第14話 バラゴス


進化してからはダンジョンの探索には行かずにエンダールにとどまっていた。急激なステータスの上昇に加え、新たなスキルを習得した事で探索よりも訓練に力を入れることにしたからだ。


丹田を《覇》で強化して《覇気》を生み出す。《覇気》は[気功法]により体中に送られ肉体を強化する。急激な変化に身体が悲鳴をあげるが、回数をこなす度に治まっていった。


魔力を《覇》で強化して《覇魔》を生み出す。エクストラスキル『覇王の導』から魔力による身体強化の情報が与えられた。魔力経路に魔力を流して循環させる事で一時的に身体を強化できるらしい。


・・・うん、死ぬかと思った。


《覇魔》を魔力経路に流して循環させたところ、情報通り身体は強化された。ただ、強化され過ぎて身体がバラバラになるところだった。暫く[自動超回復]の御世話になる事になった。


気力による肉体の強化を《肉体強化》、魔力による一時的な身体の強化を《身体強化》として、アイリスと情報を共有して身につける事にした。


進化を果たして一月が経ったころ、日課のトレーニングをしているとアイリスから声がかかる。


「キョウスケ様、少々宜しいでしょうか?」


「うん? 問題無いけど?」


「エンダールの開拓が進んだことにより、《魔石交換システム》のリストが更新いたしました。そこで今回〈鍛冶師〉という項目が追加されまして、どうすべきか判断をお願いしたく伺いました。」


「〈鍛冶師〉と言う事は、アイリスと同じように召喚されるということか?」


「私もそうなのですが召喚とは少し違います。私達はどちらかと言うとキョウスケ様の能力で創られた存在です。なので召喚とは別物です。」


召喚じゃ無かったのか…


それも人を創り出す能力って一体・・・


「そうなのか…。まぁ、〈鍛治師〉はこの先絶対に必要になる。ここで交換しておきたいな。それで魔石は足りそう?」


「それが・・・少し足りていません。なので2階層で回収出来ないかと…」


2階層なら問題無いかな。


「なら回収しに行こう。二人でなら時間もそうかからないで終わるだろうしね?」


「はい! ありがとうございます!」


2階層に戻り、二手に別れて〈魔石〉を回収する。《身体強化》を発動して、手早くゴブリンを狩っていく。《覇気》で強化された肉体に合わせて、《覇魔》を制御して《身体強化》を調整する。この一月の成果である。


〈魔石〉はそう時間もかからずに集め終わった。『マップ』でアイリスの状況も確認していたけど、《身体強化》と『影移動』を上手く使って魔物を倒しているようだった。そして…


「じゃあ、アイリスお願い。」


「はい。〈鍛冶師〉と交換致します。」


アイリスが《魔石交換システム》の交換リストを操作すると目の前が一瞬輝きだし、140cm位の髭の生やした男性が片膝を付き頭を深く下げていた。顔には立派な髭を蓄え、身長は低めだが屈強な戦士といった感じだ。たしか、ドワーフと言う種族だったかな?


「頭を上げてくれ。〈鍛治師〉で良いだよな?」


「ハハッ! 儂は〈鍛治師〉で御座います。主様!!」


いやいや、俺はそんなに偉い人じゃ無いからね! 一般人だからね!


「そんな固くならなくて良いよ。普通にしゃべってくれ。」


「了解じゃ! 主様。」


少しかたいけど、まぁ…良いか。


「それで名前はあるのか?」


「ないのぅ。主様に名付けて欲しいのだが?」


名前か…


「よし! 決めた! 今日から〈バラゴス〉としよう!」


【 ー 条件を満たしました。スキル『従者契約』を習得しました。個体名バラゴスとの間に『従者契約』が発動しました。個体名バラゴスとの間に強い絆が生まれました。エクストラスキル『重力崩壊』を習得しました。スキル『従者契約』のレベルが2へ上がりました。】


「これからよろしく頼むな。」


「ガハハハ、了解じゃ!」


「アイリス。鍛冶場の準備をお願い。魔石は多めに回収していたから足りるよね?」


「はい。問題ありません。バラゴスと相談しながら準備致します。」


アイリスはバラゴスを連れて去っていった。



ーーーーーー



ダンジョン探索までに確認が必要なのはエクストラスキル『破滅の王』と『重力崩壊』、後は種族特性の『竜鬼魂装』だな。


エクストラスキル『破滅の王』は、直接触れたものに破壊因子を注ぎ破壊する能力。強力な能力な分制約がかかり、直接触れないと発動しない。要するに能力を発動するには素手で触れる必要がある。後は実戦で試して行くしかない。


