第7話 アイリス



スキルの確認を終えてから家に帰ってひたすら入手した魔石を取り込んでいた。結構な数の魔石を抱えていたので時間がかかる。ひたすら魔石を取り込んでいると…


【 ー 規定の魔石の納品が確認されました。[魔石交換システム]が更新されました。】


うん? [魔石交換システム]のリストが更新されラインナップも一新していた。ほうぅ~結構更新されたな。



[魔石交換システム]には、多くの食材や調味料から施設などが多く更新されていた。その中でも、俺が一番目を引いたのが〈管理人〉だった。交換するには今まで集めた魔石のほとんどを放出することになるけど問題は無い。無くなったのなら、また集めれば良いだけだからな。それより、話し相手が欲しい…


〈管理人〉と言うことは、管理してくれる人だよね? 人が来てくれる可能性があると言うことだろ? 違っても良いから試したい! 魔石がいくらかかっても全然良い。魔物と戦っているだけの生活は正直精神的に辛いのだ。


・・・本当に一人は辛い。


さっそく残りの魔石を全てを取込み〈管理人〉と交換することにした。


[魔石交換システム]のリストから〈管理人〉を選択して決定する。今までとは違い、俺の目の前の床が輝き、黒髪のメイド服を着た美少女が現れた。歳は17歳ほどで輝く綺麗な黒髪を腰まで伸ばし、誰もが見惚れるほどの美貌をもっていた。そして…何処か妹達の面影があった。そのせいか、俺は無意識のうちに涙を流していた。



「御主人様! 何処か具合が悪いのでしょうか!」



俺が泣いていた事に狼狽して慌てる姿は、先程まで感じていた冷静で完璧な印象とかけ離れていた。俺は目にゴミが入っただけと誤魔化した。


「御主人様は恥ずかしいからキョウスケと呼んで欲しい。それと君の名前を教えてくれないかな?」


「私に名前はありません。宜しければキョウスケ様に名を付けて頂きたいのですが?」


俺が名前を付けてるの?



・・・・・・


人に名を付ける事など今まで経験した事が無かったから目茶苦茶悩んだ。ペットに名を付ける訳では無いからね。それでも悩んだ末に一つの名が浮かんだ。


「そうだな・・・決めた! 今日から君は〈アイリス〉だ。よろしくね。アイリス。」



「アイリス…良い名前ですね。こちらこそよろしくお願い致します。」


ーー言えない。アイリスを見たとき、俺の心に虹がかかったような気持ちだったから〈アイリス〉と名付けたなんて…恥ずかしくて誰にも言えない。


【ーー条件を満たしました。スキル『従者契約』を習得しました。個体名アイリスとの間に『従者契約』が結ばれました。個体名アイリスとの間に強い絆が生まれました。エクストラスキル『封影の鎖』を習得しました。】


【ーーエクストラスキル『覇王の導』が発動しました。『覇魔』を解放しました。】


アイリスに名を付けた事で条件を満たしてスキル『従者契約』を習得した。アイリスとの間に強い繋がりを感じる。凄く暖かくて穏やかな力が流れて来る。その影響かステータスの向上、更にはエクストラスキル『封影の鎖』まで習得してしまった。


「キョウスケ様? 力が溢れて来るのですが…どうやらユニークスキルと幾つかのスキルを習得できたようです?」


「アイリスに名を付けた事で俺とアイリスとの間に『従者契約』を結んだ型になってしまった。その影響が出てしまったようだ。すまない。」


「謝らないで下さい。私はキョウスケ様の従者と成れて嬉しいです。それにメリットがあってもデメリットは無さそうです。これでもっとキョウスケ様のお役に立てます。」


ドキッ!


