第9話 オーストラリアの危機 5

「ヴォォォォォォ!!!」


 と、レベル3が大きな声を上げる。


(さて、まずはコイツの能力を見極めるところからスタートだな)


 相手の手の内がわからない段階で懐へ飛び込むことは危険なため、普段なら時間をかけて攻撃を仕掛けるが、デビルがいつまで傍観者でいるかわからないため、短期時間で片付けたい。


 そのため、最新の注意を払いつつ、俺は雷刀らいとうを下段に構え、そのまま左腰の辺りまで引き、レベル3に突っ込む。


 妖精との契約率が100%を超えた超越者は、妖精の力を余す事なく使うことができる。


 そのため雷閃らいせんを使用しなくても、一般人には視認が難しいほどのスピードで突っ込むことができる。


「はぁーっ!」


 俺は雷刀らいとうを上へ振り上げる。


 それをレベル3は後方へ飛ぶことで回避する。


(全長5メートルの図体からは考えられないスピードで避けられたぞ)


 レベル1、レベル2のデーモンなら、今の一撃を避けることはできないため、俺のスピードについてこれたレベル3の強さを思い知る。


 そのまま、俺は追撃しようとすると、レベル3のデーモンの右手から黒い球が生成される。


 そして、黒い球を俺に向かって投げてくる。


「あのレベル3、遠距離攻撃を持ってんのかよ!」


 バレーボール程度の大きさなので、両手でレシーブすることができそうだが、そんなことをしたら腕が無くなるかもしれないので、後方に何もないことを確認して、すぐさま回避する。


 回避したことで、後方にあった山に黒い球が当たり、ものすごい爆発音が聞こえてくる。


 すると、今度は両手に先ほどの黒い球を生成する。


「……え?」


 そして、遠慮なく投げてくる。


「マジかっ!」


 俺が驚いていると、次々と黒い球が飛んでくる。


「インターバルとかないのかよっ!」


 そう叫びつつ、妖精の羽を駆使して素早く躱す。


 そしてレベル3との距離を縮めるようとするが、絶え間なく連続で投げてくるので、なかなか距離を縮めることができない。


「コイツ、強すぎだろっ!」


 先程から空を飛び回るだけで、時間だけが経過していく。


(体力温存しながら戦うとか言ってられないな)


 そのため「雷閃らいせん」と呟き、全身に雷を纏う。


「遠距離攻撃をできるのがお前だけだと思うなよ」


 俺は雷を纏い、雷刀にも雷を纏って、雷刀を縦に振る。


 そのスピードは0.01秒。


「レスティー真明流、二の型〈飛雷〉」


 すると、雷を纏った斬撃がレベル3目がけて飛んでいく。


「グォッ!」


 レベル3から焦ったような声が聞こえてくる。


 それと同時にレベル3の右手が吹き飛ぶ。


「片腕だけか!」


 一撃で仕留めるつもりだったが、距離が遠かったこともあり、避ける時間を与えてしまった。


 だが、片腕を失ったことでバランスを崩し、レベル3の体勢が崩れている。


(黒い球も片腕だけなら、さっきみたいな連投もできないはずだ)


 好機と思い、一気に距離を詰める。


 そして、俺の速さに対応できないレベル3にガラ空きとなった胴体へ、トドメの一撃を加えようとした時、頭上から「お前、なかなかやるな」という言葉が聞こえてくる。


(マズイっ!回避だっ!)


 俺は身の危険を感じ、レベル3への攻撃を中断し、頭上からの攻撃を避ける。


 すると、“ドカッ!”という大きな衝撃音とともに地面に大きな穴が空く。


「このタイミングで登場かよ。もう少し高みの見物をしてほしかったんだがな」


 大きな穴が空いたことで土煙の上がる中、穴の空いた中央に立っている敵、デビルに目をやる。


「いや、雑魚を殺すことに飽きてきたから、魔物たちに任せてたんだが、久々に骨のある奴を見つけてな。俺が相手することにした」


 土煙が晴れると、右手から黒い炎のようなものを纏っているデビルがいた。


(殴っただけでこの威力かよ)


 もちろん、重力の力を利用した攻撃ではあるが、地面にドデカい穴を作ることは簡単ではない。


 それだけ、デビルの攻撃力が高いことを示している。


「さて、お前の相手は俺がすることにした」


 そう言うと、レベル3が他のデーモンたちに混ざろうとする。


「待てっ!お前の相手は俺……」


「よそ見してていいのか?」


「くっ!」


“キンッ!”と、俺の顔に迫っていた拳を雷刀で防ぐ。


「マズイっ!レベル3がフリーになった!手の空いてる者はレベル3を包囲!絶対、レベル3を自由にさせるなっ!」


 俺がデビルとの戦いで手一杯になったことで、レベル3がフリーとなる。


 そのため、ルージュさんが声を上げて契約者たちに指示を出す。


 だが、レベル3の包囲が少し遅く、レベル3の左手から黒い球が生成される。


 しかも、俺に連投してきた時の3倍は大きいであろう大きさのものが生成される。


(ヤバいっ!あの大きさを投げられたら、この辺り一帯が更地になる!)


 俺は急いでレベル3を止めようと、レベル3のもとへ向かう。


 しかし、横からデビルの拳が飛んできたため、回避行動を取らされる。


「どけっ!お前の相手をしてる場合じゃないんだ!」


「そんなこと言うなよ。俺はお前と殺し合いをしたいだけなんだ」


 俺はレベル3のもとへ向かおうとするが、デビルが見逃してくれるはずもなく、連続で殴打してくるのを防ぐことで手一杯となり、レベル3へ辿り着けない。


(どうする!〈飛雷〉で攻撃するか!?いや、距離が離れすぎてて、威力が落ちる。おそらく、片腕を切り落した時のような威力は出ない。というより、デビルがそんな隙を与えてくれない)


 俺は様々な方法を考えるが、いい方法を考えつかない。


「お、あっちも攻撃準備ができたな」


 デビルの発言通り、レベル3の左手には大きな黒い球が完成しており、あとは投げるだけとなっている。


(間に合わねぇ!)


 俺がそう思った時、突然レベル3の左腕が斬り落とされ、血が噴き出る。


「グォォォッ!!」


 その攻撃で黒い球が消える。


「右腕を誰が切り落としたかは知らないが、左腕はアタシがもらったぜ!」


 そこには両手に短剣を持ち、緑色の長髪が特徴的な美少女で【疾風】の異名を持つ超越者の1人、『ニーナ•クリスタル』が、インドから駆けつけてくれた。

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