第46話 模擬戦 二回目
模擬戦まであと四日の朝。
俺とシスルは作業部屋でぐったりしていた。
「何だかんだで、三本しか作れませんでしたね、ヴァル様……」
机にもたれ掛かり、シスルはソファで同じくぐったりしている俺に向かって言う。
「そうだね……。まぁ、作り方は分かったのだし、あとは本当に治るかどうかピオニーに飲んでもらうしかないと思う」
治ったのが分かったら、ヘリオトロープ公爵に伝えるつもりだ。
恐らく、父に伝える前にピオニー以外の魔力過多症の人を呼び、確認をすることになる。
魔力過多症が治ったと立証出来れば、父に伝え、シスルの功績にする。
突っ込まれるであろう聖水については、王城の南館の倉庫に置いてあったものを使ったと伝える予定だ。念の為、偽装のため、古びた瓶に聖水を注いで、同じく古びた木箱に入れている。
裏工作は出来た。
「ただ、実験台みたいな感じがして、ピオニー嬢には申し訳ない思いもあるんだよな……」
「でも、治したいのは本当です!」
「そうだね。治したいのは本当だし、ピオニー嬢に選んでもらおう」
「はい。飲んでくれるといいのですが……」
不安げな表情で、シスルが出来上がったポーションの瓶を見つめる。
ポーションの瓶が朝日に当たって輝いていた。
魔法学園に登校後、着くなり俺はウィステリアをハイドレンジア達に託し、王族専用の個室に逃げる羽目になった。
理由はどういう訳か貴族のご令嬢達が殺到したからだ。
ミモザ曰く、徹夜がいけなかったらしい。
目の下に隈はなかったのだが、徹夜の疲れで儚げに見えるようで、ご令嬢達の理性が飛んだそうな。
何でだよ。
「……意味が分からない。一回徹夜しただけで、儚げって……」
落ち着かせようと思い、紅茶を淹れたカップに口を付ける。
「……実際、儚げどころか、お元気ですよね、ヴァル様」
シスルが同情するように言う。
「……三歳の時からシュヴァインフルト伯爵からの剣の鍛練をしていたらね、体力付くよ。一回の徹夜くらいなら疲れはあるけど、平気。だから、儚げと言われるのが分からない」
盛大に溜め息を吐くと、シスルも苦笑した。
「そんなことより、ピオニー嬢とリリー嬢がそろそろ来る頃だね」
ほぼ常時発動中の魔力感知が、双子の伯爵令嬢の魔力に反応した。彼女達と共にもう一人、天鵞絨色の魔力の反応がある。恐らく、二人の兄だろう。
今日も作戦会議のため、ピオニーとリリーが個室に来てくれる予定だ。
そこで、ピオニーに魔力過多症を治るはずのポーションを飲むか飲まないか聞くつもりだ。
「あ、それと、シスル。このポーションのレシピ、空間収納魔法の中に入れておいて。王城でも何処でもだけど、机の鍵付きの引き出しに入れていても盗まれる時は盗まれる。空間収納魔法なら盗まれることはないから。それと、レシピにしっかり自分の署名を入れておいて。場合によってはそのレシピは自分のだという愚か者も出て来るだろうから。何なら、証人として俺の名前も書くよ」
「可能性は高いですよね。ヴァル様に教わった空間収納魔法は、こういうことの時のためだったのですね」
「それもあるけど、空間収納魔法の中に入れておけば、時間が止まってポーションの品質が落ちないから薬師のシスルには便利かと思ってね」
俺もストレス発散にポーションを作りまくっているので、この空間収納魔法はとっても役に立っている。
「確かに、僕にとって凄く便利です。教えて下さって、本当に助かってます。ありがとうございます」
シスルがお辞儀をしたところで、扉を叩く音が聞こえた。
俺が応答すると、扉を開けてロータスが入ってきた。
「失礼致します、ヴァーミリオン殿下」
「えっ、ロータス? どうして、ロータスまでここに……」
シスルが驚いて、俺とロータスを交互に見る。
「俺が呼んだんだよ。話すなら、同じ学園にいるのだし、兄妹で決めて欲しいと思って」
「……ヴァル殿下、何を決めるのでしょうか? シスル様もいる理由と関係していますか?」
リリーが不思議そうに首を傾げる。
「うん、実はシスルが魔力過多症を治す薬を作ったんだ」
「えっ……」
ピオニーが目を大きく見開く。リリーはピオニーの手をぎゅっと握る。
ロータスはニヤリと笑っている。そこはまだ隠そうよ。
