第40話 暗殺者

 ハイドレンジアとシャモアの結婚式が終わり、新郎新婦はそのままエクリュシオ子爵邸に泊まり、ミモザはアイリスさんと子爵邸の別邸に泊まることになった。

 シスルはヴォルテールに誘われて、セレスティアル伯爵家へ泊まることになった。

 アルパインとイェーナはそれぞれの実家に帰った。

 俺は夕方前だし、そのまま王城に帰るつもりだったが、ヘリオトロープ公爵一家からお泊まりの提案をされた。

 ウィステリアと婚約しているとはいえ、結婚前に泊まっていいものだろうかと固まった俺はヘリオトロープ公爵夫妻とヴァイナスに苦笑されてしまった。俺の隣で、ウィステリアも固まっている。


「殿下は真面目ですね。グラナートは結婚前から何度もシエナの実家に泊まってましたよ」


「父と一緒にされると、とても嫌なのですが……」


 ヘリオトロープ公爵から苦笑され、俺がそう返すと更に苦笑が深くなる。


「結婚前とはいえ、グラナートとは違い、殿下はウィスティの嫌がることを何もしない、ちゃんと弁えていらっしゃると私達が分かっているのでお誘いしたのですよ。どうですか? お疲れでしょうし、我が家にお越し下さいませんか?」


「……お言葉に甘えさせて頂きます」


 教養の師匠とその家族からお墨付きを貰い、ウィステリアに対して安全な人認定されているようで、男として何だか腑に落ちないが、婚約者の実家へ初のお泊まりになった。







 ヘリオトロープ公爵一家の馬車に何故か乗ることになった。てっきり、一人の馬車かと思っていたのだが、違ったらしい。

 ヘリオトロープ公爵家の馬車は王家の馬車と比べると一回り小さい。

 それでも公爵一家と俺が乗ってもまだ余裕がある。

 装飾も落ち着いていて、ヘリオトロープ公爵らしい優雅さがある。

 馬車の中では対面にヘリオトロープ公爵夫妻、左にウィステリア、右にヴァイナス、何故か真ん中が俺になった。もちろん、俺の右肩には俺の精神安定剤の紅が乗っている。

 しかし、本当に何故?!

 左のウィステリアは俺の婚約者だから分かるが、右の義理の兄になる予定の人は何で?!

 そこは空気を読んで向かい側じゃないのか!?


「申し訳ございません、殿下。ヴァイナスは殿下が義理の弟になるのが楽しみのようで……」


 再び、苦笑されながらヘリオトロープ公爵から説明される。


「……妹もとても大事なのですが、幼い頃からセヴィを見てたら、羨ましくて、殿下のような弟が欲しかったので……」


 赤くなりながら、ヴァイナスが小さく呟く。

 今までのヴァイナスの行動を思い出して、納得した。粗探しではなく、俺をどうにか可愛がろうとしたかったようだ。

 分かり辛い。早く言って欲しかった。

 やっぱりツンデレじゃないか。

 滅茶苦茶、警戒したじゃないか。


「あ、いえ……。私は大丈夫です。その、結婚後も含めて、皆さんとは良好な関係を築きたいと思っていたので……」


 珍しくしどろもどろになって言ってしまった。

 ハイドレンジアとシャモアの結婚式前に初めて泣いてしまった反動なのか、落ち着かないし、上手く言葉が纏まらない。

 我ながら、引き摺りが酷い。


「では、殿下のこと、セヴィのようにヴァルとお呼びしても宜しいですか?」


 義理の兄になる予定の人がぶっ込んできた。距離感がいきなり近過ぎない?!


「あ、はい、構いませんが……」


 拒否する理由がないので、頷く。


「あら、でしたら、わたくしもお呼びしても?」


「大丈夫、です。公爵もどうぞ良かったら」


 ずいっと身を乗り出し、アザリアさんからも聞かれ、気圧されながらも頷いた。横でヘリオトロープ公爵が目を輝かせている。そういうところはウィステリアに似ているなと感じる。


「ありがとうございます。グラナートやシエナのように、ヴァルと呼べる日は結婚してからかと思っていましたが、早く呼べるようになって嬉しいですね。ウェルドとセレストにも自慢出来ますね」


