第30話 それぞれの死闘 ②


アイリスは瞬時に3体の魔物から一番強い魔物を引き付ける為に動いた。


「キョウスケ様の戦いを見守りたいので、初めから仕留めに行かせていただきます。[ダークボール]」


『ブモッ!? ブモモォォーー!!』


アイリスが放った闇魔法[ダークボール]はオーク変異種の視界を奪う。オーク変異種は持っていた剣の剣圧で[ダークボール]を払いのけるが、アイリスの姿は既に消えていた。


影に潜ったアイリスを捕らえることは至難の技だ。『影移動』でオーク変異種を死角から斬り刻む。オークは『超速再生』を繰り返すが次第に『超速再生』が追い付かなくなっていく。


何故こんなにも一方的な展開になっているのだろうか? それは進化を果たして、ステータスにおいても既に上回っているからである。


それに加えアイリスが《影》と《闇》の才能がずば抜けて高い事が大きな要因である。嫌、高いとかの話ではなく神かかっていると言っても良いくらいだ。『影魔法』と『闇魔法』という条件はあるが、独自に魔法の改変を行えている。スキルを習得しているだけでは、《魔法回路》を弄るなんてまず出来ない。まさに天才だと言えよう。


魔物は《腐食》を周囲に振り撒き、アイリスを溶かそうとするが、直ぐにアイリスに蛇の頭を斬られ止められる。オーク変異種とは幾度と無く戦ってきた。既に対処方法は見つけている。


「デザイアとバラゴスはユニークスキルを発動したようですね。能力も申分無さそうです。これなら大丈夫そうですね。」


アイリスは戦いながら、デザイアとバラゴスの戦いを常に観察していた。真正面から戦うデザイアとバラゴスでは、ステータス差が大きく影響する。苦戦を強いられることは戦う前からわかっていました。なので、危険な場合は直ぐに助けに入れるように気にかけていた。


そう言う私も余り余裕がある訳ではありませんけどね。気を抜けば一撃で勝負がついてします。なので、見た目以上に苦戦しております。


アイリスは[シャドウストレージ]から、もう1本の短剣を取り出し[シャドウエッジ]と唱えた。アイリス自身の影から短剣へと影が伸びる。濃密な影は短剣に吸い込まれ影の刃と成す。


アイリスが普段使っている短剣〈暗殺鬼の短剣〉は《闇》と非常に相性が良く、普段は[ダークエッジ]を纏っている。そして、今取り出した短剣〈黒鬼帝の短剣〉は《影》と相性が良くなるように造ってもらった。〈黒鬼帝の短剣〉は、バラゴスが一から造りだした短剣。ミスリルと4階層でキョウスケ様と戦ったあの黒鬼の素材を使っている。


右手に〈暗殺鬼の短剣〉、左手に〈黒鬼帝の短剣〉を握り、それぞれ魔法を纏う。



「『冥影幻王クリフォト』 力を貸しなさい!」


待っていました! と言わんばかりに能力が解放した。


2本の短剣を纏っている《影》と《闇》が黄金に輝きだす。


「これで終わりです。[双烈牙]!!」


〈暗殺鬼の短剣〉で魔核を守る鎧と肉体を斬り裂き、〈黒鬼帝の短剣〉で魔核を斬り裂いた。急所への高速の2練撃は威力が強すぎたのか、魔核だけでなく身体をも綺麗に斬り裂いた。アイリスには珍しく失敗した感じだ。


【ーーオークロード変異種を討伐しました。】


【アイリスのレベルが4に上がりました。職業『影冥土』のレベルが4へ上がりました。スキル『影の手』を習得しました。スキル『短剣術』のレベルが5へ上がりました。派生スキル『暗殺術』を習得しました。称号『剣聖』を獲得しました。】



<キョウスケ>


『羅刹眼』を発動して相手の情報を読み取る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

鑑定結果 『オークイーター』

ランク 『AA』

レベル 60

称号 『豚帝』『腐王』『狂王』『異常種』


体力 38010/38010 魔力 15500/15500

攻撃力『A』 耐 久『AA』 俊 敏『B』 器 用『D』 知 力『D』


ユニークスキル

共食いハザード


エクストラスキル

『同種異常化』


スキル

『超速再生Lv.7』『腐食Lv.7』『怪力Lv.6』『槍術Lv.6』『剣術Lv.5』『斧術Lv.5』『盾術Lv.5』『騎士術Lv.3』『咆哮Lv.5』『身体強化Lv.5』『金剛Lv.5』『同種支配Lv.5』『眷属召喚Lv.5』『狂王化Lv.6』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー成功したな。それにしても…異常だ。多分だがユニークスキル『共食いハザード』の影響だろう。詳しいことはわからないが、同種族を喰らう事で自身を強化していく能力だと思われる。最近オークを見かけなくなった理由と合致する。それに加えエクストラスキル『同種異常化』で変異種が増加していった感じかな? それを繰り返すことで、種族全体が異常なまでに強化され時間が経つほど手がつけられなくなる。


オークイーターはここで必ず仕留める必要があるな。


『ブモオッ!!』


オークイーターの巨体から凄まじい叫び声が轟き、周囲に衝撃を伝えた。俺でなければ動きを止めていただろう。


オークイーターは巨大な槍を振るい、周りの木もろとも凪倒す。もし、『咆哮』で動きを止めていれば巻き込まれていただろう。それにしても、あの巨体で何ちゅう動きをするんだよ。


開始早々に吹き飛ばしたからか、オークイーターに侮りはない。ブラックゴブリンエンペラー以来の激闘が始まった。


・・・・・・


初っぱなから『竜鬼魂装』を最大に『覇竜闘鬼』を駆使してオークイーターと対峙する。オークイーターの槍をペインエンペラーで受け流し、カウンターで斬りかかるが槍に弾かれる。何回か攻撃が当たるけどオークイーターの耐久値が異常な上、『超速再生』と『金剛』があるため、大きなダメージは与えられない。


「させねぇーよ!」


オークイーターが『眷属召喚』を展開した。展開し終える前に発動を潰す。こいつは同種がいれば際限なく回復し強くなる。『眷属召喚』だけは絶対にさせられない!


〈黒呪剣-ペインエンペラー〉を《呪力》で満たし斬りかかる。ブラックゴブリンエンペラーを屠った《黒龍拳》でオークイーターを削るが削り切れない。武術スキル系のレベルが高いのもあって隙も無い。本当に厄介だな!


[人化]を解いて制限を解除する。『竜鬼魂装』が本来の力を解放した。鬼神の呪いが発動するが以前のような強烈な呪いは成りを潜めた? ユニークスキルの効果かな?


滅びの炎ラグナロク


黒炎がオークイーターを覆う。この炎は燃え尽きるまで消えないはずなんだが


「腐食液で消火だと!?」


炎が消えたと思ったらオークイーターは無傷で佇んでいた。このまま削って行くしか無さそうだな。


習得しているスキルを使って、あらゆる攻撃を試すが削り切ることは難しそうだった。負けはしないが勝つことも出来ない感じ。『超速再生』が厄介すぎる。首や腕を落としても直ぐに再生してしまう。塵にするか核を破壊するしか無いが守りが固い。


ハァ~方法は一つだな。ぶっつけ本番になるがしょうがないだろう。その方法は・・・







《進化》!!



そして……進化が始まった…………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る