「ただ、本当に治るか分からない。後遺症とか出るかも分からない。初めてだから、ピオニー嬢が飲むか飲まないかは決めて欲しい」
俺がそう告げると、ピオニー嬢はすぐ頷いた。
「飲みます」
決断、早っ。
顔には出さないが、思わずツッコミそうになった。
「即決だけど、いいのかい?」
ツッコミはしなかったが、結局、聞いてしまった。
「はい。シスル様が頑張って作って下さったものですから。ヴァル殿下も、手伝って下さったのですよね? お二人が頑張って下さったものを私は拒否なんて出来ません」
「ピオニー、ありがとう……」
飲んでもらえるか不安だったシスルはホッとした顔で、ピオニーにお礼を言う。
「まだ早いですよ、シスル様。それにお礼を言うのは私です。両親とロータス兄様、リリーのためにも飲んで、治します」
そう言って、ピオニーはリリーの手を握り、シスルに微笑む。
シスルは空間収納魔法から一本、ポーションの瓶を出す。
聖水を使った影響か、ポーションの瓶は仄かに白く光っている。
そのポーションの瓶を、シスルはピオニーに渡す。
「ピオニー、もし飲んで、具合が悪くなったり、おかしいと思ったら、飲まないですぐ捨てて」
ピオニーに、飲む前にシスルが告げる。
ちゃんと効くかどうか分からないので、不安なのが分かる。
「分かりました、シスル様。早速、飲みます」
受け取りながら頷いて、ピオニーがポーションの蓋を開ける。
無色透明だが、聖水の影響で光るポーションをピオニーはじっと見つめる。
恐る恐るといった動きで、ピオニーは口にポーションを近付け、ぐいっと一気に飲み干した。
一気に飲み干したら、おかしいとかも分からないと思うのだが、気にしていないのか、幼馴染みとしての信頼関係なのだろうか。
希望としては後者であって欲しい。
「ど、どう? ピオニー」
シスルが恐る恐る尋ねる。
「身体が軽いです! ずっとあった倦怠感がなくて、魔力の溜まりみたいなのも感じないです。シスル様、ありがとうございます!」
両手を閉じたり、開いたりしながら、ピオニーがシスルに告げる。
「……今なら、魔法ぶっ放し放題? ピオニー」
リリーがピオニーの腕に抱き着いて尋ねると、大きく頷いた。
「今ならやれるわ、リリー」
ピオニーは力強く頷き、拳を握り、親指を立てて上に向けた。
「いやいやいや、二人共、ヴァル様の御前だからね、言葉遣い、言葉遣い!」
シスルが慌てて、双子の姉妹が暴走する前に必死に止める。
兄であるはずのロータスは遣り取りを見て、シスルのように二人を止めることもなく、背中を向けて壁にもたれ掛かって震えている。
傍から見ると泣いているように見えるが、泣いていない。笑ってる。
まぁ、この四人を見てる俺が言えたことではないが、確かに面白い。
「ヴァル様、ごめんなさい。二人が失礼しました!」
「シスル、公の場ではないからそこまで気にしなくていいよ。ピオニー嬢、身体は何ともない? 違和感はない?」
「はい。むしろ、とても軽くて、そちらが違和感です。ヴァル殿下もありがとうございます」
ピオニーは大きく頷き、自分の両手をじっと見ている。
『紅、ピオニーの身体は大丈夫そう? 治った?』
念話で右肩に乗る紅に尋ねる。
『魔力は問題なく循環している。魔力が放出されずに身体に溜まっているという様子もない』
『ということは効いたってこと? 完治でいいのかな?』
『完治で問題ないだろう』
『ポーション一本で治ったということだよね。また飲む必要はない?』
『ああ。必要ない』
紅が頷く。その間も、シスルはピオニーにあれこれ身体の調子はどうかと聞いている。
『そうか。良かった』
紅の言葉に安心し、シスルとピオニー、リリーの遣り取りを見る。心配なようで、ピオニーに本当に大丈夫なのか、具合は悪くないかとシスルは必死に聞いている。
優しいなと和んでいると、隣にロータスがやって来た。
「……自分の妹なのだから、シスルのように気遣ってあげたらどうなんだ? ドラジェ伯爵令息」
「それはシスルがやってくれます。私は後でいいのです。後で、しっかり抱き締めますよ」
シスル、ピオニー、リリーの遣り取りを見ながら肩を竦めつつ、ロータスは小さく微笑む。そして、俺の方に向き直る。
「ヴァーミリオン殿下。シスルに発破を掛けて下さり、ありがとうございました」
