第4話 契約者狩りの始まり

〜???視点〜


 天井もなく壁もない、ただ真っ暗な場所に3人のデビルがいた。


 そして、その3人は真っ暗な場所にポツンとある玉座の前にひざまずいていた。


「ようやく、妖精族の姫が作った結果に綻びが出てきました」


「これで妖精族が逃げ込んだ地球とかいう場所へ、容易に行くことができます」


「妖精族と人間が手を組んで抵抗してきたことには驚きましたが、所詮は時間稼ぎです。サタン様の命令でいつでも地球へ行けます」


 3人のデビルは顔を上げず、玉座に座っている1人のデビル、サタンと名乗るデビルへ伝える。


「妖精族の姫の居場所に目星はついてるんだろ?」


「目星まではいきませんが、手がかりはあります。妖精族が人間に力を与えた者は『契約者』と呼ばれているらしく、その契約者が死ねば、姿を隠している妖精が一時的に可視化されるそうです」


「なので、地球にいる契約者とかいう奴らを片っ端から殺せば、いずれ妖精族の姫に出会えるかと」


「それに忌々しい妖精族も消すことができます」


 契約した人間が死んだ場合、行き場を失った妖精は一時的に可視化される。


 そのため、デビルは可視化した妖精族を捕まえ、姫の場所を吐かせることに加え、妖精族を片っ端から殺す作戦を取るらしい。


「そうか。なら、既に何度も地球で暴れているマモンを地球へ向かわせろ。配下の魔物も好きなだけ連れて行け。そして、妖精族の姫を見つけ次第、俺の元へ連れて来い」


「「「はっ!」」」


 3人のデビルは返事をして、姿を消す。


「ようやく結界が弱まってきたか。なら、妖精族の姫が捕らえられるのも時間の問題だ。もうすぐで俺は姫の力を手に入れて最強になれる」


 その後、サタンの笑い声だけが響き続けた。




〜西園寺渚視点〜


 俺たちは父さんの話を聞いて、支部長室を出る。


「なかなか物騒な世の中になってきたな」


「ん、レベル3が出現する可能性があるのは物騒すぎる」


 俺の言葉に蒼は同意する。


「じゃあ、俺は家に帰るから。蒼も気をつけて帰れ……」


 俺は蒼と別れようとするが、「ビシッ!」っと、ものすごいスピードで蒼から服を掴まれる。


「な、なに?」


「待って。さっきの戦い、私の方が先にゲートへたどり着いた。遅刻したナギには私のお願いを聞いてもらう」


「そんなことあったなぁ……」


(忘れてないのかよ)


「ナギへのお願いはただ一つ。私と昼ご飯を食べること」


「俺、家に帰って澪のご飯を食べようと思ったんだけど……」


 澪が昼飯を誘ってきたタイミングでデーモンの出現があったため、俺の分の昼飯を澪が準備してるはずだ。


 そのため、お腹は空いているが、家に帰って食べようと思っていた。


「さすがシスコン。私との食事より澪ちゃんとの食事を選ぶとは」


「シ、シスコンじゃないわ!」


 なぜかジト目でシスコン扱いされる。


(だって、せっかく澪が昼飯を作ってくれたんだから、食べないと勿体無いだろ?それに澪が悲しむだろ?)


