるけど。


「そうすると、オフィ嬢がアクア王国の人間ってバレるし、最悪、青の聖女って分かるかもしれない。今度、機会があったら、藍玉も一緒に戦おうね」


「ありがとう、ヴァル君」


 オフェリアが小さく笑う。俺も穏やかに微笑み、背後から来た魔物を風魔法で切り刻んだ。


「挟み撃ち、かしら?」


「だから、俺が後衛にいるんだけどね。多分、前衛の誰かが罠を踏んだみたいだね」


「ヴァル、悪い! 俺が二回、罠を踏んだ!」


 魔物をカラドボルグで斬りながら、ディジェムが叫んだ。


「二回……浮かれ過ぎじゃないかしら、ディジェ君」


「本気で斬っても折れない、意思を持つ武器を、しかも有名なのを手に入れて、嬉しい気持ちは分かるからね。今日は大目に見てあげて、オフィ嬢」


「まぁ、私もそういうのを手に入れたら浮かれるかもしれないけど、もう少し、慎重にすると思うわ」


「友人達がいるから、安心なんだよ。心置きなく動ける訳だし」


 苦笑しながら、背後からやって来る魔物を火の魔法や氷の魔法で応戦する。


「だからといって、ヴァル君に負担掛けてるじゃない」


「これくらいなら負担じゃないよ。最悪、俺の召喚獣達を喚べば、後衛も前衛並みの戦力になるよ」


「ヴァル君だけで、前衛並みの戦力だと思うけど。正直な話」


「買い被り過ぎだよ」


 魔法を掻い潜ってきた魔物をクラウ・ソラスで斬りつつ、肩を竦める。

 罠で出て来た背後の魔物達を倒し、オフェリアと共に友人達の元へ向かう。


「ヴァル、悪い。うっかり、罠を踏んで……」


「いや、いいよ。後衛に俺がいれば、挟み撃ちになっても対処出来るし、元々、そのうっかり対策だったから」


「え、うっかり対策?」


「俺を含めて、誰かが罠を踏むだろうなと思って、そのための後衛だし」


「成程……」


「それで、カラドボルグで戦った感想は?」


 ニヤリと笑って尋ねると、ディジェムもニヤリと笑った。


「凄く楽しい。何より全力で振っても剣が折れないのが良い」


「それは良かった。あ、それと相談なんだけど、次の階のフロアボス、俺がというか、紅で倒してもいいかな?」


「ああ、クレーブス先生のお願いのヤツだろ? 俺は良いよ」


「皆はどうかな?」


「フェニックス様で倒すんですよね?! 僕、間近で見たいです!」


「……私も見たいです。興味津々です」


 ヴォルテールが目を輝かせて言うと、リリーも同じように頷く。


「私も見たいです! あ、でも次の階のフロアボス、ですよね? この階のフロアボスはどうするのですか?」


 アッシュが気になったのか、首を傾げながら問う。


「ディルの召喚獣のドラゴンとディルで戦ったら、クレーブス先生がかなり喜ぶ気がするんだよね」


「え、何? 俺も黒曜も巻き添え?」


「巻き添えというより、ドラゴンも戦いたいんじゃないかなって」


『戦いたいね。最近、なまってるし……。何より、紅兄さんが戦うのに、僕は戦えないのは嫌だし、ヴァル君の相談に乗りたい。ディル君、いいかな?』


 ひょっこりとディジェムの頭の上に乗り、黒曜が真紅色の目を輝かせて、訴え掛ける。


「う……分かった。黒曜と一緒に戦うよ。本音は滅茶苦茶、黒曜と一緒に戦いたかったし」


 黒曜に弱いらしいディジェムが負けて、俺の相談に乗ってくれた。


「ありがとう。じゃあ、この先のフロアボスに行こうか」


 目の前の扉をグレイとアルパインが開けて入ると、フロアボスが待ち構えていた。


「……えっと、これは、大きな蟹か?」


 呆然と見つめ、ディジェムが呟く。


「そうだね。大きな蟹だね」


 俺も呆然と見つめながら、隣のディジェムの言葉に頷く。


「……魔物だから、流石に食べられないよな、蟹」


「食べられたとしても、大きいし、ディルが求めてるような繊細な味じゃなくて、大味だと思うよ」


 小さく呟くディジェムに苦笑して答えると、彼はしょんぼりと項垂れた。

 前世で食べた蟹を思い出したようだ。


「うぅ、食べられないのに目の前に出て来て、何か腹が立ってきた。黒曜とさくっと倒してくる」


 そう言って、ディジェムは頭に乗ってる黒曜と共に、大きな蟹の元へ向かった。

 大きな蟹もディジェムに気付き、ハサミで威嚇し、攻撃してきた。

 ディジェムは跳躍して避け、黒曜が本来の大きさになる。

 黒く光る鱗、鋭く真紅色の目を細め、黒曜が鋭利な爪で攻撃する。

 黒曜の攻撃で、大きな蟹の右側のハサミも含めて足を全て切り落とされる。

 ディジェムも同じように、その反対側の左側のハサミも含めて足を全てカラドボルグで斬り落とす。

 ハサミと足が全てなくなった大きな蟹の身体が残り、黒曜が最後にブレスを吐いて、蟹は光の粒となって消えた。

 地下十八階へと続く魔法陣が現れた。


「蟹、食いたかった……」


 切なく呟くディジェムの肩を俺とオフェリアがぽんぽんと慰めるように叩き、ウィステリアが苦笑した。







 魔法陣に乗ると、次の階の地下十八階へと移動する。