「シュヴァインフルト伯爵やセレスティアル伯爵を誂うのは程々にしてあげて下さい……」


 満面の笑みで喜ぶヘリオトロープ公爵を窘めつつ、俺は左に座るウィステリアを見る。

 俺やヘリオトロープ公爵一家の遣り取りを見て、にこにこと笑っている。


「ウィスティ?」


「こういうの、一家団欒みたいでとても良いですね」


 口元に両手を当てて、嬉しそうにウィステリアは笑う。可愛いなぁ。


「そうだね」


 俺も笑みを浮かべると、微笑ましい表情でヘリオトロープ公爵夫妻がこちらを見ていた。






 ヘリオトロープ公爵領の公爵家の本邸に着いた。

 俺も泊まらせてもらう連絡が入っていたのか、本邸で働く使用人の人達がずらりと玄関に並んでいた。

 王都の邸宅以上の人数の使用人達で、流石、王国貴族筆頭のヘリオトロープ公爵家だと感じる。

 馬車からヘリオトロープ公爵、アザリアさん、ヴァイナス、ウィステリア、最後に俺という順で降りる。

 俺が馬車から降りた途端、王都の邸宅でも起きたヘリオトロープ公爵家の使用人の、特に侍女やメイドから息を飲む声が聞こえた。悲鳴がないだけでも本当に凄い。息を飲む声くらいなら許容範囲内だ。

 流石、ヘリオトロープ公爵家。使用人の教育が本当に行き届いている。

 ヘリオトロープ公爵一家に案内されて、初めて入るヘリオトロープ公爵家の本邸に、顔には出さないが緊張しつつ、玄関へと足を踏み入れる。

 ヘリオトロープ公爵の人柄なのか、落ち着いた色合い、内装でホッとする。

 あまり他の貴族の邸宅を知らないが、フォッグ伯爵邸はどんよりと暗く、壁は黒系で、召喚獣より悪魔を集めてますの方がしっくり来る内装だったのを思い出した。

 それと比べたらいけないが、ヘリオトロープ公爵家の本邸は俺の好みにも合っていて、安心する。

 将来、田舎の領地に引っ込む時の邸宅はこんな感じの内装がいいなと思う。もちろん、ウィステリアと話し合った上で決めるつもりだが。


「殿下、泊まって頂くお部屋、ご用意出来てますから、ご案内致しますね」


 ヘリオトロープ公爵に言われて、俺はつい見上げてしまった。


「お名前を呼ぶのはもちろん、使用人達がいない時ですよ。一応、私が子供の頃から父に仕えている家令もそのまま私の元で働いていますので、そういうところが厳しいので、今でも怒られますから」


 片目を瞑り、ヘリオトロープ公爵が笑う。


「ヴァル様、夕食の時にお会いしましょうね」


 ウィステリアが笑顔で告げる。俺が泊まるのが嬉しいみたいだ。俺もです。

 アザリアさんやヴァイナス、ウィステリアとはここで別れることになった。

 俺が泊まる部屋まで、ヘリオトロープ公爵が案内してくれる。その間も、調度品の簡単な説明や何処に何がある、誰の部屋がある等を教えてくれる。

 俺が泊まる部屋は左隣がウィステリアの部屋で、反対の右隣はヴァイナスの部屋のようだ。馬車と同じで俺が泊まる部屋は二人の部屋に挟まれている。

 少し、離れたところにヘリオトロープ公爵夫妻の部屋があるそうだ。

 お客さんではなく、家族の空間に入っていいのだろうかと、少し不安になる。

 婚約しているし、結婚するとはいえ、今、家族として輪に入ってもいいのだろうかと考えてしまう。

 昼前にミモザから言われた、大事にし過ぎて硝子に触れるような触り方はよくないという言葉を思い出す。

 そういうことなのだろうか。

 深く考えるより、先に伝えないといけないことがあるので、泊まる部屋にヘリオトロープ公爵が入り、俺が入ってすぐ、扉を閉め、口を開いた。防音の結界も同時に張る。


「ヘリオトロープ公爵。少し、話があります」


「どうしました? ヴァル?」


 将来の義理の父が愛称を呼んでくれて、ホッとする自分がいる。

 そのことは一旦置いて、ヘリオトロープ公爵を見る。


「ハイドレンジアとシャモアの結婚式が終わり、このヘリオトロープ公爵領の本邸に着くまで、魔力感知を発動させていたのですが、公爵の影とは別に、一人、付いて来ている者がいますが、心当たりはありますか?」


 ヘリオトロープ公爵の目が驚きで見開く。


「いえ。私の影であれば数人、常に行動を共にさせていますが、今のところ報告はありませんね。ヴァル、それは一人で間違いありませんか?」


「はい。一定の距離を空けて、ずっと付いて来ていました。私を狙っているのか、ヘリオトロープ公爵を狙っているのか、私の婚約者であるウィスティを狙っているのか、ヴァイナスや夫人なのか、それは分かりませんが……」


「そうですか。今のところは泳がせておくのがいいでしょうね。しかし、ヴァルの魔力感知は素晴らしい性能ですね。私の影がまだ把握出来ていないのに、もう貴方は把握している。本当に、将来が楽しみですよ」


「将来も何も、王位継承権を放棄して、ウィスティとのんびり田舎の領地経営ですから、活躍の予定はありませんよ」


 交易で少し驚かせるかもしれないが、それも始めの時だけだ。交易に上級ポーションや結婚式で使った空色の薔薇や緑色の薔薇等、色とりどりの薔薇を出すつもりだ。あとは、領地の特化したもの次第で増やす予定だ。


