第13話
その晩、僕と神村はホテルへ戻り叔父夫婦たちに僕らの交際について告白できた事に安堵し部屋のドアを閉めて靴を脱ぐと彼女は抱いて欲しいと言ってきた。
喪服を脱ぎ浴衣に着替えると、彼女を壁鏡のところに立たせて背後から抱きしめ振り向きざまにキスを交わし、着ている浴衣の帯を解いてその手首に縛り付けると再び唇を重ね合わせていった。彼女は壁にもたれて腕を上げると舌を入れてくれと言ってきたので、息を上がらせてはお互いの舌を絡ませていき、肩から浴衣をはだけさせしがみつくように抱き合った。
ベッドへと押し倒して浴衣の上から身体の部位を弄り始めると全部脱がせてくれと言ため息交じりで
「ねぇ、啓吾さんって呼んで良い?」
「いいよ。僕も
確かめるように部位を愛撫してはお互いの名前を呼び合い、彼女の陰核や膣の中に指を出し入れしながら濡らしていくと大きく淫声を吐いて、その都度キスを交わしていく。僕も浴衣を脱いで裸になり彼女の脚を開いて硬くなった陰茎を膣の中に挿れると背筋から熱を帯びて振動を立てていき彼女の悶える表情を眺めては鱗が出ないことを切に願っていた。
「どうしよう……」
「何?……」
「今突いているところ、凄く気持ちいい……」
「身体、起こすよ」
僕は彼女の身体を自分の上体に乗せると、手首の帯を解いて抱きしめ合いながらキスをして、その後に仰向けになった僕は彼女とともに全身を揺らしながら
「いやっ……身体がバラバラになりそう……!」
「和咲……おいで……」
白く細い彼女の腕を引き寄せて僕がその身体の上になり、ベッドの隅に寝かせて下半身を固定したまま正常位で揺さぶっていくと、彼女の頭がずれ落ちるほどに軋む音が激しさを増していった。
やがて波打つ鼓動が脈を走らせて最高潮に達すると彼女の身体に屈み込みながら、ああっと怒責を上げた。
ふと僕は壁鏡に写る二人の姿を見て、いつにない興奮が昂進していき身体に刻み込まれていく、情愛の焼印の煙が立ち込めているのを眺めていた。
神村改め和咲への愛を捧ぐために彼女が魚にならないように鎖骨の窪みに歯で噛んで痕をつけると彼女は次のように言ってきた。
「あいつが……彼が私達を見ている」
「元彼?」
「そう。私を殺しに来る……逃げたい……」
「僕ら二人しかここにいないよ。大丈夫、もう誰も君を責めたりしないから」
「じゃああれ飲ませて……」
「何を?」
「あなたの
「いいよ」
僕は和咲の口が開くと唾を口移ししていき、彼女はそれを飲み込んで喉を潤しては微笑み、火照る真紅の
「良かった……」
「えっ?」
「和咲が、魚にならない」
「どういう意味?」
「今まで会った人たちが皆魚のように冷たい身体をして僕の元から消え去っていったんだ。もしかしたら君も同じように抱いたらどこかへいなくなってしまうのではないかと考えていた。でも逃げも隠れもしないで僕に寄り添ってくれている。女性を抱いているって感覚が今ここにきちんとあるんだ」
「こうして手足も胴体もあるよ。啓吾さん、もう一人じゃないからあなたも私の傍にいてください」
「ああ。これではっきりと証明できた。ありがとう、和咲」
日付が変わり深夜零時を過ぎた頃、僕は窓の外に浮かぶ月を眺めていると和咲が寄ってきて微彩色に光る街並みがまだ冷たさを感じると言ってきた。
「もうすぐで十五夜だ。月が大きく感じるね」
「明日晴れると良いね」
「うん、きっと晴れるよ」
その後僕らは一つのベッドでともに就寝して、深閑の
七時。朝食を済ませて身支度が終わるとチェックアウトをしてホテルを後にした。タクシーで駅へ行きホームでは定刻通りの新幹線が待機して乗りこむと五分ほどで発車した。
三時間ほど経つと東京駅に着き一旦改札口を出てから、和咲とは乗り換えのホームが変わるので、その場で別れることにした。中央線快速のホームへ向かい数分ほどで電車が入ってきたので乗った後三鷹駅で下車して、自宅に帰ってきた。手荷物を置いてひと息つこうとベランダに出て煙草を吸い出した。
スマーフォンを取り出してメールを見ていると彼女からも一通届いていたので開いてみると橘に交際する件を伝えたいので後日店に来てくれないかと綴っていた。
数日後の夜、小料理店に立ち寄ると客が少なかったこともあり奥にある控室で和咲と橘と一緒に話をすると、橘は彼女は僕を支えてくれる唯一の伴侶だからともに新睦に深め合っていけばいいと激励してくれた。
翌週の土曜日の午前。地下鉄東西線の付近にあるクリニックに行き、主治医に神村の事や新潟の法事での出来事を話すと以前より記憶の細かい部分に焦点を当てながら思い出していけることができていると告げ、このまま順調にいけば更に震災以前の記憶も出てくる可能性も強くなるので、突発的な素行不良にならない限りは回復も早まると話してくれた。
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