第3話 悪役令嬢断罪
(今日の卒業パーティが終わったらシャルロットはルイ様と無関係。気軽には会えなくなるわ。あと少し、あと少しの辛抱……)
イリスはイリスなりに精一杯努力をしたが、ルイとの心の距離が開いていっていると感じていた。その事実が本当にツラかった。シャルロットへの抗議はやめたのだが学園の中でイリスの悪い噂は広がる一方だった。やってもいないこと、言ってもいないこと、様々な噂が飛び交っていた。
イリスは卒業という環境の変化によって、この胃に穴が空きそうなほどツラい日々があと少しで終わることに安心しきっていた。
パーティの最中ルイとシャルロットが見当たらないことが気にはなったが、それ以上にこの地獄が終わることが嬉しくて仕方がなかった。
パーティもいよいよ終りに近付いていた。シャルロットは最後のダンスくらい仲良くルイと踊ろうと心に決めていた。そのためルイを必死に探していると遠くからルイが近付いて来るのが見えた。シャルロットは嬉しくなって少し手を挙げて「ルイ様!」と叫んだ。
するとルイの斜め後ろをシャルロットが歩いてくるのが見えてしまった。
ルイとシャルロットは今まで以上に黒いモヤに包まれている。黒いモヤの二人が段々と近付いてくる。イリスは冷や汗をかき、自分の心臓がうるさいと感じていた。
「演奏を止めてくれ!」
ルイが大きな声でそう叫ぶと会場は一瞬にして静寂に包まれた。
「イリス、話がある。 私はお前との婚約を解消してこのシャルロットと婚約することを決めた」
周りはざわめきながら三人を見つめていた。
「ルイ様……突然何を? そんな……御冗談でしょう?」
「冗談でこんなことを言うと思っているのか? お前がシャルロットにしてきたことを私が知らないとでも思ったか!?」
ルイは大声でイリスを責めた。婚約破棄と聞いてざわめいていた周囲はルイの怒号で静寂に包まれた。
「ルイ様、それには事情が……」
「うるさい!」
ルイはイリスの言葉を遮るように再び叫んだ。ルイの黒いモヤが大きくなり、イリスにはルイの表情すら見えなくなっていた。
優しくて純粋なルイは優しすぎるが故に悪事を許せなかった。悪事を憎む気持ちが強くなりすぎて婚約者に対して憎悪を抱いてしまっていたのだ。
(どうしてこんなことになってしまったのか。 わたくしが何を間違えたのか……。 ただ……ただわたくしはルイ様と幸せになりたかっただけなのに……)
イリスは涙が止まらなかった。もう言葉も出なくなっていた。
そんなイリスの頭に強い悪意の想いが伝わってきた。
(あー気持ちいい、計画通りですわ)
頭の中に流れてきたそれはまぎれもなくシャルロットの悪意だった。
その瞬間、イリスの中の何かがプツリと切れてしまった。
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