第7話 オーストラリアの危機 3
約3時間半のフライトを終え、キャンベラ手前のシドニーの上空へ到着する。
「うわぁ、ひどいな」
遠くの方では、オーストラリアに存在する大森林が薙ぎ倒されており、写真やテレビで見たことある大森林が見る影も無くなっている。
だが、シドニーの大都市には被害が及んでおらず、オーストラリアの契約者たちが踏ん張っているようだ。
「ゲート発生から5時間弱で、シドニーの手前までデーモンたちが攻めてきてるのか」
飛行中、スマホで父さんと連絡を取り合ったが、ゲートが出現したキャンベラは壊滅しており、出現したデーモンたちが散り散りとなって、キャンベラ近くの都市に向かっているとのこと。
そして、戦闘不能の契約者が40人を超えたらしい。
何名かの死亡は確認されているが、全員が亡くなったわけではないらしく、治療を受けている契約者もいるとのこと。
現在は他国から来た契約者によって、戦況を維持している状況だ。
分析を終え、俺は急いでシドニーの手前で防衛線を張っている場所へ向かう。
そこには、1人の女騎士が声を張っていた。
「もうすぐで超越者が到着する!なんとしても戦況を維持しろ!」
その声に応えるように契約者の女の子たち10人が、各々の武器を持ってレベル1、レベル2のデーモンと応戦している。
(空に5人、地上に5人の契約者を配置し、バランスよく防衛線を張っている。背水の陣ってやつか。シドニーの前を契約者で固めてなんとか抑え込んでるな)
そのおかげで後ろに見える大都市、シドニーの崩壊は避けられている状況。
(だが、デーモンの数が多い。おそらく100体はいる。それを10人の契約者で押さえ込める時間はそう長くはない)
空から全体の状況を簡単に把握した俺は、急いで加勢に向かう。
「いくぞ、レスティア」
「えぇ」
俺の呼びかけでレスティアが『
俺自身が空を飛んでいるため、まずは空にいるデーモンを片付けることにする。
「
俺は雷を全身に纏い、縦横無尽に駆け回り、素早くデーモンを切り刻んでいく。
そして5秒後。
俺は
すると、約50体のデーモンがバラバラとなり、断末魔を上げながら消えていく。
「見て!渚くんよ!」
「『世界最強の契約者』が助けに来てくれた!」
「あれが超越者の中でも最強と言われてる【迅雷】の実力……」
「このタイミングで助けに来てくれるなんてカッコよすぎ!」
「ヤバい、渚くんに惚れそう……」
俺が一瞬で数多くのデーモンを倒したことで、ここで戦っていた契約者の女の子たちが一斉に歓喜する。
(うん。みんなが一斉に叫び出したから、なに言ってるかわからん。多分「助けに来てくれてありがとー!」みたいなことを言ってるんだろう)
そんなことを思いつつ、この防衛線を指揮しているであろう女騎士の顔を見ると、安堵の表情が浮かべていた。
その様子を見つつ、詳しく戦況を把握するため、女騎士の元へ向かい、オーストラリアの公用語である英語で話しかける。
「遅くなってしまい、申し訳ありません」
「【迅雷】が謝る必要はありません。むしろ、私たちは感謝する立場です。遠路はるばる助けに来ていただきありがとうございます」
そう言って、女騎士は頭を下げる。
「【迅雷】はやめてください。渚でいいですよ」
なぜか俺に付けられている異名で呼ばれたため、すぐさま変更をお願いする。
超越者の7人には、それぞれの能力に合った異名がある。
俺の場合は雷を纏って戦うことから、【迅雷】の異名を持っている。
きっと暇人が考えて浸透させたんだろう。
ちなみに、俺は『世界最強の契約者』という異名も持っている。
カッコいいので気に入っているが、自分の口からは言ったことがない。
「それは申し訳ない。渚さんのおかげで、ここの防衛線は維持できそうです」
「他の場所はどうなってますか?」
「もう一ヶ所、メルボルンの前に大規模な防衛線を張っているようですが、メルボルンの方にレベル3のデーモンとランクSのデビルが進攻しているため、防衛線が突破されるのも時間の問題らしいです」
(最悪だな。レベル3とデビルが一緒に行動してるのか。バラバラに行動していれば、一対一に持ち込んで無効化ないし討伐できたんだが……)
そう思うが嘆いても仕方ないので、俺はメルボルンへ加勢に向かうことにする。
(正直な気持ちを言うと、ここのデーモンたちを全滅させてから向かいたい。だが、
そういった理由があり、女騎士にここの防衛をお願いする。
「俺はこれからメルボルンへ向かいます。ここの防衛はお任せしてもいいですか?」
「任せてください。この防衛線は少数精鋭ということで、契約率が90%近くの契約者をたくさん配置しております」
基本的に契約者の強さは契約率が高いほど、強い契約者ということになる。
だが、契約率が100%を超え、超越者となると特殊な力を得るため、契約率99%と契約率100%は天と地ほどの力量が出る。
「渚さんのおかげで残りのデーモンは50体程度に減りましたので、この数なら問題ありません。すぐに片付けてキャンベラへ向かいます。デーモンたちの攻撃から難を逃れ、生きてる人がいるかもしれませんので」
「わかりました。ここの防衛とキャンベラの救助は皆さんにお願いします」
「メルボルンの防衛線では、我が国の契約者を束ねるリーダーが指揮を取っています。きっと頼りになります」
「ありがとうございます」
俺は女騎士に礼を言い、メルボルンへと向かった。
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