「どうでしょうか。そこに関してはあまり信じてないですね……。ヴァルなら何かやらかしそうです」


「それは……やらかさないとは言い切れないですが……」


 今までのことがあるので、確かにそんなことはないとは自分でも言えない。

 息を吐いたちょうどその時、扉を叩く音がして振り返ると、扉が開いた。


「父上、ヴァ、ヴァル。父上の影から一人、侵入者が本邸内に侵入したと報告が……」


 ちょっと照れながら、ヴァイナスがヘリオトロープ公爵と俺の愛称を呼ぶ。


「やっとか。ヴァルは素晴らしいな」


 ヘリオトロープ公爵が溜め息を吐きつつも、俺に対しては自慢気に呟く。誰に対して自慢気にしているんだ。


「父上、ヴァルが素晴らしいとは?」


「先に気付いていらしてたんだよ、ヴァルは」


「そうなのですか?」


 驚いた顔をしつつ、ヴァイナスは俺に近付いた。

 ヘリオトロープ公爵、ウィステリアと同じ藍色の目が優しく細められ、ヴァイナスは俺の頭を撫でた。

 驚いて思わず、身体が固まる。


「凄いですね、ヴァルは」


「あ、ありがとう、ございます……」


 顔を赤くしながら、ヴァイナスを見ることが出来ず、斜め下を見てしまう。

 それを見ていたヘリオトロープ公爵が小さく笑う。


「そういう照れてるところはシエナにそっくりですね、ヴァルは」


「そう言うと思いました……」


 まだ顔が赤いのを感じながら、小さく息を吐く。

 今日は、皆の甘やかしが凄い。

 俺が初めて泣いた話をハイドレンジアとミモザから聞いたのだろうか……。

 それはそれで主君の名誉のため、言わないで欲しい。言ったかどうかは分からないが。

 ただ、タイミングは合っているので、可能性が高い。それか見られたか、聞かれたか。

 とりあえず、俺から墓穴を掘るわけにはいかないので、話を戻す。


「公爵、それで、その侵入者ですが、泳がせた後はどうするのですか?」


「そうですね。捕らえるのはもちろん、誰を狙っているか次第ですが、裏で誰がいるかを調べたりとかですね。特に変わったことはしませんよ」


 まぁ、そうだよね。通常の内容だよね。

 何か、変わったことをするのなら、ヘリオトロープ公爵家に任せようと思ったが、問題なさそうなので、ちょっと提案してみた。


「でしたら、捕らえるのは私にさせて頂けませんか?」


「え? ヴァル、どうしてです?」


「実は、クラウ・ソラスが実戦で使って欲しいと言っていまして……」


 言いながら、腰に佩いている鋼の剣の柄に触れる。もちろん、これは擬態した蘇芳だ。

 ずっと使うタイミングがなく、蘇芳から散々お願いされていた。侵入者の力量次第だが、一回戦えば蘇芳も少しは満足するはずだ。


「そうですよね、五百年も使い手がいなかったのですし、装飾としても綺麗な剣ですが、元々は武器ですからね」


「父上からヴァルが光の剣クラウ・ソラスの使い手になったと聞きましたが、今、お持ちなのですか?」


「呼べば来ますが、今回は鋼の剣に擬態してもらってます」


「擬態、ですか?」


 驚きながら、俺の腰に佩いている鋼の剣をヴァイナスは見つめる。


「クラウ・ソラスの機能の一つだそうです。公の場以外や潜入したりする時に、クラウ・ソラスを持ってたら使い手とすぐ分かってしまうので、擬態出来るようにしたそうです」


「成程。機能の一つ、ということは他にもあるのですか?」


 興味津々にヴァイナスが聞いてくる。


「あとは、魔物や魔獣を浄化したり……他はまだ聞けていません」


 俺の魔力で人型になる、というのは言っていいものか分からないので言葉を濁した。


「そうですか。また色々教えて下さい」


 そう言いながら、ヴァイナスが俺の頭を撫でた。

 この将来の義理のお兄さん、距離感近くないか?

