【16】大脱走

 なんなんですかあの人は。ムカつくムカつくムカつく。何も知らない癖にあんなことを言うなんて。先輩の悪口を言っていいのはこの世で私だけという法律を知らないんでしょうか。引っぱたけばよかった。戻ろうかしら、いいえやめておきましょう。


 大体先輩が鼻の下伸ばしてるからいけないんだ。次会った時に指摘してやるんだから。


 この誓いを揺るぎないものにするため奴の顔を拝んでおこうと、帰りがけに三階へ立ち寄り大部屋を覗きました。


 しかし中に先輩の姿がありません。隣にいた男の人もです。席を外しているようでしたので、戻って来る際に鉢合わせたらまずいなと撤退を決めたその時でした。


 空席の向かい側にいる女生徒と目が合ったのです。しかもあれは、さっきも見たクラスメイトの失礼な方!


 こちらへ向かって来たので私は大慌てで逃げ出しました。


 あわわわ、珍虫標本に貼りつけられるわけにはいきません! そもそもどうしてここにいるの!


 お店が見えなくなるまでがむしゃらに走り、一度呼吸を整えようとしましたが、


「おーい!」


 こちらへ迫り来るオタクに優しいギャルが。氷の人形みたいな人も一緒です。


 あまりの衝撃に心臓が止まりかけ、錯乱した私は殺されると直感し再び走り出しました。


 神様お願いしますもう覗きなんて二度としないと誓うので、どうか、どうか私をお助けください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る