酒に溺れる奴は死ぬ
引っ越しから数か月。ようやく生活も落ち着いたと思っていた。
そろそろ日付も変わるというタイミングで母から電話が来た。うたた寝をしていた私は、ぼんやりとぼやきながらその電話をとった。
「お父さん、倒れた!」
「ええ?」
また、酒の飲み過ぎで足でももつれさしたのか。
私は全然心配していなかった。父は飲んだくれだ。アルコール依存症だ。だから、いつものことと受け止めた。
「お父さん、危篤状態!」
「ええ?」
危篤と言う単語に、それがどういうことか、さっぱり頭に浮かばなかった。
「あの、今、救急車来た、乗るから!」
「あ、はい」
危篤……? と首をひねる。救急車が来るほどの事態。でも、救急車が来たから大丈夫なのか?
これは、明日会社に行けない感じだろうか。
見舞いに行って、父に苦言を言わねば、などと考えていた。私は、まだのんきだった。
慌てて風呂に入って、洗濯機を回す。風呂から出ると、不在着信があった。母からだ。
「あの……早く来て」
「え、うん、わかった」
「すぐ来て」
「いや、すぐには行けないから」
「うん」
なんだろう。そんなにひっ迫した状況なのか。夜が明けるのを待たず、実家に行くことになった。
髪を乾かして、洗濯物を干して、家を出た。
交差点で車を止めているときに、妹から着信があった。車を安全な場所へ移して停車。電話を受ける。
「あの……お父さん、亡くなった」
「ええ……?」
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