その笑顔は破壊力満点だった。顔がニヤけるのを必死に耐えた俺を褒めて欲しいくらいだ。


フゥ~ アイリスが食事の準備をすると言って台所へと向かったので俺は風呂に入ることにした。


ビックスライムを倒して下の階層へと降りる事は出来た。ただこれから先は魔物が強くなるのは間違い無い。今の俺に必要なのはスキルの把握と強化。それに安全に探索する為に『鑑定』と『探知』それに『気配察知』のレベルを早急に上げておきたい。やることが多い…


けど、ここでしっかりやっておかないと、最悪は命を落とす可能がある。早くダンジョンから出たい思いはあるけど、焦っては絶対に駄目だ。幸運にもアイリスが居てくれるので寂しさと孤独感は何とかなりそう。だからこそ、ここでしっかりと腰を据えて強くなろう!


ガチャン!


「キョウスケ様、お背中をお流し致します。」


ここで俺の思考はぶっ飛んだ。強くなろうと決意した事も、これからどう鍛えるべきかと考えていた事も全部吹っ飛び頭の中が真っ白になった。


「えっ!? ちょ…ちょっとストップ! アイリス、大丈夫だから! 一人で洗えるから!」


驚き過ぎてフリーズしている間にアイリスは身体にタオルを巻いて浴室に入って来てしまった。俺は慌ててアイリスに断りをいれるが、結局はアイリスに根負けして背中をお願いした。勿論、前は死守したよ。


ーー久しぶりに美味しい食事だった。最初は一人分しか用意しておらず、無理を言って一緒に食事をするようにお願いした。一人の食事は味気ないからね。


「アイリスにはエンダールを任せたいんだけど良いかな?」


アイリスは《管理人》と言うこともあり、エンダールの能力の[セーフティーハウス]と[魔石交換システム]の機能を扱えるらしい。


「はい。問題御座いません。出来るのであればダンジョンにもご一緒させて頂ければと思っております。」


「ちょっと待って!? ダンジョンに!? それはちょっと危険だと思う。アイリスはここで待っていてくれるだけで十分だよ!?」


アイリスがエンダールで待っていてくれるだけでヤル気満々だからね。あんな危険な場所に無理して着いて来ることも無い。


「危険は承知しておりますが、危険な場所にキョウスケ様だけを向かわせるのは心配なのです。どうか、ご一緒させて頂けないでしょうか!」


う~ん、その気持ちは嬉しいんだけど…どうしたもんかな? 確かに魔物が強くなるのがわかっているから戦力は多い方が良いんだけど・・・


「まずはアイリスのステータスを確認してから判断しても良いかな? ダンジョンに連れていくかはステータスを確認してから決めたい。」


他人のステータスは本人が許可すれば確認することが出来る。これはステータスの機能の一つ。


「勿論、問題御座いません。」



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アイリス

レベル 1

種 族 『冥人種』

職 業 『影冥土Lv.1』

称 号 『管理人』『覇王の冥土』『覇王の影』


体 力 700/700

魔 力 1000/1000

攻撃力 『F』 

耐 久 『F』

俊 敏 『E』

器 用 『E』

知 力 『E』

 運  『A』


種族特性

『暗黒視』


ユニークスキル

冥影幻王クリフォト


エクストラスキル

『冥土の道』


スキル

『影魔法Lv.1』『影移動Lv.1』『隠密Lv.1』『思考加速Lv.1』『高速演算Lv.1』


魔法

[影魔法-シャドウバインド 《1》]                            

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えっ!? レベル1でこれ? 強くない!? 


魔法も覚えているし、問題は無さそうだけど・・・


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種族 『冥人種』

種族特性 《暗黒視》暗闇でも視界が保たれる。

※冥界に住まうとされる種族。闇属性に非常に適性が高い。

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闇属性との相性が良い『冥人種』という種族みたいだ。見た目は人族と変わらないけど、寿命という概念が存在しないらしい?


