第2話 良き理解者のお兄様
イリスは今日も苦しんでいた。
ルイが友人たちと楽しそうに魔法訓練室へと向かったのを見てしまったからだ。もちろんその輪の中にシャルロットはいる。
ルイとイリスの会話は数週間前から極端に少なくなっていた。
「ルイ様、シャルロットさんとはもう喋らないでください」
「それは何故なんだ?」
「えっと……理由は言えませんけれど」
イリスが勇気を振り絞ってルイにそう言った瞬間、今まで一度も悪意を見せたことがないルイの体から一瞬だけ黒いモヤが出たのをイリスは見てしまった。それは嫌悪からくるものだとイリスは知っていた。
それ以来、イリスはルイと話すのが怖くなっていた。
シャルロットに注意したところで、いくら強く言っても効果がなかった。
友人を通してそれとなくルイにシャルロットと話さないように伝えても逆効果だった。
このまま嫌われてしまうのではないか。
ルイは私のことを嫌いになり、シャルロットのことを好きになってしまうのではないか。
そんなマイナスなことばかりを考えてしまっていた。
イリスはこれ以上どうすれば良いかわからずに従兄弟のジェレールに相談した。イリスが小さい頃から「お兄様」と慕うジェレールは、当然イリスの秘密のことも知っており、イリスのよき理解者であった。
「イリス、それはツラかったね……。イリスが色々と心配になってしてしまったことはしょうがないと思う。でもね、皆の前でその子に学園からでていけと言ったのは良くなかったかもしれないね」
「確かにあれ以来わたくしは悪者になってしまっています。陰で悪役令嬢だなんて言う人もいるそうです。ですがどうしても我慢が出来なくなってしまって。お兄様、わたくしもうどうすればよいのかわかりません」
イリスは下を向きながら涙を流している。
ジェレールはイリスの頭にそっと手を置いた。
「シャルロットに何かするのはもう止めよう、イリス。 それよりもルイ様にもっともっと好きになってもらえるように努力した方がいいと思うな。 イリスはとても可愛くて誰よりも頭の良い子だから、変な心配をしないでイリスのままでいることが大事だよ。 その上で努力をするんだ。 もしシャルロットのせいでルイ様の気持ちが少し離れてしまったとしても必ずまた振り向いてくれるよ」
「お兄様……。はい、わたくしそういたします!」
「偉いねイリス。 頑張るんだよ。 僕で良ければまた相談に乗るからいつでも言うんだよ。 一人で抱え込んではいけないよ」
いつでも優しい良き理解者であるお兄様。ジェレールの優しさに、イリスの心は癒され、温かくなっていた。
「ありがとうございます」
そうしてイリスはシャルロットに対して何かを言うことを止めた。我慢をすることに決めたのだ。イリスとルイの会話が少なくなる反面、シャルロットとルイはどんどんと親密になっていった。
イリスが我慢に我慢を重ね、とうとう卒業パーティーの日となった。
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