「俺は何もしていないよ。シスルが頑張ってくれたから出来た」
お辞儀をし、頭を下げたままのロータスにそう言って、頭を上げさせる。
「しかし、貴重な聖水を使われましたよね?」
「王城の南館の倉庫にあったもので、品質も全く落ちてなかったし、使わない方が勿体ないから気にしなくていい。上手くいくかも分からなかった」
実際は俺が作った聖水なので、原価はゼロで、貴重ではない。言わないが。
「それでも、です。ヴァーミリオン殿下には感謝しかありません。宰相閣下に報告もあるとは思いますが、これでシスルが伯爵位になれば父も縦にしか頷けないですよ。まぁ、その前にシスルが助けてくれたのですから、自分の娘の、白紙になってしまった婚約を撤回するように父に国王陛下へ直談判させますけど」
この人、腹黒いなぁ。少し、俺と考え方が近いけど。
「ということで、ヴァーミリオン殿下。我がドラジェ伯爵家の兄妹は全力を以て、殿下に忠誠と共に媚びを売りますので、どうぞよしなに」
左胸に右手を添えて、ロータスが俺に言うと、ピオニーとリリーがこちらにやって来て、カーテシーをして大きく頷いた。
シスルが嬉しそうにしている。
「媚びは売らなくていい……。いらない」
盛大に溜め息を吐きながら、俺はシスルを見た。
「ヴァル様、僕も今まで以上に忠誠を誓います。リリー達と一緒にヴァル様をお守りします」
にっこり微笑むシスルを見て、何となく思った。
結局、俺の配下は皆、過激だった。
そして、模擬戦当日。
闘技場に一年生の生徒全員が集まった。
アリーナにそれぞれ、クラスごとに集まっており、更に、決まったチームごとに集まっている。
今回の模擬戦も前回と同じくブレスレットをそれぞれ着けて戦い、一定のダメージを負わせてチームが全滅するか、制限時間を超えた時点で残った人数が多い方が勝ち。
トーナメント方式で勝ち負けを決めていく。
ブレスレットにはダメージ蓄積を確認する魔法、一定のダメージ蓄積で指定場所――クレーブス先生達、各クラスの担任の隣の脱落者席と呼ばれるところに強制送還される魔法が付与されている。
「……ヴァル殿下。何故、今回は王太子殿下ご夫妻に宰相様に騎士団総長様に宮廷魔術師師団長様がいらっしゃるのでしょうか?」
リリーが観客席の更に上にある、王家が見る時に案内される観覧席にいる兄夫婦とヘリオトロープ公爵、シュヴァインフルト伯爵、セレスティアル伯爵を見ながら、俺に聞く。
「それは俺も聞きたい。理由は知らないが、公爵達が来ることは聞いていたが、王太子夫妻が来られるのは聞いていない」
そもそも、公爵達が来るのも不思議なのだ。
確かに、公爵達の子供達は皆、俺と同い年だ。親として観に来たと言われれば、そうですよね、と思うのだが、何か思惑があるとしか思えない。
兄夫婦もだ。俺のことを可愛がってくれる兄だから、こちらも観に来たと言われれば、納得するしかない。しかも、義姉もいる。
どんな思惑でわざわざ来たのか分からないが。
一応、何かあっても大丈夫なように、兄夫婦も公爵達も俺が作った物理と魔法結界、状態異常無効を付与したネックレスを渡し、身に着けてもらっているから魅了魔法も問題はない。闘技場にも魅了無効を付与した魔石を配置している。
編入生を確認しに来たのだろうか。わざわざ、義姉を連れて?
タンジェリン学園長は何か聞いているのだろうか。
「ヴァーミリオン王子。少し宜しいでしょうか?」
考え込んでいると、クレーブス先生が俺を呼んだ。
「どうしましたか、クレーブス先生」
「タンジェリン学園長が呼んでいるのですが、お越し頂いても宜しいでしょうか?」
「構いませんよ」
申し訳なさそうにするクレーブス先生に笑みを浮かべる。
ピオニーとリリーにはその場で待ってもらうように伝えると二人は頷いた。頷いたのを見て、俺はタンジェリン学園長が待つアリーナと観客席を隔てる出入り口に近付く。
出入り口の扉にタンジェリン学園長が立っていた。
「ヴァル君、少しいいかしら?」
にこやかに俺を見ながら、タンジェリン学園長は防音の結界を張る。
「何でしょうか、ローズ伯母上」
防音の結界を張ったのを確認し、タンジェリン学園長を伯母と呼ぶと、彼女は嬉しそうに笑った。
「王太子殿下ご夫妻は貴方の応援に来たそうですわ」
……ん?