先ずは新しく習得したエクストラスキルの確認からしよう。


◆スキル『重力崩壊』 ランクEX

・重力を自在に操作する能力。発生させる事象の規模によって膨大な魔力を消費する。


色々と便利なスキルだけど、今の俺では扱うことが難しい能力だな。重力を発生させて操るには知力と演算速度など足りないものが多すぎる。今できる事と言ったら自身の重力を軽減、増加するくらいだ。それだけでも便利だけどね。


種族特性『竜鬼魂装』は、発動すると俺の身体は呪いに蝕まれる。ユニークスキル『不滅王の肉体アウローラ』の活躍で呪いは抑えられているがまだ完全では無い。《精神強化》《精神汚染耐性》《呪い耐性》それに加えユニークスキル『無限竜の胃袋ウロボロス』で喰らってようやく、自身の竜鬼魂装を発現出来た。それでも長くは無理だったけど。


俺の竜鬼魂装は黒い鱗の胸当てと手甲と脚甲だった。俺の成長に合わせて変化するみたいだからこんなものだろう?


そうそう、バラゴスもダンジョン探索に参加するようだ。今は新たに参加する条件を設けて、その条件を満たす為に頑張っているのと武器の製作に力を入れている。バラゴスの鍛冶の腕は素晴らしく、この剣も実はバラゴスの造った物だ。最初はホブゴブリンからドロップした〈ゴブリンソード〉を使っていたけど、今はバラゴスが鍛えた剣に変えている。


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鑑定結果 『黒鉄の剣』

ランク レア

効果 『斬撃強化』

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バラゴスの剣は手に馴染むんだよな。短剣も〈黒鉄の短剣〉に変更した。素材は魔鉄だから魔力の通りが良い。


バラゴスのステータスも確認していた。その上で条件を設けダンジョン探索の許可は出す事にしている。そして、条件を満たす事に成功していた。


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バラゴス

レベル 1

種 族 『ドワーフ種』

職 業 『岩窟王Lv.1』

称 号 『覇王の鍛冶師』『従者』『覇王の岩窟士』


体 力 4800/4800

魔 力 2500/2500

攻撃力 『D』

耐 久 『C』

俊 敏 『F』

器 用 『C』

知 力 『E』

 運  『A』


種族特性

『熱・炎耐性』(NEW)


ユニークスキル

巌窟巨兵タイタニア』➡(NEW)


エクストラスキル

『鍛冶の道』(NEW)


スキル

『岩石魔法Lv.1』(NEW)『斧術Lv.1』(NEW)


魔法

【岩石魔法-ロックバレット 《1》】(NEW)


戦技

【体技】[硬拳 《3》](NEW) [硬脚 《3》](NEW) [丹田 《2》](NEW) [気功法 《1》](NEW)

【斧技】[断斧 《1》]                    

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種族から確認して行こう。


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種族 『ドワーフ種』

種族特性 《熱・炎耐性》

※物造り、特に鍛治を得意とする種族。

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ファンタジーとかで良く出てくるドワーフと大まかには一緒のようだ。鍛治が得意で手先が器用な種族。


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称号 『覇王の鍛治師』

恩恵1 エクストラスキル『鍛治の道』を習得する

恩恵2 製作した物に補正がかかる

※鍛治の腕で覇王に認められた者に与えられる称号

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また覇王って…バラゴスの鍛治の腕は認めているけど、それで何で称号が与えられるんだよ!


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称号 『覇王の岩窟士』

恩恵1 《岩》系統のスキルの成長補正

恩恵2 《岩》系統スキルの経験値上昇

※職業『岩窟王』に就き、覇王の従者になった者に与えられる称号

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成長補正と経験値上昇は本当にありがたいな。



◆ユニークスキル『岩窟巨兵タイタニア』 ランク UC

能力1 岩窟巨兵を召喚する

能力2 岩窟巨兵を改造する

※岩窟巨兵を召喚する。未だ多くの能力は目覚めていない

◇ようするに巨大な岩のゴーレムを召喚する能力。何! その心踊るような能力…羨ましい。


◆エクストラスキル『鍛治の道』 ランク EX

能力1 鍛治スキルを最高峰レベルで行使できる

能力2 あらゆる鉱物の声を聞く

◇バラゴスの造る物は、素人目で見ても素晴らしい物だ。もっと良い鉱石を入手してあげたい。


◆スキル 『岩石魔法』 ランクB

能力 岩石魔法を習得する

※ 岩石魔法は土魔法の上位魔法にあたる

◇バラゴスも魔法を使えるのか…頼もしい反面、羨ましく思う。


鍛冶も出来て、戦闘も問題無くこなせる。そろそろ3階層の攻略に移るとしよう。

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