第8話 オーストラリアの危機 4
俺は女騎士と別れ、メルボルンへ向かう。
シドニーからメルボルンへ向かう飛行中にキャンベラの上空を通る。
上空からでも分かるくらい、建物の倒壊が目立つ。
キャンベラの都市には国立美術館や国立図書館など、有名な建物は多く存在するが、今は見る影もなくなっている。
「これはヒドイな」
「えぇ。きっと建物の倒壊に巻き込まれた人たちが大勢いるわ。はやくメルボルンのデビルたちを片付けて救助に向かうわよ」
「だな。急いでメルボルンへ向かうぞ」
レスティアの言葉に同意し、メルボルンへ一直線で向かう。
しばらく飛んでいると、遠方の方でデーモンと戦っている契約者の姿が見えてきた。
「ここもデーモンの数が多いな」
ざっと見ただけでも200体以上のデーモンが確認できる。
それと、一際大きなデーモンの姿も目視で確認する。
「あれがレベル3か。レベル2の倍以上の大きさがあると聞いていたが、想像以上に大きいな」
レベル1のデーモンは全長が1メートル半と、人間の身長程度しかなく、レベル2は2メートル程度の大きさがある。
そして、レベル3は全長約5メートルと言われ、レベル2の2倍近く大きい。
しかもレベル3は大きいだけじゃなく、何か特殊な能力も持っている。
そのため、レベル3の討伐には細心の注意が必要となる。
過去、レベル3が出現した際は、契約者の数でゴリ押しするか、数人の契約者と超越者が協力して倒してきた。
しかし、今回はレベル3以外にもデーモンがいるため、この方法はとれない。
(しかも、ランクSのデビルまで襲来してるからな)
幸い、侵攻が飽きたのか、今は空をぷかぷかと浮遊して高みの見物をしている。
そのまま、高みの見物をしてくれることを願いつつ、まずはレベル1とレベル2のデーモンへ攻撃を仕掛ける。
「
シドニーでの戦い同様、雷を全身に纏い、縦横無尽に駆け回り、たくさんのデーモンを切り刻んでいく。
そして5秒後。
「カチッ」と音を出しながら
「【迅雷】が助けに来てくれた!」
「登場がカッコよすぎっ!」
「この戦いで死ぬかもって思ってた時に現れる渚くん、マジでヒーロー!」
俺の姿を確認した契約者たちが一斉に声を上げる。
(うん。一斉に声を出すのやめてほしいなぁ。誰がなにを言ってるか、全くわからん)
シドニーと同じ状況となり、なにを言われたか理解できない。
(まぁ、今回も「助けに来てくれてありがとー!」みたいなことだろう。とりあえず、この防衛線を指揮しているリーダーに会うか)
そう思い、一際大きな声で契約者たちに指示を出している女性のもとへ向かう。
「すみません、遅くなりました」
俺はこの防衛線を指揮している女性へ話しかける。
「なにを言ってる。【迅雷】が謝ることなどない」
「【迅雷】はやめてください。渚でいいですよ」
シドニーでも同じやりとりをしたなぁと思いながら、返答する。
「そうか。なら渚くんと呼ばせてもらおう。私のことはルージュと呼んでくれ」
ルージュさんはオーストラリアで契約者を纏めるリーダーを務めており、かなりの実力者とのこと。
赤色の髪をポニーテールに結んでおり、凛々しい顔立ちの美女で、年齢は20代後半。
腰には剣を装備している。
「ルージュさん。今の状況を教えてください」
「あぁ。私たちはキャンベラからメルボルンへ向かう道中に防衛線を張り、デーモンとデビルの侵攻を抑え込んでいる。だが、デビルの侵攻を完全に抑えることができず、この戦場で40人近くの契約者が戦闘不能となった」
「くっ!」
(やはり、レベル3とデビルを押さえ込むのは難しいか!)
「現在、デビルが戦いに参加しなくなったため、契約者20人でレベル3の対処を行い、残りの60人で約200体……あ、150体に減ったのか。とにかく、残りのデーモンに対応している。正直、他国から契約者が助けに来てくれなかったら、メルボルンは消滅してただろう」
俺はルージュさんから簡単に現状を教えてもらい、俺が為すべきことを把握する。
「なら、俺がレベル3を引き受けます。今、レベル3の対処を行っている20人の契約者は残りのデーモン討伐をお願いします」
「おい、渚くんがレベル3を1人で受け持つのか?いくら超越者とはいえ、レベル3と単騎で戦うのは厳しんじゃないか?」
「大丈夫ですよ。俺は【迅雷】の異名を持ち、『世界最強の契約者』と呼ばれている男です。そう簡単に死んだりしません。危なくなったら助けを呼びますので、その時はお願いします」
とは言いつつも、みんなにはレベル1やレベル2のデーモン討伐に集中してもらうため、助けを呼ぶつもりはない。
「わかった。渚くんにレベル3の討伐をお願いする」
ルージュさんは戦っている契約者に指示を出し、俺がレベル3と1対1で戦うことのできる状況を作ってくれる。
そこに俺は急いで向かい、レベル3のデーモンと対峙する。
「さて、『世界最強の契約者』というカッコいい異名を出して説得したからには、『世界最強の契約者』と呼ばれる実力を示さないとな」
「ヴォォォォォォ!!!」
俺の言葉を理解したのか、レベル3が大きな声を上げた。
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