開口一番、タンジェリン学園長が俺に告げる。
「私も、学園長ではあるけれど、伯母としてヴァル君の応援をするつもりですわ。クラーレット君達も、ヴァル君の応援もするけれど、自分達の子供の応援が八割ですわ」
「……残りの二割は?」
「聖属性持ちの編入生の確認ですわ。どのくらいの魅了魔法を使い、我が国の脅威と成り得るかのね」
「……今の時点での魅了魔法程度なら脅威には成り得ませんよ。私の魅了魔法解除で簡単に制御出来てますし。ただ、それら全てが策なら、こちらも考えないといけなくなります」
これが本気でなかった場合、ヒロインは確実に脅威になる。今がただの小手調べなら、こちらを出し抜いているのなら、俺は慎重に動かないといけなくなる。こちらも出し抜く必要が出て来る。
ヒロインが策士なら。
俺の直感は策士ではないと、否定しているが。
それに頼っていいのか、俺のところに来る情報が薄過ぎてまだ判断出来ない。
「そういうところは本当に初代国王にそっくり」
「……ご先祖でもありますし、父親になるはずだった方です。いくらか似るのは大目に見て下さい」
と言っても、俺はその初代国王を知らないので、何処が似ているのかは分からないままだ。聞いたら教えてくれるのだろうか。
「あら、似るのは仕方ありませんわ。親子になるはずだったのですし。私にとってはとても懐かしいので、いくらでも初代国王夫妻の話をしますわよ」
「機会があれば、是非教えて下さい」
「分かりましたわ。模擬戦、頑張って下さいね。応援してますわ、ヴァル君」
タンジェリン学園長は優しく微笑んだ。
タンジェリン学園長との話も終わり、ピオニーとリリーの元に戻る。
模擬戦開始前なので、生徒達はやる気に満ちている。
何せ、王太子夫妻に宰相、騎士団総長、宮廷魔術師師団長という王国トップが来ている。
誰かの目に留めてもらいたいと思っている生徒達が多いせいか、若干名、目が血走っているのが見える。
「ヴァル殿下。私とリリーは全力でヴァル殿下に忠誠と媚びを売るので、王太子殿下ご夫妻に宰相様、騎士団総長様、宮廷魔術師師団長様に浮気をしませんのでご安心下さい」
ぐっと拳を握り、ピオニーが俺に宣言すると、リリーが彼女の隣でこくこくと頷く。
「いや、何の宣言? 何度も言うけど、媚びはいらないよ。まぁ、ピオニー嬢の魔力過多症が治ったから、模擬戦に全力で臨めるのは良いことだけど」
「今なら、今まで以上に全力で模擬戦で戦えます」
「……ヴァル殿下、作戦、楽しみにしています」
「俺も二人の連携、楽しみにしてるよ。他の生徒達を驚かせよう」
小さく微笑み、俺は少し離れたところで作戦会議をしているウィステリア、ヴォルテール、グレイのチームと、ディジェム、アルパイン、イェーナのチームを見た。
今回もこの二つのチームは決勝戦まで残るはずだ。
今回の模擬戦はトーナメント形式で進めていき、残った四チームで総当たり戦になる。所謂、バトルロイヤル形式になるそうだ。
そこで、最後まで残ったチーム、または制限時間までに残った人数が多いチームが優勝となる。
俺としては、決勝戦まで残れば試したい作戦もある。なので、目標は決勝戦まで行くことだ。
楽しみで、にこにこ笑っていると、視線に気付いたのか、ディジェムがこちらにやって来た。
「……楽しそうだな、ヴァル」
「優勝候補のウィスティのチームとディルのチームとどう戦おうかなと、考えていると楽しくて」
「俺としては、ウィスティ嬢のチームと俺達のチームは優勝候補で、ヴァルのチームは優勝しないと思っている連中の気が知れない。俺達よりヴァルのチームが優勝候補だろ」
「またまた、何を言ってるんだか。でも、大穴で勝ち上がるのも面白いよね」
俺の女顔のせいか、俺とピオニー、リリーのチームの評価は、ウィステリアのチームやディジェムのチームと比べると低いようだ。
おかげでこちらは緊張もなく、自然体でいられる。
「本当に楽しそうだな。こっちはそれが怖い」
俺達のチームを警戒しているのか、ディジェムは小さく息を吐く。
「決勝戦まで勝ち上がって、ディル達と戦えることを祈っておくよ」
「決勝戦まで勝ち上がる気満々じゃないか……。でも、俺も楽しみにしてる」
笑顔で伝えると、ディジェムは盛大に溜め息を吐いて、アルパインとイェーナのところへ戻って行った。
そして、模擬戦が始まった。
一年生の学年全員がチームに分かれ、戦う模擬戦が始まった。
王太子夫妻に宰相、騎士団総長、宮廷魔術師師団長という王国トップが観に来ている影響で、一回戦目から殺気立っている。
王国トップが観ていることで、さくさくと進んでいき、ウィステリアのチーム、ディジェムのチームも勝ち進んでいる。
俺とピオニー、リリーのチームも相手が侮ってくれたおかげで、難なく勝っている。
ガーネットクラスは俺の実力を前回知っているので警戒しているが、アンバークラス、オニキスクラスは女顔の第二王子と双子の伯爵令嬢のチームを侮ってくれるので瞬殺出来ている。
俺もそうだが、ピオニーとリリーも外見で侮られることが多いようだ。
俺もピオニー、リリーも、そのことで更に意気投合して連携が深まっている。
大穴感満載だったようで、さくさく勝ち進める俺とピオニー、リリーのチームを今更、警戒し始めているチームもいる。
今更だが、模擬戦を見ている王太子夫妻に宰相、騎士団総長、宮廷魔術師師団長は皆、俺に対して過保護なので、侮った生徒達を冷たい目で見ている上に、別の意味で目に留まってしまったようで、ご愁傷様としか言えない。
ちなみに、ヒロインのチームは子爵の息子二人のチームだったのだが、作戦なのかと思うくらいにあっさり負けている。拗ねている顔を見ると、作戦ではなさそうなのだが。もしかして、演技か?
