第2話

 めずらしく午前中にルーが帰ってきた。学校へ行ったはずだけど……。誰もいない時間を見計らって恋のお相手を連れてきたの。

つい最近、アタシにライブハウスで出会ったバンドをやっている20歳の男性と、お付き合いしてると打ち明けてくれた。年上の男性に憧れるお年頃なのね。その彼とついにご対面。

 ダボっとしててあまり綺麗ではない服装に、乱雑に伸ばした髪、こういうのがロックってやつなのかしら?でもよく見たらハンサムな男性ね。

このゴージャスな家に驚いた様子で、家中をキョロキョロと見て回っていた。

アタシを見つけるなり、微笑んで挨拶されたわ。

あなたがルーを幸せにしてくれてるなら、アタシも愛想を振りまいてあげてもいいわよ。

彼も猫と住んでいるらしい。悪い人じゃなさそう。そういえば、ルーが知しらない猫の匂いを付けて帰ってきた日があったのはそのせいね。


 我が家は禁煙なのに彼はラッキーストライクを吸いながら、ルーにあまり学校をサボるなと言ってた。ルーがタバコを吸おうとすると、タバコも酒もダメだと言った。派手な格好をして夜遊びしてても、ルーはその辺の女と違うということに今更気づいたのかしら。

『自分のようにはなるな』と、何度も言っていたわ。


 ある夜ルーはアタシに語り始めた。

彼のバンドは人気が出始めていて、すごくモテるらしい。多分自分は遊んでいる女のうちの1人だと。なんて悲しいことを言うの。アタシにとってルーはかけがえのない存在なのに。

でも彼の歌声はすごくステキだし、パンクだし、憧れの存在に変わりはないらしい。よくわからないけど、それが乙女心なのね。

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