第27話 変異種


〈魔力水〉が欲しい…数日前にそう言ったけど、まさかその言葉が〈湖〉になるなんて誰も思わないよね?


素材が大量に手に入ったのでポーションを造りたいと思い頑張った。薬草を絞り、絞った液体を魔力水と混ぜる。何度も繰り返して、配合の比率を調整していった。


俺の呟きから、エンダールに〈聖なる湖〉が出来た。〈聖なる湖〉から取れる水は聖なる魔力を含む純度の高い〈魔力水〉でポーション造りに最適な〈魔力水〉を無限に湧きだすらしい。


森のダンジョンを探索していることもあり、森の恵みに魅力を感じた。エンダールにもあっても良いかなと思っていたら既に出来ていたよ。果樹園の奥に広大な森がね。だから森のダンジョンで採取した果樹をエンダールに植えなおしたりしている。そのうち品種改良にも手をかけたいよね。


大きな変化としては、デザイアの加入で全員の服が一新した。シルクビートルの糸は肌触りが良く、インナーや下着に最適だった。キラースパイダーの糸で造った衣は強靭で、アイリスのメイド服や鎧の下に着る衣類として重宝していた。


武器なども4階層で少量だけどミスリルを入手したので更新も進めている。


手に入れたいなぁと言っていた矢先に手に入ったので驚いたのは言うまでもない。


皆がそれぞれエンダールで自身の出来ることを全力で努めていた。俺はほぼ訓練場に籠っており、みんなの指導と自身の強化に集中していた。その結果、スキル『指導』を習得していた。


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スキル 『指導』

ランク A

能力 指導が上手くなる

※レベルに応じて指導に補正がつく

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スキル『指導』は、全員の武術スキルの技量を上げるのに役に立った。教えるのが上手くなるレベルでは無い。最適な指導が出来るのでレベルの上がりが早いんだよ。


◆◇◆◇◆◇



ーー森ダンジョンの奥地では不穏な空気が立ち込めていた。何のイレギュラーかそこには魔力溜りが出来ており、それも濃い魔力が轟轟と渦巻いていた。そんな場所で・・・


ぐちゃぐちゃ…


1体の不気味な魔物の周囲には、数え切れない程のオークが喰い散らかされていた。その場は異様な空気が漂い、仄暗い森を余計に気味悪くしている。その魔物の姿はオークのような姿なのだが…オークと言って良いのかはわからない。何てったって通常のオークの5倍もありそうな巨体と異様な4本の腕がオークとは似ても似つかなかった。


『グオオオオオォォォォォォーーーー!!!!』


魔物の雄叫びは森全体に響き渡り、森に潜む魔物はそれから逃げるように大移動を始めた。


その魔物は森を彷徨い、喰らい、成長して成長し続けて進化し続ける…


◆◇◆◇◆◇




ー-4階層の探索を開始して2週間が経った。エンダールでは半年だな。


最近、ダンジョンの様子が可笑しい。何処がって言われれば答えられないけど、強いて言えば魔物が怯えているように感じるかな? 多分だけど魔物もこのピリついた空気を感じているのかも知れない。


恭介は森の奥に視線を向ける。『探知』には強力な魔物の存在は確認出来ていないが…これは何かいると考えた方が良さそうだ。


「アイリス、バラゴス、デザイア。森の様子が何処か可笑しい。今以上に注意して進もう。」


「「「はっ!!」」」


3人の実力も上がってきた。実際に森のダンジョンを攻略しているのは3人何だよね。俺は後ろで見守りながらスキルレベルを上げている。今は特に『羅刹眼』と『封影の鎖』をメインに育てている。一応『探知』も欠かせていないけどね。


基本は口を出さない。アイリスが新しく習得したスキル『影探知』で安全を確保しながら先へ進む。最初は奇襲してきた魔物に気付かず危険だと判断して『封影の鎖』で迎撃してきたけど、次第に出番が少なくなり今の状態が続いている。そろそろ混ざっても良くない?


異変が起きたのはそれから数日の事だった。


「あれはオークか?」


「似てはいるようですが…全然違う魔物では無いでしょうか?」


「あの禍々しく溢れる魔力はオークとは違うじゃろ?」


「強そうですね?」


今までもオークとは結構戦ってきたけど、オークの上位種と比べても1周り大きいし…凄く異様だった。身体は浅黒く、まるであの黒鬼を思い出す。さっきから『羅刹眼』を試しているんだが、バグって情報が上手く読み取れないんだよな。どうしたものか…


「キョウスケ様、私達だけで戦わせて頂けないでしょうか?」


ーーどうしよう。アイリス達なら大丈夫だと思うけど…駄目だな、過保護は良くない。危険なら手助けすれば良い。ここはアイリス達に任せてみよう。


「アイリス達に任せるよ。ただし、危険と感じたら介入するからね。それと、あいつを倒したら次からは俺も戦闘に加わる。アイリス達も強くなったからね。」


「ーー畏まりました。」


アイリス、バラゴス、デザイアは未知の魔物に向かって駆け出した。


「こっちじゃ!『ロックキャッスル』!!」



『ブモオォォォーーーーー!!!!』 


ゴン!!


ザッシュ!!


バラゴスが《挑発》を発動して、魔物のターゲットを自身に向ける。その隙にアイリスが死角から急所を狙う。オークであればこれで首を落とされて終了だが、コイツはそうはならなかった。耐久値が高いのか傷が浅い…それも瞬時に傷が癒えていく。『再生』持ちか!?


「セイッ!!」


『ブモッ!?』


アイリスに攻撃を仕掛けようと動いた魔物の側面に槍を突き脇腹を抉る。デザイアの武器は宝箱で入手した〈亡者の槍〉に〈ブラックゴブリンエンペラーの牙〉と〈ミスリル〉を溶かし、バラゴスが鍛えなおした〈黒鬼槍-亡者の嘆き〉を使用している。例え相手が『再生』を持っていても、この槍は《生命力》を吸い取るので確実に魔物にダメージを与えていく。


「《ダークエッジ》!!」


どっさり…


アイリスは〈暗殺鬼の短剣〉に魔力を纏い、武技[烈牙]と武器の特殊効果[アサシンスクライド]を同時に発動して攻撃した。元の〈暗殺者の短剣〉に〈ブラックゴブリンエンペラーの角〉と〈ミスリル〉を溶かせて鍛えなおしたのが〈暗殺鬼の短剣〉である。アサシンスクライドと隠密に補正がかかる。その威力は見ての通り、あの強靭な魔物の首を綺麗に落とすほどだ。


ビック!


「アイリス! まだ終わってない! 気をつけろ!」


首を落としたはずの魔物から魔力が溢れでる。魔物は落ちた頭部を拾い頭部があった場所に持っていき再生をはたした。


『ブモォッ!』


魔物の背中から2本の腕? が生えてきた…


腕じゃ無いな? 何だ…アレ?? 背中から生えたきた物は蛇のような謎の生き物だった。

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