「……ヴァル殿下、次、どうします?」
「リリー嬢は何かやってみたい作戦はある?」
「……私とピオニーが前衛に出て、ヴァル殿下が後衛で支援して頂けますか?」
「構わないけど、二人の連携をフォローする形か。どのくらいフォローが必要?」
「……不意討ちしてくる魔法を防いで頂ければ、後はやれます」
「分かった。二人に来る魔法は俺が全て防ぐ。思う存分、やっちゃって」
にっこり微笑むと、ピオニーもリリーも笑顔で答える。
それをたまたま近くで見ていたらしいディジェムがぎょっとした顔をしている。
そして、次の戦いでオニキスクラスの生徒と当たった俺達は、ピオニーとリリーの連携魔法によってあっさり勝利した。ちなみに俺は宣言通り、二人に来る魔法を全て防ぎ、フォローに徹した。
二人に来る魔法を全て防いだのを見ていたヴォルテールがげっそりとした顔をしている。
アリーナから離れて、勝ち進んでいる生徒達がいる待機所に戻ると、ヴォルテールがやって来た。
「ヴァル様……全ての魔法を防ぐって……」
「相手の発動点が分かりやすくて」
発動点というのは読んで字の如く、魔法が発動される所だ。宮廷魔術師も含めて、魔術師を目指している者は如何にその点を相手に読ませずに発動するのかが腕の見せ所の一つだったりする。
魔法学園に入学して間もない一年生は、まだその発動点を読ませずに魔法を発動する、というところまで達していない。
今後、授業で習うはずだ。
俺やヴォルテールは師匠が宮廷魔術師師団長なので、子供の頃から叩き込まれているおかげで発動点を隠して発動したり、発動点を読んで、相手の魔法を潰したりすることを訓練を兼ねて日頃から行っている。
それを先程の戦いで全部潰したので、ヴォルテールが何とも言えない顔をしている。
「だからって全部防ぐのは、流石に僕でも出来ませんよ……」
「君なら出来ると思うけどなぁ。俺のもよく防がれるし」
「一対一なら僕でも防げます。ヴァル様とする時は大体六割しか防げませんが。ヴァル様との読み合いは楽しいです。でも、先程のヴァル様のように三人同時は無理です」
「こう言っては相手に失礼だけど、あの三人はとても分かりやすかったから、ヴォルテールも出来るよ、本当に。俺を持ち上げるのはしなくていいよ」
小さく周りに聞こえないようにヴォルテールに言うと、口を膨らませた。
「ヴァル様、ミモザ嬢も言ってると思いますけど、ご自分に対しての評価が低過ぎます。今度こそ、一緒のチームになって、ご自分が如何に凄いかお伝えしまくりますからねっ」
そう言って、ヴォルテールはウィステリアとグレイの元へ戻って行った。
今まで口を膨らませたりしなかったのに、だんだん、ヴォルテールがミモザ化している気がする。
「ヴァル殿下、配下の人達に慕われてますね」
「慕われるのは有り難いのだけど、どうも崇め奉る勢いなのがちょっと怖いというか……」
「……でも、配下の人達の気持ち、分かります。ヴァル殿下、神々しい。慈悲深い神様みたい」
リリーの一言に、ピオニーが頷き、双子がじっと俺を見上げる。見上げる二人の姿に思わず固まる。
神々しいはともかく、少し当たっているところがあり、ドキリとする。女神ハーヴェストと双子として生まれていたら、確かに神だったので。
「……神じゃないから。ただの第二王子」
溜め息を吐くと視線を感じて、その方向へちらりと目を向けると、観客席からこちらを見るヒロインがいた。頬を赤らめていて、背筋がぞわりと寒気がする。
見なかったことにして、次の戦いのことを考えることにした。
次の戦いに勝てば、決勝戦だ。
ウィステリアのチームも、ディジェムのチームも勝ち、決勝戦に駒を進めている。
「さて。次の戦いはどう戦おうか」
「ヴァル殿下、次の戦いは敢えて、武器のみで戦いませんか? 魔法はピンチの時だけという縛りにして」
ピオニーが提案してくる。
「ん? 武器? ピオニー嬢とリリー嬢の得意武器は?」
「私は弓です」
「……私はまだ未熟ですが、ハルバードです」
「ハルバード……珍しいね」
ハルバードは戦斧と槍を合わせた武器であり、斬る、突く、断つ、払うといった様々な攻撃が可能だから万能ではある。その一方、使いこなすには熟練の技術を要するから、カーディナル王国の騎士団の中でも少数だ。
それをリリーが使うと聞くと、好戦的な性格だなと思ってしまう。