 ちらりと将来の義理の父を見たら、普通の様子だった。

 ヘリオトロープ公爵家はこの距離感が通常運転のようだ。ウィステリアが家族の愛情たっぷりに、のびのび育ったのが分かる。

 彼女がとても優しいのはもちろん、本人の性格もあるが、ヘリオトロープ公爵家が温かいからだろうなと思う。


「そ、そういうことですので、私が捕らえてもいいですか?」


「もちろん、構いませんよ。ただ、ウェルドから鍛えられていらっしゃるとはいえ、怪我はしないで下さいね」


「分かりました。気を付けます。捕らえた後は私が尋問しようと思います」


 俺が笑顔で伝えたら、二人がギョッとした。


「私も同席します」


 ヘリオトロープ公爵が言うと、


「私も同席しますよ、ヴァル」


 ヴァイナスも同意し、頭をまた撫でてくる。

 兄と同じく、将来の義理の兄は頭を撫でるのが好きなのだろうか。ウィステリアにもしているのだろうか。

 少し気になるが、聞くと違う扉を開きそうなので黙っていると、ウィステリアが夕食の準備が出来たことを伝えに来てくれた。







 ヘリオトロープ公爵一家との夕食を終えた俺は、ウィステリアと共に部屋へ向かう。

 ヘリオトロープ公爵一家との夕食はとても楽しくて、温かかった。

 王城では両親と兄と共に食事をする機会があまりない。

 子供の頃は毎日、二日に一回、三日に一回、五日に一回、週に一回、隔週に一回、月に一回……と間隔は延びていき、今は二ヶ月に一回あるといいくらいだ。

 仕事をしたがらないが、父も国王なので緊急の案件が入ったり、兄も王太子になってからは貴族のパーティの出席頻度が増え、昨年結婚してからは王太子妃の義姉と食事をすることが増え、家族全員と食事が減った。

 唯一、あるとしたら、母と食事をするくらいだ。その母も社交界で忙しかったりするので、月に一、二回食事をするくらいだ。母としては毎日したいようだが。

 王家は特殊かもしれないが、家庭によって違うものなんだなと感じる。

 まだ先だが、ウィステリアとどのような家庭を作るのかを二人で話していこうと思う。悲しいことにまだ先だが。


「何だか、ヴァル様と夜も一緒にいるというのも不思議な感じがします」


「パーティでは夜も一緒だけど、それはカウントされないの?」


「う……そ、そうなのですが、そうではなく、その、私の家に夜もヴァル様がいらっしゃるのが不思議な感じがするんです……」


 顔を赤くしながら、ウィステリアが左右の人差し指を絡ませる。


「長くいても夕方までだったし、本邸ではなく、王都の邸宅だったから余計にねぇ……。流石に婚約しているとはいえ、結婚するまではお互い色々と気を付けないといけないからね」


 ヘリオトロープ公爵夫妻のお墨付きがなければ、婚約者の家に泊まるなんてことはなかった。

 お互い気を付けないといけないので、まだキスも出来ていない。額や頬にキスはあるが、口付けはまだだ。思春期真っ只中の俺としては、非常に辛い。

 王家と公爵家なので体面は分かるが、他の爵位同士の貴族の婚約者達は結婚前にやらかしてるヤツもいると思うのは俺だけではないと思う。

 引き合いに出したくないが、俺の両親は結婚前でも口付けしていたそうだ。

 ちなみに、この情報は十二歳の時に母が照れながら言っていた。息子としてはそんな話を母の口から聞きたくはなかった。するとしても、もう少し大人になってから言って欲しかった。まぁ、精神年齢は当時の時点で三十歳を越えていたので、心の中は微風でしたが。