種族特性暗黒視を持っているので、影の中でも視界は保たれるのだとか。そうそう『人間種』は最弱種らしくて種族特性は持っていない。


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称号 『管理人』

恩恵1 セーフティハウスの管理(許可)

恩恵2 スキル『思考加速』『高速演算』を習得する

※ユニークスキル『小さな世界エンダール』の機能の使用を認められた者に与えられる称号

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称号『管理人』の恩恵でアイリスにも[セーフティーハウス]の機能が使えるようになった。アイリスが[セーフティーハウス]の管理を申し出てくれたので任せる事にした。


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称号 『覇王の冥土』

恩恵1 家事全般に補正がかかる

恩恵2 エクストラスキル『冥土の道』を習得する

※覇王直属のメイドに就いた者に与えられる称号

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覇王って俺のことか!? 確かに『覇王』という職業についたけど・・・称号が覇王ということは覇王で間違いないのか?


アイリスは家事全般を完璧にこなす。アイリスが現れるまでは俺が料理してたのだけど、アイリスの作った食事が美味し過ぎて台所に立つことをやめたよ。そもそも、アイリスが俺を台所に立たせてはくれなかった。


《料理は私の仕事です!》


ーーとのことだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー称号 『覇王の影』

恩恵1 全ステータス補正

恩恵2 スキル『影移動』『隠密』を習得する。

※覇王の影になる適性を持ち合わせた者に与えられる称号

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レベルアップ時に全ステータスに補正がかかるのに加えて、便利そうなスキル『影移動』と『隠密』を習得していた。


俺とアイリスとの間にできた繋がりはアイリスの力を目覚めさせた。その力がユニークスキル『冥影幻王クリフォト』だ。特殊な影を発現出来るとあるが、まだ上手く扱えないらしい。


◆スキル『冥影幻王クリフォト』 ランクUC

・自身の影を冥界の影に造り変える能力。

※冥界の影は他者の魔力に干渉して、魔法妨害や魔法系のスキルを妨害する。

◇冥界の影がどういった物なのかわからないけど、魔法妨害とスキル妨害はヤバいだろ!


◆スキル『冥土の道』 ランクEX

・『メイド』に必要なスキルを最高峰レベルで扱える能力。

※アイリスの趣味として、『料理』もスキルの対象に

入っている。

◇本当に俺が家で出来る事が無くなってしまったな。まぁ、出来たとしてもアイリスが手伝わせてくれないだろうけどな。


◆スキル『影魔法』 ランクA

・影魔法を習得する。

※影魔法は特殊系統魔法の一つで強力な魔法である。

◇使用魔力は多いみたいだけど、影魔法は強力で応用性が高い魔法のようだ。魔法・・羨ましい。


◆スキル『影移動』 ランクA

・影の中を移動する能力。

※影の中に出入りする時に魔力を消費する。

◇レベルが上がると影内での移動速度の上昇と消費魔力の軽減されるみたいだ。段々と使い勝手が良くなってくる。アイリスは冥人種だからか影の中に居る事に苦痛を感じないようで俺の影の中に潜んでいられるみたいだ。出入りに魔力は消費するけど、居続けるのには魔力は消費しない。


◆スキル『隠密』 ランクB

・自身の気配を消す能力。

※隠密の持続には魔力を消費し続ける。

◇影魔法と隠密の組合せは脅威だよな。味方なら頼もしい限りだけど。


◆スキル『高速演算』 ランクC

・自身の演算能力を向上させる能力。

※使用にはスタミナを消費する。

◇魔法を扱う上で『思考加速』と『高速演算』は必須スキルらしい。このスキルが無いと魔法の発動に時間を要するみたいだ。


アイリスのステータスを確認した俺はアイリスにダンジョン探索の許可を出した。


「アイリスがダンジョンに着いて来るのに許可しよう。ただし、魔法とスキルを把握して使えるようになることが条件だ。」


「ーー畏まりました。次回までには条件を満たしておきます。」



俺も負けていられないな。アイリスが合流するまでに力をつけないと・・・

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