ピオニーも弓ということは、これまた良い連携をするんだろうなと感じてしまう。
二人の連携が見たい、と感じ、作戦を考えてしまう。
「ヴァル殿下の得意武器は何ですか?」
「俺は主に使う武器は剣だけど、槍も戦斧も弓も大鎌もある程度は使えるよ」
三歳の時からシュヴァインフルト伯爵にしごかれた結果、誘拐されたりとかで武器を現地調達することがあった場合、使える武器は大いに越したことはないと言われ、ある程度の武器は使える。ピオニー達には伝えていないが、暗器もある程度、シュヴァインフルト伯爵から教わった。使い道がないが。
第二王子にたくさん仕込んで、将来どうする気だと当時、子供ながらに思ったが、確かに使える方が何かと便利ということで開き直って教えてもらった。
「……ヴァル殿下の大鎌、見たい」
きらきらと目を輝かせて言うリリーが、訓練用の武器が置いてある棚を見る。
「訓練用の大鎌なんて、置いてあるか?」
「なさそうであるかもしれませんよ」
ピオニーも見たいのか、リリーと一緒に訓練用の武器が置いてある棚を見に行く。
「「あ」」
ピオニーとリリーが同時に声を出して、ニヤリと笑って俺を見る。
棚に近付くと、ピオニーとリリーが見つけた物を俺に渡す。
「ありました、訓練用の大鎌」
「そうだね……」
何であるんだ、訓練用の大鎌。
タンジェリン学園長の趣味なのか、はたまた魔法学園の先生の誰かの趣味なのか。
「ヴァル殿下、次の戦いで美しい死神の姿、見せて下さいね」
ピオニーが笑顔で言うと、リリーも頷いていた。
そして、この戦いではアンバークラスの生徒達が相手だった。
アンバークラスの生徒達にリリーがハルバードを振り回し、ピオニーが弓で援護射撃をし、それで倒しきれなかった相手を俺が大鎌で倒すという連携が上手くいった。
更に、腰に掛けてる訓練用の剣じゃなく、大鎌を俺が使ったことが影響したのか、脱落者席へ強制送還される前に倒されたアンバークラスの生徒達は「ヴァーミリオン王子に鎌で倒されるのは本望です。美し過ぎる死神……」とか訳の分からない言葉を発して脱落者席へ飛んでいった。
結果、この戦いで武器のみで戦う作戦は功を奏し、魔法を使わずにあっさり勝利し、決勝戦に進むことが決まった。
「……ヴァル殿下、美しい死神っぷりでした。素敵です」
「ヴァル殿下の鎌捌き、惚れ惚れしました。ちなみに、待機所や脱落者席で見ていた生徒達が、ヴァル殿下が美しいと悲鳴を上げながら鼻血を出したり、椅子から崩れ落ちていったみたいですよ」
リリーとピオニーがそれぞれの感想を俺に伝える。
「……美しい死神と言われても嬉しくない」
ちょっと不貞腐れて呟くと、たまたま通りすがりの女子生徒が目撃し、崩れ落ちるということも起きた。
もう、この女顔が嫌だ。仮面でも着けようかと本気で悩む。
待機所に戻ると、ウィステリアが目を輝かせて待っていた。
「ヴァル様、大鎌使えるのですね! 初めて知りました! 今度、近くで見せて下さいっ」
両隣で、双子がニマニマと俺を見ている。
「……ウィスティ……」
額に手を当て、溜め息を吐く。
俺の愛しの婚約者はきらきらと目を輝かせて、見上げてくる。
可愛い。可愛いのだけど、感想が微妙にズレている。
「それと決勝戦、私も負けませんからね! ヴァル様」
上目遣いで両手で拳を作って、ウィステリアが俺に言う。
もう、婚約者が可愛過ぎる。誰も居なかったら、抱き締めているところだ。
「俺も負けないよ、ウィスティ」
小さく微笑むと、両隣の双子が肘で俺を突く。
「ヴァル殿下がウィステリア様を溺愛している話、本当でしたね」
「……ヴァル殿下の微笑み方が違う。分かりやすい」
「こんなにも分かりやすいんだから、他の令嬢も諦めて欲しいところなんだけどね」
俺がそう言うと、ウィステリアの顔が真っ赤になる。
「認めたくないのでしょうね。こんなにもお似合いのお二人なのに」
「……お二人の仲は、婚約者がいる同年代の貴族令嬢の憧れ。私もシスル様と、お二人のようになりたい」
ピオニーとリリーが言うと、更にウィステリアは真っ赤になった。
「と、とにかく、ヴァル様、私も決勝戦では負けませんよ」
顔を真っ赤にして、ウィステリアは誤魔化すように言った。
本当に可愛いなぁ。誰も居なかったら、本当に抱き締めているところだ。
そして、決勝戦が始まる。
決勝戦に進出したチームが決まり、アリーナに集まる。