「そうですね。でも、私、嬉しいんです。私の家族がヴァル様を家族として接してくれたのが、とても嬉しいです」


「それは、俺も嬉しかったよ。ヘリオトロープ公爵家は温かいね」


 素直に言ったら、ウィステリアはとても嬉しそうに微笑んだ。やっぱり可愛いなぁ。


「俺達も結婚したら、温かい家庭を作ろうね」


「はい」


「おやすみ、リア」


「おやすみなさい、リオン様」


 お互い笑い合い、それぞれの部屋に入った。

 扉を開け、部屋に入った後、俺は閉めた扉に縋りながら、ずるずると滑って溜め息を吐いた。


『どうした、リオン?』


 泊まらせてもらっている部屋で待っていてくれた紅が不思議そうな声で俺に尋ねる。


「いや、健全だよなと思って……」


 結婚するまで不埒はしない、嫌がることはしないと決めているが、揺らぎそうになった。

 お泊まり怖い。

 夜の、パーティーとは違う装いのウィステリアの可愛さに何とか耐えたが、今は初夏なのに俺の心は春色に荒れていた。

 ポーカーフェイスが出来て良かった。

 身に着けていなかったら大変なことになっていた。


『……リオンもお年頃だからな。我から見ても、リオンは頑張っていると思うぞ』


 俺と深いところで繋がっているからか、何となく分かったらしい紅が慰めてくれる。


「ありがとう。紅は本当に優しいよ。友人で家族だよ」


 紅に抱き着き、綺麗な紅色の羽根を撫でる。


『ちょっと、リオン。私もいるんですけどー? 私のことは撫でてくれないのー?』


 蘇芳が紅に嫉妬して不満を俺にぶつける。


「いや、撫でたら、剣だから痛いじゃないか」


『剣でも鞘の上から撫でられるじゃん。でも、そこまで言うなら、この姿なら撫でてくれるってことだよねー?』


 鋼の剣から人型の少年の姿になり、蘇芳が上目遣いで言う。


「そこで、大人の姿ではなく、少年の姿というのがあざといよね、蘇芳」


 じとっとした目で見ると、蘇芳がうっと呻く。


『うっ、だって、絵的にはリオンと少年の方がお似合いじゃん。絶対リアちゃんも言ってくれると思うよ?』


「そうなると、確実に俺は犯罪者だぞ」


 おまわりさん、この人です。

 そう言われても弁解出来る自信がない。


『大丈夫。私とリオンと紅しかいないし』


「……蘇芳、知ってるか? 俺や紅、蘇芳しかいないからって、少年の姿の蘇芳の頭を撫でてると、蘇芳とかの事情を知ってるリアじゃなくて、ヘリオトロープ公爵やアザリアさん、ヴァイナス達に見つかって、俺がヤバイ人って言われたりするんだぞ」


 俺の前世の小説や漫画等でもよくあった。

 折角の友好的なウィステリアの家族から、変な目で見られるのは俺としては避けたい。折角、愛称で呼んでくれるようになったのに。


『ぐ……じゃあ、譲歩だ。リオン、鞘の上から撫でて! 紅は撫でて、私は撫でないのは不公平だ!』


 面倒臭いな、王国の至宝。

 この拗らせ具合はどうしてそうなった。

 とりあえず、色々と面倒臭いので、蘇芳の譲歩に乗ることにして、鋼の剣の擬態を解いた光の剣クラウ・ソラスを腰から外して、その黒い艶のある鞘をそっと撫でた。撫でてみると、鞘にうっすらと紋様が彫られていることに気付く。

 紋様をじっくり見てみると、炎の紋様と鳥の紋様が彫られていた。鳥は、王国と王家の象徴のフェニックスのように思える。炎の紋様は王家の色が赤なのと、王族のほとんどが火の属性が多いからなのだろうか。

 気になりつつも、今は触れないようにした。

 というのも、侵入者がこちらの様子を窺っているようなのだ。

 魔力感知で確認すると、俺が泊まらせてもらっている部屋か、ウィステリアの部屋を窺っているようだ。


「そろそろ、寝る振りをしようか。相手は俺かリアを狙っているようだし」


『その方がいいみたいだね。でも、もし、狙っているのがリオンじゃなくて、リアちゃんだったらどうするの?』


「そりゃあ、俺が捕らえて、リアを狙った理由を吐かせるまでだけど?」


『ああ、愚問だったね。ごめん。にしても、良い笑顔だね、怖いよ。リオン……』


 笑顔で答えたのが怖かったようで、蘇芳が少し怯えた声を出す。


「ごめん、ごめん。とりあえず、寝る振りをしよう。灯りを消して、ベッドで様子見だね」


 クラウ・ソラスの鞘を優しく撫で、部屋の灯りを消して、ベッドに入る。

 王城の俺の寝室でいつもしているように、紅が枕元に座り、目を閉じる。

 俺は敢えて寝衣には着替えず、デュベの中に潜る。

 魔力感知を発動させながら、目を閉じる。

 魔力感知で確認すると隣の部屋のウィステリアの魔力が動いていないので、恐らく寝たのだろう。

 侵入者がいなかったら、話したりしたかったのになぁ。

 溜め息を吐きながら、外の動きを魔力感知で追う。いつもより、範囲を広げようとすると外の侵入者に動きがあった。


『動いたな、リオン』


 紅が念話で呟く。すぐ気付くとは流石、紅。


「そうだね。しかも、俺のところじゃなくて、リアか」


 溜め息を吐いて、侵入者に気付かれないように音を立てないようにデュベから出て、クラウ・ソラスの鞘を取ってベッドを降りる。


『おっ、リオン。行っちゃう?』


「そうだね。リアの部屋のバルコニーにそろそろ来るだろうし、中に入る前に捕らえないとね」


 ちょうど、侵入者はバルコニーに着いたところだった。

 ゆっくり窓を、音を立てないように開け、俺はウィステリアの部屋のバルコニーに近付く。

 侵入者がウィステリアの部屋の窓に手を掛ける前に、相手の手を蹴り上げる。

 相手は驚いて、俺から離れようとバルコニーから降りる。

 俺もバルコニーから降り、クラウ・ソラスを鞘から抜く。使い手の俺が握ったことで刀身がうっすらと鴇色に輝く。

 侵入者も短剣を腰から抜き、構える。


『お。あちらもやる気じゃん。リオン、私は擬態しなくていいの?』


 俺にしか聞こえないように念話で、蘇芳が問い掛ける。


『しなくていいよ。クラウ・ソラスのままでやろう』


 侵入者が先に動く。無駄のない動きで短剣を俺に向かって、突き出す。

 俺はクラウ・ソラスで跳ね返すと、侵入者は勢い良く飛び、後ろの木に当たる。


「軽っ。そんなに力入れてないのにあんなに飛ぶのか?」


『あー……ごめん。言い忘れてた。私の使い手が使うとクラウ・ソラスは軽くなり、力や素早さとか諸々の能力が上がるんだ。使い手以外は逆に能力が下がるし、重くなる。ちなみに、使い手は魔力も上がるし、傷もすぐ治るからね』