 フロアボスに続く部屋まで、アルパイン達が魔物を倒してくれたお陰で、すぐに到着した。

 部屋の大きな扉をアルパインとグレイが開けて、中へと入る。

 中に入ると、フロアボスが待ち構えていた。

 見ると、大きなオーガだった。周りにはオーガがわらわらいた。大体、百匹くらいだろうか。


『ふむ。あれはオーガキングだな』


「成程。前のオークキングみたいなものだね」


 紅が俺の右肩で呟く。声が少しつまらなそうだ。


「それじゃあ、相談通り、俺とフェニックスで倒すね。ここで皆はゆっくりしてて」


 先程と同じように、回復の魔法陣を展開し、物理と魔法の結界を張り、そこを友人達に示す。


「分かった。実は紅が戦うところ、間近で見たことがないから楽しみなんだよな」


 魔法陣に移動しながら、期待に満ちた目でディジェムとアルパイン、ヴォルテール、イェーナ、グレイ、ピオニー、リリー、アッシュがこちらを見る。


「ヴァル様、紅さん、お気を付けて」


 ウィステリアが不安げに俺を見る。


「大丈夫だよ、ウィスティ」


 微笑して、ウィステリアを安心させるように言う。

 多分、紅の攻撃で瞬殺なので。


『そんなに心配する程のものではないが、まぁ、安心すると良い。あの程度、余裕だ』


「じゃあ、行ってくるね」


 クラウ・ソラスを鞘から抜き、右肩に乗っていた紅がフェニックスの姿に戻り、元の大きさになる。


「紅、オーガキングは譲るよ」


『分かった。他のオーガはどうする?』


「蘇芳が全体攻撃をしたいって」


『ふむ。分かった。オーガキングは任せよ』


「他のオーガは俺に任せて。それじゃあ、行こうか」


 俺の合図で、紅が天井へと上昇し、オーガキングの方へと飛ぶ。


「蘇芳、それで全体攻撃ってどうやるんだ?」


『私に魔力を流してくれたらいいよ。あとはわらわらいるオーガの位置を魔力感知で把握して、全体攻撃するってリオンが思ったらいいよ』


「ん? 把握? 思う?」


 眉を寄せつつ、とりあえず、蘇芳に言われた通りに魔力感知でオーガの位置を把握する。

 魔力を流して、全体攻撃をすると思うと、クラウ・ソラスが鴇色に輝く。

 すると、クラウ・ソラスから鴇色の剣が無数に現れ、わらわらいるオーガの周りに移動する。


『それじゃ、やっちゃうよ、リオン』


 蘇芳の不敵な声音と共に、鴇色の無数の剣がオーガを攻撃する。

 その攻撃でわらわらいたオーガは一掃され、光の粒になった。

 その間に、紅はオーガキングを炎を纏った足の爪であっさり倒され、光の粒になった。


『どう? リオン。全体攻撃は』


「うーん……便利だけど、これ、クラウ・ソラスを欲しがる連中が増えるし、またヴォルテールに過剰戦力だとか何とか言われるんじゃないかな……」


『まぁ、しょうがないよね? 私の機能の一つだし、リオンには私を使いこなして欲しいし』


「クラウ・ソラスの機能は確かに知っておいた方がいいけど、次からは他の機能は事前に教えて欲しいな」


 溜め息を吐きながら周りを見ると、紅が戻って来た。


「お疲れ様、紅」


『一撃だったから、つまらぬ』


 物足りなさそうに紅が呟いた。


「そっか。君が満足する相手はたくさんいないからなぁ。次のダンジョン探索の時にはもっと下に行けると思うから、その時にいるといいね」


 慰めるように、フェニックスの姿の紅の顔に抱き着き、頬を撫でる。フェニックスの姿でもふわふわな毛並みに癒やされる。

 そして、制限時間の六時間になったようで、ブレスレットが光った。

 紅はいつもの赤い鳥に戻り、俺の右肩に乗る。

 ウィステリア達の元へ戻ると、ヴォルテールが苦笑いをしていた。


「……ヴァル様、フェニックス様の攻撃はともかく、先程のアレは何ですか?」


 やっぱり、その感想だよね。

 こちらも苦笑を浮かべて、ヴォルテールに告げる。


「クラウ・ソラスの全体攻撃だね。俺もさっきそういう攻撃方法があるよって教えてもらったんだよね」


「……言ってもいいですか?」


「どうぞ」


「先程の全体攻撃を使えば、ヴァル様お一人で、小隊は余裕で倒せる気がするんですけど」


「……気のせいじゃないかな?」


 目を逸らしながらヴォルテールに答えると、ジトっとした目で彼に見返された。







 ダンジョンの出入り口に戻ると、目を輝かせて俺を見つめるクレーブス先生とガーネットクラスの生徒達に迎えられた。

 他のパーティーは早々に脱落したようで、俺達の戦いやドラゴンやフェニックスの戦いを見ていたらしく、間近で見たそうにしていた。

 紅も黒曜も、俺達パーティーには見えるようにしているが、他の生徒達やクレーブス先生には姿を消しているので、羨望の目で俺とディジェムを見つめていた。

 そして、二回目のダンジョン探索は、一年生では最深の地下十八階まで踏破し、タンジェリン学園長にやり過ぎと少し窘められてしまった。

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