アリーナにはウィステリア、ヴォルテール、グレイのチーム、ディジェム、アルパイン、イェーナのチーム、オニキスクラスのチーム、そして、俺とピオニー、リリーのチームが決勝戦まで勝ち残った。
決勝戦まで残れば試したい作戦もあったので、決勝戦まで行くという目標は達成した。
なので、ピオニーとリリーに小声で作戦を伝える。
「成程。この作戦、私の魔力が重要ですね」
ピオニーがニヤリと笑う。
「そう。前回の模擬戦で君達を見た時から試してみたかった作戦だから、今出来ると思うと楽しみで仕方がない」
「……だから、ピオニーの魔力過多症を治したかったのですか?」
「それもあるけど、純粋に身体が動かないのは辛いのが分かるからというのが強いよ」
「それなら、私達はヴァル殿下の作戦が成功するように動くのが恩返しになるね、リリー」
「……そうだね、ピオニー。更に優勝したら、もっと恩返しになる」
お互い頷き合い、俺を見る。
「ヴァル殿下、私達の力を使って下さい。そして、優勝しましょう。優勝しないと思っている連中を見返しましょう」
「……実は私達、頭に来てました。ヴァル殿下のことを侮る他の生徒達が。正直、今でも魔法をぶっ放して、ヴァル殿下の前でひれ伏させたいくらいに」
「模擬戦だし、気にしなくてもいいのに。でも、二人の気持ちは嬉しいよ。ありがとう。ここまで来たのだし、どうせなら優勝しようか。三人無傷で残って」
「「やりましょう」」
頷き合い、更に細かく作戦を決めて、しっかり落とし込む。
タンジェリン学園長の声が拡声魔法でアリーナに響いた。
「一年生の皆さん。決勝戦ですわ。今回が学年での初めての模擬戦で緊張した方もいると思いますが、次回も同じようにあるので、しっかり頑張って下さい。その時は、相手を侮らずに全力で挑んでみなさいな」
……タンジェリン学園長が少しキレてる。
あの言い方は確実に俺達チームを侮った生徒達に対してだ。
もしかしたら甥になるかもしれなかったので、甥に対しての愛情が半端ない。
そういえば、昔読んだ本にエルフは家族に対しての愛情が特に深いと書いてあった気がする。
「それでは決勝戦、始め!」
タンジェリン学園長の開始の合図で、俺達チームを他のチームが囲んだ。
「ヴァル殿下、予想通りでしたね」
「そうだね。今までトリッキーな作戦ばかりしていた訳だし」
更には俺の婚約者や親友、護衛達が二つのチームにいる訳なので、俺達のチームを警戒するのはすぐ分かる。
もう一つのオニキスクラスのチームも今までの俺達のチームの戦いを見ている分、先に片付けておきたいのは分かる。
なので、三つのチームは結託、とまではいかないが、俺達のチームを先に倒すという意見が一致したのだろう。
対する俺達のチームはそうなるのを見越して、逆手に取るつもりだ。
「それじゃあ、ピオニー嬢。やっちゃおうか」
この場にそぐわない、穏やかな笑みを浮かべ、ピオニーに作戦開始の合図をする。
「分かりました。行きます」
ピオニーは両手を前にかざし、魔力を集中させる。
何かを仕掛けて来ると察した三つのチームは身構える。
身構えたのを確認し、ピオニーは魔力を放つ。
ピオニーは全ての攻撃を防げるように、俺達を囲んで大きな氷の円柱を作った。
「俺達を倒したかったら、この氷の柱を頑張って攻略してね、ディル」
「はぁっ?! 何だ、それ!」
ディジェムが氷の円柱の向こう側で叫んだ。
「そこで身構えずに、攻撃していれば面白かったのにね」
「籠城するとは思わなかったのでしょう」
最初の作戦は上手くいった。
ピオニーに俺達を囲んで、大きな氷の円柱を作り、三つのチームとの間に壁を作ってもらった。
この氷の円柱を攻略してもらうように挑発混じりに誘導もした。
「……それもヴァル殿下の魔法ではなく、ピオニーの魔法だったので、驚いたのでしょう」
「さて。ピオニー嬢、この氷の柱はどのくらい保つ?」
「十分は余裕です」
右の拳を握り、親指を立てて上に向けたピオニーは余裕な笑みを浮かべる。
「分かった。それじゃあ、その間に背後に回ってリリー嬢と俺で大半を脱落者席に送ろう」
「……お任せ下さい」
「ピオニー嬢、行ってくるから、その間宜しく」
「行ってらっしゃいませ」
頷くピオニーを確認して、リリーの手を取り、氷の円柱の上へ飛ぶ。
この氷の円柱、酸素は必要なので敢えて上は空いている。
それに気付けば、攻略は簡単なんだが、敢えて大きな円柱にすることで、前にしか目が行かないようにしたので、まだ気付いていない。