「凄いね。誰もが欲しがるわけだ」


『まぁね。だから、使い手を選ぶんだけどね。ヴァーミリオンは私を悪用しないだろ?』


「する気はないね。確かに」


 クラウ・ソラスを握ったまま、俺は飛ばされたまま動かない侵入者の元へ行く。

 倒れたまま、動かないが息がある。気絶しているのを確認して、俺は青藍を呼ぶ。


「青藍」


『お呼びですか? ヴァーミリオン様』


 場にそぐわない笑顔で青藍が俺に聞く。


「うん。ヘリオトロープ公爵家に侵入者が来てね。この人なんだけど、薔薇の蔓で拘束してくれる?」


『分かりました。棘、いります?』


 俺と深いところで繋がっている召喚獣なので、状況を知っている彼はそんなことを聞いてくる。


「棘があると、逆に拘束を解きそうだから、なしで」


 青藍は頷いて、薔薇の蔓を動かし、気絶している侵入者を拘束する。

 クラウ・ソラスを鞘に戻し、侵入者を連れて行こうとすると、青藍に止められた。


『ヴァーミリオン様に何かあってはいけないので、私が運びますよ』


 優しく笑みを浮かべて、青藍はひょいと侵入者を持ち上げた。

 俺と同じ細身なのに、軽々持ち上げる青藍を見て、こんな感じに俺も見られてるんだろうなと感じる。

 侵入者を持ち上げたままの青藍と俺は、泊まらせてもらっている部屋のバルコニーへ風の魔法を使って飛ぶ。

 バルコニーに着地して、部屋の中に入る。

 青藍に拘束したままの侵入者を見張ってもらっている間に、俺はヘリオトロープ公爵とヴァイナスを呼ぶ。


「……仕事が早くありませんか、ヴァル。もう侵入者を捕まえたって……」


 苦笑しながら、ヘリオトロープ公爵が言う。

 あのまま無視してたら、ウィステリアが何をされるか分からない。王都の邸宅はあるが、俺もまだ入ったことがないのに、本邸のウィステリアの部屋に侵入者が先に入るのは許したくない。


『通常運転だな、リオン……』


 呆れ声で紅が念話で呟く。


「とりあえず、今は拘束して私の部屋にいます。尋問、しますか?」


「そうですね。私の大事な娘のウィスティを狙ったのは許せませんからね。しっかり吐いて頂かないと」


 ヘリオトロープ公爵が怒っている。隣でヴァイナスも勢い良く頷いている。俺も同意だ。

 俺の泊まらせてもらっている部屋に入り、床に、寝かせている侵入者を見る。

 布で顔を隠しており、青藍がその布を剥ぎ取る。

 布を取ると、黒紅色の髪と、まだ幼さが残る俺と同じ年頃の青年が露わになる。

 整った顔なのだが、栄養が足らないのか、頬が痩けている。

 顔を見て、俺は違和感を感じていると、紅も右肩に止まり、じっと侵入者を見つめている。


『リオン、気付いたか?』


『そうだね。とりあえず、話を聞いてみてから、ヘリオトロープ公爵達に言うか決めよう』


 紅と念話で話していると、青藍も気付いているようで俺を見て頷いている。

 気絶している侵入者に俺は近付き、魔法で起こす。ヘリオトロープ公爵とヴァイナスの元に戻り、侵入者の様子を窺う。

 意識を取り戻した侵入者が目を開ける。俺の髪の色に紫色が混ざったような、中紅色の目をした青年がこちらを見るが、焦点が合わない。


「侵入者の君に聞きたいのだけど、私の婚約者を狙った理由を教えてくれないか?」


「……あの方がお願いしてきたからしただけだ」


 単刀直入に聞いてみたら、いきなり答えてくれた。尋問されていると気付いているのだろうか。


「あの方? あの方って誰だ?」


「……あの方だ。あの方がお願いしてきたからしただけだ!」


 同じことを繰り返し、侵入者は焦点の合わない目で呟いている。


「話が噛み合いませんね」


 ヴァイナスが眉間に皺を寄せている。


「ヘリオトロープ公爵。彼は魅了魔法に掛かっているようなので、解除してから尋問してもいいですか?」


「えっ、魅了魔法ですか?!」


 ヘリオトロープ公爵が驚いた声で俺に問う。


「はい。魔力感知で気付いたのですが、フィエスタ魔法学園で編入生が生徒達に掛けた時の反応と同じです」


 魔力感知で気付いたのが、魅了魔法に掛かると掛かった人は自分の属性の周りに桃色が覆われた反応が出る。目の前の侵入者の彼も、紫色の周りに桃色が覆われていた。紫色ということは侵入者は闇属性のようだ。


