第5話 突然のお泊まり
お祭りの前日ということもあり、予想通り店内は混雑していた。
マリーはその忙しさのおかげでキャサリンのことを考えずにいられた。
最後の客が帰る頃にはもう日付が変わろうとしていた。
「まさかこんな時間になっちまうとはね。すまないね二人とも。二人を先に帰すべきだったね。マリーは特に女の子だし親も心配するだろ」
マチルダが申し訳なさそうに二人に謝罪した。
「大丈夫……かな。お父様も私に対しては結構放任主義だから」
「僕も大丈夫ですよ。今日は遅くなるって言ってありますし」
「そうかい? それなら良かったけど……。私は家に帰るけど二人はもう遅いから泊まっていきな。二階はもともと人に貸してたから一通りの物は揃ってるよ。部屋も二つあるしね」
マチルダがそう提案すると、ネイサンは別々の部屋とはいえ女の子と二人で一夜を過ごすことに動揺した。
「ぼ、僕はいいですよ。帰れますから」
「なんで? お言葉に甘えようよ。私は泊まらせてもらうよ」
「あんたマリーを一人にするのかい? それこそ何かあったらどうするんだい」
マリーもマチルダも男女が一つ屋根の下で夜を明かす意味を考えていないようにみえた。ネイサンは意識しすぎている自分が少し恥ずかしくなった。
「二人がそういうなら……僕も泊まりますよ」
そうして二人は店の二階に泊まることとなった。
マチルダがお店を出て、とうとう二人きりになった。
(マリーは平気そうにしてるから絶対に変な態度をとらないようにしよう)
ネイサンはそう心に決めていた。
一方のマリーは本当に何も意識していなかった。先に湯で体を拭き、マチルダが用意したナイトウェアに着替えると、少し話をしようとネイサンがいる部屋へと向かった。
トントン
「ネイサン、入っていい?」
「え? えっと……いいけど」
「ありがとう。今日はほんとに疲れたねー」
そう言うと、マリーはネイサンが座るベッドに腰かけた。
「そ、そうだね。マリーたくさん動いてたもんね」
そう言いながらネイサンはマリーのナイトウェア姿、特に胸の谷間を思わず凝視してしまった。
「ネイサンだってたくさん動いてたじゃない」
マリーは笑いながらネイサンの肩を軽く叩くと、ネイサンが視線が自分の胸に向いていることに気が付いた。同時にネイサンの下半身に変化があることにも気が付いた。
マリーはようやく男女が一つ屋根の下で夜を明かす意味を考え始めた。
(ネイサンが私のことを見て……ってことだよねきっと。そうだよね。でも本当? 私なんかで……)
「ネイサン……今何考えてる?」
マリーは思い切って聞いてみた。
「え!? べ、別に何も……何も変なことは考えてないよ!」
明らかに動揺しているネイサンを見て、マリーはキャサリンから男性経験がないことで女として馬鹿にされたことをふと思い出していた。
(ネイサンみたいに優しくて気が利いて、私のことをちゃんと考えてくれる人に私の初めてをもらってほしいな。うん、そうよ。ネイサンになら……)
「ねぇ、しようか?」
マリーは思い切ってネイサンを誘った。そんな積極的な自分に内心驚いていた。色々な感情が重なって、マリーは自分でも信じられないことを口走っていた。マリーの顔は真っ赤に染まり、心臓の鼓動がうるさかった。
「マ、マリーはそういうことしたことあるの?」
ネイサンの顔も真っ赤になっていた。
「んー、内緒」
マリーは男性経験がなく馬鹿にされた経験から、自分が処女だということを伝えられなかった。
少しでも手馴れて見えるように、マリーはネイサンを自分から押し倒した。押し倒した後に何をすれば良いのかはわかっていなかったが、わかる必要はなかった。そこからは逆にネイサンが自分を止められなかったからだ。
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