更に氷の円柱を敢えて大きく長くしてもらったのは、俺達が出たことに気付かれないためだ。
気付かれない間に、俺とリリーで三つのチームに背後から攻撃を仕掛けるという作戦だ。
氷の円柱を出た俺とリリーは、攻略しようとしている三つのチームの背後に降り立ち、二人で手分けして攻撃を仕掛ける。
リリーは魔法、俺は訓練用の剣で攻撃し、オニキスクラスのチームとウィステリアのチームのヴォルテール、グレイ、ディジェムのチームのアルパイン、イェーナを脱落者席へ送った。
残っているのはウィステリアとディジェムだ。
これで、俺達のチームが優勢だ。
「ピオニー嬢、もういいよ」
俺の掛け声で、ピオニーは氷の円柱を消し、こちらにやって来る。
「やってくれたな、ヴァル」
「前の模擬戦を見て、やってみたかった作戦だったから、上手くいって良かったよ。そちらも折角、三つのチームで結託したのだから、上手く連携を取れば、俺達を脱落者席へ飛ばせたのにね」
言いながら、訓練用の剣を軽く構える。
「……ほんと、ヴァルを敵に回したくないって思ったよ」
ディジェムも訓練用の剣を構える。
「それは光栄なことだね」
「ヴァル様の頭の中を見てみたいです」
訓練用の細剣を構えて、ウィステリアが呟く。
「中身のほとんどが君のことでいっぱいだよ、ウィスティ」
事実、そうなのでさらりと伝えると、ウィステリアが口を膨らませた。
何この、可愛い生き物は。
「ヴァル殿下、ウィステリア様は私達が戦わせて頂きます」
ピオニーが弓を構えながら俺に言う。隣で、リリーが訓練用のハルバードを構えている。
「そうだね。ディルは俺が戦った方が勝機はあるからね。お願いするよ」
「では、行きます」
ピオニーが弓矢を放ったのと同時に、ウィステリア、ディジェムが動いた。
ディジェムがピオニーに向けて、剣を振り下ろすのをすかさず俺が剣で防ぎ、左手で炎の球を放つ。
「うわっ、本当に敵に回したくないな」
炎の球を剣で二つに斬りながら、ディジェムがぼやく。
「それはこちらも同じだよ。やりにくいったらないよ」
俺もぼやきながら、炎の狼と水の虎を作る。
「……紅と青藍じゃないのかよ」
「今のところ、思ったより格好良くて綺麗に出来ないから試行錯誤中。なので、今日はこっち」
言いながら、炎の狼がディジェム目掛けて駆ける。その後を水の虎が続く。
ディジェムは剣で炎の狼を二つに斬り、そのまま水の虎も斬ると同時に俺も攻撃を仕掛ける。
鍔迫り合いになり、力が拮抗する。
同時にそれぞれ後方に飛び、もう一度お互い剣をぶつけ合い、離し、またぶつけ合う。
俺達が何度も剣戟を繰り広げている間も、ウィステリアとリリー、ピオニーも接戦が続いている。
「ヴァル、マジでやられてくれないか?」
「その台詞、そのままお返しするよ、ディル」
にっこり笑って言うと、ディジェムが盛大に溜め息を吐く。
まだ疲れていない様子のディジェムに小さく息を吐く。
俺としては、疲れている表情をおくびにも出さないようにしているが、結構疲れている。
早く帰って、ベッドで寝たい。
もう一度、お互いの剣をぶつけようとした時、タンジェリン学園長の声が響いた。
「そこまで! 制限時間を超えましたわ。今の時点で人数の多い、ヴァーミリオン殿下とドラジェ伯爵令嬢姉妹のチームの勝ちですわ」
タンジェリン学園長の言葉に、観客席にいる脱落した生徒達の歓声が響いた。
「ヴァル殿下、やりましたね」
「……これで、ヴァル殿下の天下」
「二人共、お疲れ様。ただ、俺の天下じゃないから」
額に手を当てながら、ピオニーとリリーを見る。
少し呼吸が荒いが、まだ余裕はあるようだ。
「色々、作戦で振り回してしまったけど、二人共、身体は大丈夫?」
「問題ありませんよ、ヴァル殿下」
「……むしろ、楽しかったです。また、同じチームになったら嬉しい」
「それは良かった。また同じチームになったら、違う戦い方を考えようか」
俺の言葉に、双子の姉妹は目を輝かせた。
そして、優勝した俺とピオニー、リリーのチームは兄夫婦とヘリオトロープ公爵、シュヴァインフルト伯爵、セレスティアル伯爵に呼ばれ、労いという名の誂いの洗礼を受け、精神的に疲労困憊になるのだった。
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