「そうですか……。このままだと、話が進まないので解除をお願いしても宜しいですか?」


「分かりました」


 頷いて、俺は侵入者に再度、近付く。

 フィエスタ魔法学園の教室で、魔法付与した魔石を置くまでいつも行っていた魅了解除の魔法を侵入者に掛ける。


「う……あ……」


 長い時間魅了魔法を掛けられていたのか、侵入者は苦しそうに呻く。

 五分位苦しそうにしていたが、解除されたのか、侵入者はしっかりとした目で俺を見た。先程とは違い、焦点が合う。


「……あの、ヴァーミリオン王子、ですか?」


 いきなり、名を問われ、少し戸惑っていると、ヴァイナスが警戒して俺の前に立つ。

 ヴァイナスの肩を軽く叩き、俺の隣に移動してもらう。


「そうだけど、まずは君の名前を聞いていいかな?」


「あ、すみません。アイス・レドと言います。助けて下さって、ありがとうございます」


 先程の様子と打って変わって、侵入者――アイスは俺にお礼の言葉を述べる。

 拘束されているのに、お礼、というのも何だかシュールだ。


「助けたつもりはないのだが……。アイス、だっけ? 君は何故、ヘリオトロープ公爵家の令嬢である私の婚約者を狙った?」


「あいつからヘリオトロープ公爵令嬢の命を狙えと言われました」


 少し眉を寄せて、アイスは素直に答えた。


「あいつ? チェルシー・ダフニーか?」


「そうです」


 アイスが頷くと、ヘリオトロープ公爵が息を飲む。


「そうか。アイスは魅了魔法をいつからチェルシーに使われていたか分かるか?」


「子供の時からです。八歳の頃、あいつが隣に引っ越してきて、隣同士というのもあって仲良くなった幼馴染みですが、しばらくしてすぐ、実験と言って俺に魅了魔法を掛けてきました」


「実験?」


「はい。俺は平民ですが、生まれつき、魔力が高くて、魔力が高くても魅了魔法が効くのか実験すると言って、掛けてきました。魔力が高い影響でしばらくすると魅了魔法の効果が切れ、自分の意志で自由に動けるようになるのですが、逃げようとすると近所の魅了魔法に掛かった住民に捕まり、母を人質に取られてしまい、また魅了魔法を掛けられるのを繰り返されて……。ヴァーミリオン王子のお陰で、助かりました。ありがとうございます」


 拘束されているのに、アイスは本当に感謝の言葉を言う。


「君のお母さんは無事なのか?」


「先程、あいつに公爵令嬢の命を狙えと言われるまでは大丈夫でした。自分の手は染めない性格なので、俺が成功したか確認するまでは危害を加えたりはしないと思います。なので、ヴァーミリオン王子、俺を処刑して下さい」


「何故、処刑の話になる?」


「俺は、ヴァーミリオン王子の婚約者を、貴族の公爵令嬢の命を狙いました。ただの平民が高貴な方の命を狙ったのです。処刑されてもおかしくありません。ですが、どうか、母だけは助けて頂けないでしょうか?」


 拘束されたまま、床に転がされているアイスは俺を静かに見上げて言う。


「そうか。シルフィード」


『お呼びでしょうか? マスター』


 いつもの姿ではなく、大人サイズの次期風の精霊王然とした萌黄が現れ、俺に微笑む。


「彼の母親が無事か確認してもらえる? 確認したら、あとでこちらに連れて来て欲しい」


『分かりました。すぐ確認しますわ』


 そう言って、萌黄は風と共に消える。


「ヴァーミリオン王子、あの……?」


「今の話の中で、嘘は見られなかったからね。君のお母さんが人質に取られているのなら、助けておきたい。不服だったか?」


 それにどうやら、アイスは幼馴染みのヒロインに対して好意を持っていない。

 ずっと魅了魔法を掛けて、自由を制限され、母親を人質に取るのだから、好意はないのは当然だと思う。


「い、いえ。確かに、俺は母だけは助けて頂けないかと言いましたが、今助けて下さるとは思っていなくて……」


「君が、自分の意志で私の婚約者を狙ったのなら、助けるつもりはなかった。しかし、君は自分の意志を制限され、自由を制限され、母親を人質に取られた上で狙った。それに未遂だ。私は処刑する気もない」