 そして、心の中で言い訳をする。


「澪ちゃんが可愛いのは分かるけど、そろそろ妹離れする時」


「だから俺はシスコンじゃなくて……」


 蒼からのジト目が収まらず、どうしようかと考えていると、蒼のスマホが鳴る。


「ん、うん……嫌、まだ帰らない……」


 どうやら「早く帰って来い」と、催促の電話がきたようだ。


 しばらく待つと「はぁ」とため息をつきながら、蒼が電話を切る。


「ナギ、今回は誘うのやめる。その代わり、今度私とデートしてもらうから。そして、ナギにたくさん奢ってもらうから」


「バイバイ、ナギ」と言って蒼がどこかへ行く。


「えぇ、アイツいっぱいお金持ってるだろ……」


『ふふっ、あの子も可愛いわね』


「どこが?俺のことを財布としか思ってなさそうなんだが」


『はぁ』


「ため息で返答するの、やめてくれないかな?」


 そんなことをレスティアと話した。




 無駄にデカい建物をエレベーターで降りて、1階ロビーに到着すると、茶色の髪をショートカットにしている女の子と目が合う。


「あー!センパイ!こんにちはです!」


 そう言って現れたのは『秋篠涼菜あきしのすずな


 俺の一つ下の19歳で元気しか取り柄のない美少女。


 俺と同じく大阪支部に所属している契約者の1人だ。


 そして、なぜか俺だけセンパイと呼ぶ。


「こんにちは、涼菜。調子はどうだ?」


「はい!すこぶる良いです!」


 うん、見ればわかるな。


「今日は何でここにいるんだ?」


「それはですね、支部長さんに呼ばれたからです!多分、凛ちゃんや結菜さん、サツキさんも呼ばれてると思います!」


 涼菜の口から出た、凛と結菜さん、サツキさんは大阪支部に所属している契約者。


 ちなみに、大阪支部は俺と涼菜に加えて、凛と結菜さん、サツキさんの計5人が所属している。


「支部長からは福岡支部から届いたデータを見てほしいって言ってました!」


「ってことは、俺もパソコンで見た統計を涼菜たちに見せるのか」


「なので、今から階段で支部長室に行ってきます!」


 そう言って、階段の方へ走って行く。


「え、支部長室って50階にあるんだぞ?アイツ、50階まで階段で行くのかよ……」


 相変わらず元気だなぁと感心してしまう。


 そんなことを思いつつ大阪支部を出て、西園寺家を目指した。




 西園寺家に到着し、澪と話しながら遅めの昼食を済ませる。


 そして、リビングのソファーに座り、バラエティ番組を何気なく見ていると、突然スマホが鳴る。


『現在、オーストラリアの首都【キャンベラ】にランクSのデビル1体とレベル3のデーモンが1体、その他デーモンが多数、ゲートより出現中。至急、応援を求む』


「っ!」


 俺はそのメッセージを見て絶句する。


「なっ、なんだよこれ!?」


 俺はスマホに書かれていた文章を理解できず、スマホに向かって叫ぶ。


「ど、どうしたの!?お兄ちゃん!」


 俺の近くにいた澪も、俺の声や表情から異常事態が発生したことを悟る。


「それが……」


 俺は澪に説明しようとすると、俺たちが何気なく見ていたバラエティ番組の画面が突然切り替わる。


『えー、バラエティ番組の途中ですが、ここで臨時ニュースです。本日、日本時間の14時頃、オーストラリアの首都【キャンベラ】にランクSのデビル1体とレベル3のデーモン1体。その他、デーモンが多数ゲートより出現したとの情報が入ってきました。今、現地と中継がつながってます」


 と、アナウンサーが簡単に説明し、テレビの画面が切り替わる。


 すると、そこには倒壊した建物が一面に広がっており、血だらけで倒れた人たちがたくさん映っていた。


 そして、カメラの中央には赤い血を全身に浴びた、ランクSのデビルがいた。


「な、なにこれ……」


「うそだろ……」


 先程、簡単に説明していたアナウンサーも、この状況に言葉が出てこないようで、映像も切り替わらない。


 どうやら、中継を行っていたアナウンサーやカメラマンから応答がなくなったらしい。


 すると、カメラの存在に気がついたデビルが、中継しているカメラに近づく。


『そういえば、これに向かって喋ってる奴がいたな。これに向かって宣言すればいいのか?』


 デビルが全世界共通の言語である英語で話し始める。


 4大名家の1つである西園寺家の長男ということもあり、ある程度の英語力はあるため、問題なくデビルの言葉が理解できる。


『俺の名前はマモン。ある方の命令で契約者って奴を片っ端から殺しに来た。さぁ、契約者狩りの始まりだ!』


 この瞬間、人間•妖精族vsデビル•デーモンの戦いが本格的に始まった。


〜プロローグ 完結〜

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