第3話 大阪支部へ
レベル1のデーモンを10体、倒し終えた俺たちは、地上に降りて、住民に被害状況を聞く。
なぜなら、聞いた結果を契約者を統括する本部へと連絡しなければならないからだ。
「今回もありがとうございます。おかげさまで被害はありません」
「契約者様のおかげで、デーモンたちに怯えずに生活できます」
「ありがとー!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
俺が被害状況を確認すると、近くにいた人たちから感謝の言葉をもらう。
「いえいえ!これも日本を守るためなので!」
俺たちはみんなからの感謝を受け取り、契約者を統括する建物へと移動した。
俺たち、契約者を統括する本部が世界各国に存在し、日本では東京に本部を置いている。
そして、本部の他に、支部が宮城、大阪、福岡にあり、本部を東郷家が管理し、宮城支部を北大路家が、大阪支部を俺の家である西園寺家が、福岡支部を蒼の家である南條家が管理している。
そして、本部、支部を管理している4家を世間では4大名家と呼び、今では日本を支える重要な家となっている。
俺は蒼と大阪支部に向かいつつ、俺の隣を飛んでいる蒼へ話しかける。
「なぁ、蒼は福岡支部だろ?なんで大阪にいたんだ?」
日本にいる契約者はそれぞれ、本部か支部に所属している。
俺は大阪支部に所属し、蒼は福岡支部に所属している。
そして、契約者は基本的に、所属している本部や支部から離れないようになっている。
理由としては所属してる支部から離れる契約者が多くなってしまうと、その地域が手薄となってしまうから。
「ん、それは急いで大阪支部に届け物をする用事があったから。その道中にデーモン出現の通知が来たから倒しに来た」
「なるほど」
俺もここへ倒しに来たように、デーモンが出現した時は討伐のメールを本部が契約者に出している。
契約者の体にはGPSを仕込んでおり、世界各国に置いてある本部は契約者の位置を常に把握している。
だから、ゲートが出現した場所の距離や方角を的確に伝えることができる。
その後も蒼と雑談をしながら大阪支部へ向かう。
妖精の力で空を飛んで来たため、5分程度で大阪支部に到着する。
大阪支部は大阪市の中心部に位置しており、バカみたいに大きい建物となっている。
「すみません。支部長へ被害報告に参りました」
そして、受付の女性に声をかける。
「少々お待ちください」
そう言われ、近くの椅子に腰掛けてしばらく待つ。
「お待たせ致しました。このまま支部長室へ来てくださいとのことです」
「ありがとうございます」
俺と蒼は立ち上がり、支部長室へと向かう。
エレベーターで50階のボタンを押し、50階に到着するまで、無駄な時間をエレベーター内で過ごす。
なぜ50階に支部長室を作ったのか、毎度疑問に思いながら、ノックして支部長室へ入る。
「父さん、帰ったよ」
「ただいま帰りました」
「おー!おかえり!渚!それに蒼ちゃん!」
そう、この大阪支部で50階という無駄に高い場所で仕事をしている支部長は俺の父さんである『
40歳を超えているが、体は鍛えられており、若い頃はイケメンだったんだろうと思うことのできる顔立ち。
「今さっきの討伐依頼は被害なく完了したよ」
「おー!さすが渚と蒼ちゃん!ありがとう!」
そう言いながら俺たちはソファーに腰掛ける。
そして、目の前にある茶菓子に手をつけながら、父さんへ話しかける。
「しかし、いつまでデビルたちはこの世界にやってくるんだ?」
「そりゃ、知らん」
「だよなぁ」
長い年月をかけ、契約者のことはある程度、理解しているが、デビルやデーモンに対してはほとんどわかっていない。
妖精たちはデビルがここに来る理由や正体を知ってそうだが、頑なに教えてくれない。
以前、レスティアに聞いた際も「私たち妖精族がナギくんたち人間を巻き込んでしまった。本当に申し訳ないと思ってるわ」と、何度も申し訳ないと謝ってくるだけで理由を教えてはくれなかった。
一説によると、デーモンたちは妖精を滅ぼそうとしてると考えられている。
理由としては、デーモンたちが国民など眼中にないかのように、毎回契約者を優先的に攻撃してくるから。
「それにしても契約者の数が世界で10万人を超えたらしいな」
「支部長としては嬉しい限りだ」
つい最近、契約者の総数が10万人を超えたというニュースは世界的なニュースとなった。
もちろん、わかっているだけで10万人なので、契約者となったのに各国にある本部や支部に連絡をしていない人もいるため、本当の数はもっと多い。
まぁ、契約者となった人は各国がVIP対応をするため、黙っている人は少ないが。
「ホント、今までデビルたちの侵攻を10万人以下の契約者で対抗できてたことがすごいよな」
「ん、ゲートが開く場所はわかるけど、駆けつけるのに時間がかかってしまう。到着した時には被害が出てたなんてことが何度もある」
なので、世界のあちこちで出現するデビルたちの侵攻を10万人以下で抑え込んでいるのは凄いことだと毎回思う。
「これも世界各国に散らばる超越者のおかげだな」
父さんの言葉に蒼が頷いている。
「だから、渚には頑張ってもらわんとな。世界に7人しかいない超越者の1人なんだから」
「いや、頑張るけど……」
「しかも、渚は超越者の中で最強と言われ、『世界最強の契約者』と呼ばれてるからな」
「めっちゃ褒めるやん。なんか嫌な予感がするんだけど……」
父さんが俺のことを超越者と言う時は、「超越者なんだから世界のために頑張れよ?」という意味合いが込められている。
つまり、嫌な予感がする。
だが、超越者の俺にしか依頼できない内容もあるため、逃げ出さずに父さんの話を聞く。
「最近、世界各国でデーモンの出現回数が増えている。蒼ちゃん、例の物は持ってきてくれたか?」
「ん」
父さんが蒼を呼ぶと、蒼がUSBを父さんに渡す。
「これが最近の出来事だ」
父さんがパソコンを操作し、俺たちに画面を見るよう促してくる。
「ここ1ヶ月でレベル1のデーモンが20回出現し、レベル2が5体、レベル3も1体現れてるのか」
「そうだ」
(最近、デーモン出現のニュースをよく見ると思ってたが、数字にされると多さが一目でわかるな)
デーモンの出現は1ヶ月に世界規模で10回程度。
日本での出現なんか2ヶ月に1回程度だ。
レベル3なんて何十年も出現しておらず、今までで数回程度しか出現していない。
そのため、ここ1ヶ月の出現頻度は異例中の異例だ。
「今回のレベル3は、フランスに出現したが、出現場所の近くにたまたま超越者の1人がいたため、問題なく討伐できた。だが、超越者がいなければ、フランスが壊滅してた恐れがある」
このニュースは話題になったため、俺も知っている。
「そこで、いつレベル3が出現してもおかしくない状況に陥っており、奴らが本気で地球を滅ぼしに来てると我々は考えている。おそらく、今後はデーモンたちとの戦闘が増えるだろう。いつでも戦えるよう、準備しとけ」
「わかった!」
俺は元気よく父さんへ返事をした。
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