「それでは、示しがつきません。王家の方が、平民を許すなんて。そんなことをしたら、貴方のお命や公爵令嬢のお命を狙う者が増えます」


「君を処刑にしたとしても、私の命や公爵令嬢の命を狙う者はいるし、減らない。それに、処刑するより、若く、優秀な人材を失う方が損失だと私は思う」


 俺の言葉に中紅色の目が一瞬、揺れる。


「俺は、平民です。学もありませんし、優秀ではありません」


「そうか? 優秀な影がたくさんいて、警備も厚いヘリオトロープ公爵家の本邸に一人で侵入者して来た君は優秀ではない? 魔力も私には及ばないが、宮廷魔術師並みの魔力を持っているのに? 正直、私が通う魔法学園の伯爵くらいの子息子女より魔力が高い。それと、君は知らないかもしれないが、魅了魔法は自力で解除は難しい。効果が切れたと君は言うが、普通は切れない。重ね掛けをして効果を上げることはあるが、切れることはない。掛かればずっとだ。君の近所の住民はそうではなかった?」


「確かに、俺のように効果が切れたという人はいませんでした……」


「君は魅了魔法に耐性がある。耐性がある君なら、私の部下に欲しいね」


 俺が微笑むと、アイスは考えるように俯く。


「……殿下。陛下からまた部下を増やして、とお小言を貰いますよ」


 呆れたようにヘリオトロープ公爵が呟くが、顔は笑っている。


「陛下のお小言なら、何処吹く風ですよ。いつも言われているのは陛下ですし。逆の立場になりたいだけですよ」


 肩を竦めて、俺はヘリオトロープ公爵に言う。


「まぁ、でも、アイス。君に選択肢だ。このまま、私の婚約者の命を狙ったとして処刑されるか、私の部下になるか。ただし、私の部下になるなら、名前を変えてもらう。生まれて親から初めて貰うプレゼントが名前だが、それを変える覚悟があるか。それも踏まえて決めろ。君はどうしたい?」


「……実は、俺は、一度、ヴァーミリオン王子に母と共に命を助けられたことがあります」


 静かな意志を持った中紅色の目で、アイスは俺を見上げる。


「魔力が高いことで八歳の時に貴族のセラドン侯爵に見つかり、捕まりました。母を人質に取り、俺を暗殺者として育てようとしていたようですが、すぐにヴァーミリオン王子が侯爵を捕らえて下さったお陰で、証拠隠滅のつもりか、侯爵の息子によって母と共に解放されました。その後、すぐにあいつが引っ越して来て、散々な目に遭いましたが」


「君も、セラドン侯爵の被害者か」


 まさか、ハイドレンジアやミモザ以外にも被害者がいるとは思わなかった。ゲームのシナリオしか知らなかったとはいえ、もう少し、もっと調べておけば良かった。


「なので、いつか、母と共に助けて下さったことのお礼と、ご恩を返したいと思っていました。それが、今なら、俺は名前を変えて、貴方の部下になります」


 アイスの意志の強い目を見て、俺は自然と笑みを浮かべる。

 俺は青藍に目配せして、アイスを拘束している薔薇の蔓を解いてもらう。


「分かった。これから宜しく、アイス」


 手を差し伸べて、アイスを立ち上がらせると、彼は慌てて、臣下の礼を取る。


「さぁ、新しい名前を決めようか」


「でしたら、殿下。提案があるのですが、宜しいですか?」


「何でしょう、公爵?」


「私の縁戚にグリーシァン子爵家があるのですが、三男として彼を養子にするのはどうでしょう? 見たところ、平民ではありますが、所作や言葉遣いは平民より貴族に近いものを感じます」


「成程。確かに、所作や言葉遣いは平民より貴族に近いですね。魔力も高いですし、魔法学園にも通って貰うつもりでいたので、そうしましょう。しかし、いいのですか? 公爵の縁戚筋に養子というのを勝手に決めても」


 それに、魅了魔法でとはいえ、ウィステリアを狙った者を縁戚筋の養子にと提案してくれるとは思っていなかった。


「構いません。知られていませんが、グリーシァン子爵家というのは私のもう一つの爵位なので。ヘリオトロープ公爵領の中にあるので、領地がない代わりに代理で領地経営を頼んでいるという体の爵位なのですよ。なので、問題ありません。それに、娘の命を狙ったのは彼ではなく、魅了魔法で命令した者です。彼は殿下を裏切らないと思いますし」


 静かに笑みを浮かべ、ヘリオトロープ公爵は言う。隣で、ヴァイナスも頷いている。


「しかし、平民だったとボロが出てもいけませんので、しっかり貴族としてのルールやマナー等叩き込むつもりですよ」


「あ、それと、栄養もしっかり摂って貰いますよ」


 ヘリオトロープ公爵の言葉に同意するように、ヴァイナスが躊躇うことなく、アイスの痩せている身体を見ながら言う。






 そして、アイスは次の日からグレイ・ブリュトン・グリーシァンと名乗ることになる。

 彼の母も無事を確認し、親子でヘリオトロープ公爵家の王都の邸宅にある二つ目の別邸に住むことになった。

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